HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.16 (1995/8[186])

<外国情報>
透析センターでのHIV感染−コロンビア


 1993年5月,コロンビアのある透析センターの3名の患者血液材料がHIV抗体陽性であることが判明した。同センターで保存されていた1988〜93年までの59名の患者血液材料を調査したところ,13名(22%)がHIV抗体陽性で,うち10名が抗体陽転しており,9名の陽転時期は流行期間である1992年1月〜93年12月の間であった。患者(7名が男性)はいずれも,IDUや男性同性愛者ではなく,未検査の血液製剤も投与されていなかった。

 上記流行期間の最初のHIV抗体陽性患者Aは,1992年5月に同センターで透析を受け始めてから20日後の検査で陽性と判定されていた。その後Aが死亡するまで通院した4カ月以内(1992年5〜8月)に透析を受けた他の患者のHIV抗体陽転率は他の時期に透析を受けた患者の陽転率に比べて有意に高かった(9/10対0/9)。問題の4カ月に透析を受けたにもかかわらず陽転しなかった1名は,常にB型肝炎キャリア用の別の装置を使い,他の患者は共通の装置を使っていた。死亡した患者AからHIV分離株は得られなかったが,他の3名の抗体陽転者から得られたHIVは,アミノ酸解析により同一であることが判明した。

 同センターの看護婦とのインタビューにより,透析装置とチューブは患者ごとに適切にラベルされ,5%ホルマリンで再処理され,個別に保管されていたが,針は2〜4名分がラベルされないまま,0.16%の塩化ベンザルコニウムの入った同一容器に浸けられていたことが判明した。この調査結果に基づき,同センターでは患者に使用する器材の再処理をやめ,HIV感染者に対しカウンセリングを開始した。また,透析患者におけるHIV感染の全国調査が始められ,保健省では,静注用の器材の消毒に4アンモニウム塩化合物を使用するのを禁止した(塩化ベンザルコニウムは活性の低い殺菌剤で,米国では静注に用いる器材の消毒には推奨されていない)。

(CDC,MMWR,44,No.21,404,1995)






前へ 次へ
copyright
IASR