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1994年は,西暦2000年までにポリオを根絶させるという計画を1988年に打ち出してからちょうど中間点にあたる。この間,この目標に向けて顕著な前進があったが,目標を達成するためには,まだ多くのなすべきことがある。この報告は,1995年3月20日までにWHOへ寄せられたデータをもとに,1994年までの進歩を記録したものである。
野生ポリオを根絶する次の戦略は明確で,有効であることが示されている。(1)高い定期接種率を維持する,(2)経口ワクチンによる補完的な予防接種キャンペーンを行う(National Immunization Days:NIDs),(3)ポリオの可能性のあるあらゆる麻痺症例のサーベイランスシステムを確立する,(4)ポリオが流行していると思われるハイリクス地域に重点的に予防接種を行う。
全世界の3回の経口投与ワクチン接種率は1990年の85%が最高で,1994年の生後1年以内の接種率は81%であった。1994年末までにNIDsを設けた国は36カ国,うち7カ国は1994年末に初めて行った(アフガニスタン,イラン,ラオス,レバノン,パキスタン,スーダン,タイ)。1995年にはさらに25カ国が初のNIDsを行うことを予定している。
ポリオ根絶のためのサーベイランスはすべての小児の急性弛緩性麻痺(AFP)症例の検出を目的としている。症例が見つかると,臨床的,疫学的情報が集められ,便2検体のポリオウイルス検査がWHO認定ラボで行われる。現在,94カ国がAFPサーベイランスにより,野生ポリオのモニタリングを行っている。WHOは12の地域レファレンスラボと60カ国のラボをグローバル・ラボラトリー・ネットワークのメンバーとして認定している。
1994年のポリオ発生は6,241例(93年は10,001例,88年は35,255例),これは1988年に根絶計画が策定されてから82%の減少である。1994年には145カ国/地域がゼロ報告であった(88年は104カ国)。しかし,地域流行のみられる多くの国の報告は不完全であり,WHOの推定では1994年のポリオ発生数は107,000例と見積もっている。
WHOの勧めるポリオ根絶戦略を取り入れる国が増えてきたので,6つの地域でポリオが根絶された(西半球,西・中央ヨーロッパ,北アフリカ,南・東アフリカ,中東および西太平洋地域)。1992〜94年の3年間にポリオ発生ゼロを報告した国は119で,1991〜93年の3年間より6カ国増加した。
(WHO,WER,70,No.14,97,1995)
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