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オーストリア大陸の70km北,トレス海峡にあるバドゥ島(人口780人)で3名が日本脳炎と診断された。患者は1995年3〜4月に発病し,2名が死亡。3例ともHI試験により日本脳炎ウイルスIgM抗体上昇が認められた。無症状の島民2人の血清から分離したフラビウイルスはモノクローナル抗体を用いたIFAで日本脳炎に一致した。EIAによる島民212人のフラビウイルス抗体調査では59人がIgG陽性,22人がIgM陽性だった。より特異的なテストによりIgM陽性血清の大部分は日本脳炎陽性と判明。タイ軍医科学研究所で行ったPCR法により2例が日本脳炎と確認された。トレス海峡諸島の住民,動物およびオーストリア大陸最北部の定点のブタ,ニワトリ,野鳥の血清学的サーベイランスが行われ,バドゥ島で検査されたブタ12頭全部とウマ10頭中9頭が日本脳炎抗体陽性だった。バドゥ島はオーストリア大陸への生きた動物の移動が禁じられている検疫区域である。
本症例はオーストリアで日本脳炎が発生した最初の報告であり,生物地理界の東洋区とオーストリア区を分けるウォーレス線の南で初めてこのウイルスを証明するものと考えられる。
(WHO,WER,70,No.23,166,1995)
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