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Vol.16 (1995/9[187])

<国内情報>
日本脳炎中和抗体価測定法について


 伝染病流行予測調査事業において,日本脳炎ウイルスに対する中和抗体価の測定は,現在は初代ニワトリ胚細胞(CE)を用いて行っているが,手技が煩雑であることに加えて,近年,均質な孵化鶏卵の入手が困難になってきていることから,ヒトの日本脳炎ウイルス感受性調査を担当する地方衛生研究所を中心に,CEに代わる中和抗体測定法の確立を望む声が強まってきた。これに応えるために,1993年に衛生微生物技術協議会レファレンス委員会の中に,臨時に日本脳炎抗体測定法小委員会が設置され,約1年半検討を行ってきた結果について報告する。

 小委員会は,国立予防衛生研究所・北野忠彦(小委員長),大分県衛生環境研究センター・小野哲郎[主にCEとVero細胞上でのプラック減少中和抗体(PRNT)価の比較を担当],大阪府立公衆衛生研究所・奥野良信(主にCEのPRNT価とVeroでのPAP染色法を用いたフォーカス減少中和抗体価の比較を担当),東京都立衛生研究所・吉田靖子(主にCEとBHK-21細胞上でのPRNT価の比較を担当)の4名で構成され,さらに,予研ウイルス第一部神経系ウイルス室が総合的な比較検討を担当した。

 CEにおけるPRNTの結果と,各担当者の用いた細胞のPRNTあるいはPAP法の結果とはいずれも高い相関を示したことから,いずれの方法もCE法に置き換えることができると考えられた。表1に予研で行った成績を示す。表にみられるように,ヒト血清の抗体価は,用いる手法により検体ごとのばらつきがみられるものの,CEでの抗体陰性血清は他のいずれの方法でも陰性であり,陽性血清ではCEでのPRNT価が低かった1例(#11)でPAPが陰性であった他は,CEのPRNT価に対応した抗体価を示し,いずれも陽性であった。

 以上の結果から,感受性調査に用いる系は各機関の選択で行うこととするが,しばらくの間はCE系を平行して用いるとともに,成績に用いた系を付記するよう勧告したい。

 なお,血清希釈とプラック減少率との関係をみると,検体によってその傾きが必ずしも一定ではなく,現在用いられている一点希釈の成績から50%プラック減少中和抗体価を算出するチャート法をすべての結果に当てはめることはできない。50%に近い減少率を得た検体についてはチャートから判定してよいが,50%を大きくはずれた場合は再度希釈を変えて行う必要がある。その信頼限界をどこにおくかは今後の検討課題であろう。



北野忠彦(日本脳炎抗体測定法小委員長・予研),
小野哲郎(同委員・大分衛環センター),奥野良信(同委員・大阪公衛研),
吉田靖子(同委員・都衛研),新井陽子,小林正美,中山幹男,堀本泰介,
矢部貞雄,山田堅一郎,山本紀一,田代眞人(予研)


表 ヒト血清の測定法の違いによる中和抗体価の比較





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