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Vol.16 (1995/9[187])

<国内情報>
最近経験したイソスポーラ症の4症例


 わが国におけるイソスポーラ症については本月報Vol.16,No.4(No.182)に記載されたが,15症例中の14,15症例は未発表なために,情報がやや不足している感があった。この2症例を含め最近経験した4症例についての概要を述べる。

 4症例の臨床概要を表に示した。いずれも免疫不全状態にあり,症例2はステロイド長期使用中であった。臨床症状は下痢,腹痛,体重減少が主なものであった。症例1は同時に発熱,乾性咳嗽がみられたが,Pneumocystis carinii肺炎,糞線虫症を併発していた。

 糞便の直接塗抹による観察では,オーシストは小型で無色なために発見は比較的困難であり,通常は見逃されても不思議ではない。ここに提示した症例はいずれも糞便検査によりオーシストを観察し,微分干渉顕微鏡では特徴的な未熟型,成熟型オーシストが明瞭に観察されたが,第1例目の診断には数カ月におよぶ検査で見逃されていた。1例目の経験の後は,無症状の患者に行った糞線虫に対するルチン塗抹検査でもオーシストを観察できるようになった。(症例2)。

 治療はST合剤あるいはファンシダールを使用したが,再発がみられた。再発に先行して便潜血反応が陽性になる現象も観察された。下痢が見られなかった症例2では,治療を行わなかったが,症状の発現は見られなかった。

 今後,AIDSをはじめとする免疫不全患者の増加に伴い,原因不明の下痢患者に遭遇する機会が増えると思われる。わが国での診断例は20例に満たない現状である。本症は免疫不全患者においてはまれな疾患とは思われないので,頑固な下痢が続く場合は,クリプトスポリジウム,マイクロスポリジウム,サイトメガロウイルス,非定型抗酸菌などの検索とともに,本症に対して集嚢子法(硫酸亜鉛遠心浮遊法,ホルマリンエーテル法)を行うか,糞便を1〜2日間放置し,集嚢子法により成熟オーシストを観察する方法をとるか,あるいは抗酸染色により観察しやすくするなど,本症診断に心掛ける必要があろう。



琉球大学医学部第一内科 斎藤 厚 平田哲生
琉球大学医学部寄生虫学教室 長谷川英男


表 イソスポーラ症4例の概要





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