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1994年10月に船橋市内の小学校においてCampylobacter jejuni(C. jejuni)による大規模な集団食中毒が発生したので報告する。
発生状況:10月18日に船橋市内のN小学校で多数の児童が欠席しているとの報告があった。患者発生は16日〜26日まで続き,総数は559名となった(図1)。主な症状は発熱(86%),腹痛(83%),下痢(78%),頭痛(75%),悪寒(52%)等であった。校医は当初感染性胃腸炎と診断していたが,欠席児童が多いことから給食等による食中毒が疑われた。
病原菌検索:検食22検体(12,13,14,17日の給食),調理器具等のふきとり8検体,使用水5検体,検便170検体(職員7名,調理人9名,児童154名)について検査を実施した。検食,ふきとり,および使用水から病原細菌は検出されなかった。検便170検体については120検体(調理人2名,児童118名)からC. jejuniが分離され,当該菌による食中毒と決定した。分離された菌株をPHA法(デンカ生研)で血清群別したところ,すべてY群に分類された。
疫学調査:患者の共通食は学校での給食と飲料水に限られていた。同校は自主給食を実施しており,他校との共通仕入れ,および共通献立はない。また,近隣の小学校および中学校には同様の症状を呈する児童,生徒は認められなかった。使用水は上水道受水で受水槽,給食設備に異常はなく,残留塩素は0.3〜0.7mg/lであった。
原因食の推定:患者発生状況,喫食状況を検討したところ,8日〜17日の間で14日の給食だけ摂取した児童が発症していること,14日に欠席した児童には発症者がいないこと,また,日別のχ2検定の結果などから14日の給食を原因食と決定した。当日のメニューはコッペパン,卵ラーメン,チャーシューナムル,ブドウ,牛乳であった。
今回,食品から原因菌は分離できなかった。その要因の一つとして,原因食が推定された14日から検査実施までに4日以上経過しており,検食の保存期間中に菌の生存率が低下したことが考えられる。本菌のように潜伏期間が比較的長い病原菌による食中毒もあるので,検食の保存方法および検査方法について,今後検討が必要と考えられる。
千葉県衛生研究所 岸田一則 鶴岡佳久
千葉県船橋保健所 藤島 隆 宮本美紀子 古市加代子 木内哲也
図1. 日別患者発生数
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