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埼玉県では昨年4月に県内初めてのロタウイルスによる集団胃腸炎が3件連続して発生し,その動向に注目していたところであるが,今年もまた春期に発生した集団胃腸炎からロタウイルスが検出されたので,その概要を報告する。
1995年5月19日(金)12時頃N市H小学校長から朝霞保健所へ嘔吐,吐き気の症状を訴えている児童が多数いるとの連絡があった。同保健所による調査の結果,全校児童581人中73人が発症しており,発症者は各学年に存在するが,3年生,4年生に若干多い傾向があった。調査可能であった46人の発症日時は図に示したとおりで19日6時〜12時に最も多く,18日午後〜19日午前に大部分が発症した。症状は発熱81%,下痢38%,嘔吐63%,吐き気81%,腹痛(へその周り)51%,頭痛58%で,初発症状は嘔吐または吐き気であり,発熱は80%近くが38℃以上であった。嘔吐の回数はほとんどが3回以下であったが,中には15回という者もいた。なお,同校では自校方式の給食提供を行っているが,給食従事者に発症者はいなかった。
児童に提供された給食の献立は17日:コーヒー蒸しパン,ポパイスープ,ヨーグルト和え,牛乳,18日:五目おこわ,笹蒲鉾の岩石揚げ,ボイルウインナー,ステックきゅうり,レタス,ミニトマト,りんごジュースであったことなどが明らかになった。
細菌学的検査の結果,小学校給食の検食,給食施設・設備のふきとり検体,飲料水,発症者(生徒)および非発症者(給食従事者)の糞便のいずれからも食中毒菌等の病原菌は検出されなかった。発症者糞便24検体,非発症者糞便5検体についてA群ロタウイルス抗原検出用ELISA(ロタクロン,トーレ・フジ・バイオニクスKK)およひ電子顕微鏡によるウイルス検索をしたところ発症者糞便15検体からロタウイルスを検出し,非発症者はすべて陰性であった。
児童の発症日時からみて単一暴露による感染であると推測されたが,その原因媒介体については特定できなかった。
埼玉県衛生研究所疫学部ウイルス科
篠原美千代 内田和江 島田慎一 後藤 敦
埼玉県朝霞保健所
中村益美 高見澤一夫 小野塚清一
時間別患者発生状況
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