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Vol.16 (1995/9[187])

<国内情報>
小学校におけるムンプスの流行−滋賀県


 1994年9月中旬〜12月上旬にかけて,県内A小学校においてムンプスの流行が観察された。流行後に行われたアンケート調査によると発病率は53%(86/163名)であった。学年別発病率は1年生44%(11/25名),2年生74%(23/31名),3年生65%(17/26名),4年生57%(13/23名),5年生50%(15/30名),6年生25%(7/28名)と,2年生が最も高かった。一方,同学区の中学校では1.2%(1/84名)の発病率であった。

 A小学校でムンプスを発病した者86名はすべて医師の診察を受けており,耳下腺腫脹以外に,発熱を伴った者65名,関節痛5名,無菌性髄膜炎1名があった。学校を休んだ日数は,1〜5日が30名,6〜10日が53名であった。

 表1に,A小学校において抗体検査に同意の得られた者について,ワクチン歴別および今回発病の有無別,ムンプスHI抗体価分布を示した。調査した104名のほとんどにワクチン歴がなかった。ワクチン歴のない99名のうち,今回発病した者は63名(64%)あり,これらの者は1:8以上の抗体価を保有し,1:256以上に最も多く分布していた。一方,今回発病しなかった者の抗体価分布は,1:16〜32に多く分布していた。また,ワクチン歴のあった者に今回発病した者はいなかったが,抗体価1:4未満の者が2名あった。なお参考に,同学区中学生におけるHI抗体価の分布を示した。中学生の分布は小学生の今回発病しなかった群と同様の分布を示した。

 表2に,家族内で複数の発病が観察された例を示した。同一家族内での発病例は44%あり,4名発病した例も8家族あった。

 さらに,表3にA小学校における家族内発病日の差を,アンケートに回答した児童を基準にして示した。発病日の日数差の平均は15.6日,家族先行,後行を問わず,日数差11〜20日に26例41%が分布していた。ムンプスの潜伏期間は2,3週間とされていることから,これらの者は家族内感染をしたと考えられ,特に先に家族が発病した例のほうが多かった。家族先行で日数差11〜20日の18例の家族関係をみると,兄または姉が先行している例が4例,弟または妹が先行している例が14例と,年下の同胞から感染している例が多かった。

 図1に同一家族内で3人以上の発病があった例の発病日の差を示した。ムンプスの潜伏期間からみて,1人から2人が感染した例2,3,4,5,6,および1人から1人さらに1人へと感染した例7,8,また1人から同時に2人さらに1人へと感染した例9と,家族内で次々と感染していったことがうかがわれた。

 なお,同学区の保育園における流行については,調査せず不明である。

 アンケート調査および血清採取に協力された関係者に深謝します。



滋賀県立衛生環境センター微生物科
横田陽子 武甕好美 吉田智子


表1. A小学校におけるワクチン歴別ムンプスHI抗体価分布
表2. A小学校における家族内ムンプス複数発病例
表3. 同一家族内発病例におけるA小学校児童を基準としたムンプス発病日の差
図1. 同一家族内で3人以上の発病があった例





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