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Vol.16 (1995/6[184])

<外国情報>
ヒトの狂犬病,1994−米国・ウェストバージニア


 1994年10月,ウエストバージニア州で41歳男性が狂犬病により死亡した。患者は10月4日に,震え,言語障害,飲水困難,嘔吐,重篤な不安感などにより地方病院を受診し,アルコール,マリファナなどによる急性の神経症状と診断された。同日夕刻には極度の興奮,筋肉振顫がみられたため,地域病院に入院,臨床検査等により狂犬病,破傷風,ウイルス脳炎,急性出血脳炎,薬物中毒などが疑われ,泡沫性の唾液を吐くため隔離された。6日にはアシクロビルが投与され,第3次施設に移された。6日と7日に脳の断層撮影を行い,炎症および新生物が疑われたが,脳脊髄液には異常がなく,東部,西部馬脳炎,セントルイス,カリフォルニア脳炎などの抗体も検出されなかった。7日の血清,頚部生検材料,10日の脳生検材料を狂犬病検査に供した。12日に州公衆衛生局検査室で脳の蛍光抗体染色およびネグリ小検出により狂犬病と診断された。患者は15日に死亡した。

CDCは中和抗体および脳材料からの直接蛍光抗体法による抗原検出により狂犬病を確認した。ウイルスRNAによりsilver-haired batの変異株と同定された。友人や家族の聞き取り調査により,患者は1994年6月または7月初めに家の玄関でコウモリを撃ち,口をあけて歯の具合などを調べたことがわかった。このコウモリはred batであった。診察に携わった48名の医師,看護婦等に狂犬病暴露後の免疫を行った。

 この症状は,米国では1980年以来21例目であり,ウエストバージニアでは1979年以降初めてである。21例のうち11例は国内での感染であり,9例はコウモリに関連している。コウモリの狂犬病は米国内で流行しており,隣接する48州すべてから報告されている。変異ウイルスはred batで確認されているが,silver-haired batの変異株がred batでみられたのは初めてである。

(CDC,MMWR,44,No. 5,86,1995)






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