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Vol.16 (1995/10[188])

<国内情報>
東京都におけるSalmonella Enteritidis食中毒の今年度の傾向


 サルモネラ食中毒は1989年以降激増し,全国で約140事例が報告されてきたが,1994年ではさらに増加し,205事例,患者数が14,410名である。このうち少なくとも79事例がS. Enteritidisを原因菌としており,また,12事例は患者数が100名以上の大規模な集団発生例である。東京都においても1994年は22事例のサルモネラ食中毒のうち17事例がS. Enteritidis食中毒であった。それらのファージ型(PT)は全国の傾向に類似し,PT1(7事例),PT4(7事例)が中心であった。しかし,これまでに認められていなかったPT22による1集団例がみられ,S. Enteritidisのファージ型の多彩化の兆しがみられた。

 今年度もサルモネラ食中毒が多発しており,4月〜8月までに既に12事例,患者数573名を明らかにした。このうち9事例がS. Enteritidisによる食中毒である(表)。しかもそのファージ型はより多彩化し,これまでによく知られていたPT1が2事例,PT1とUTの混合事例が2事例,PT4が1事例,PT8が2事例であるし,これまでにほとんど報告例がないPT3と5がそれぞれ1事例である。表には示されていないが他県に原因施設があった事例の患者からPT3および5がそれぞれ1事例ずつ検出されている。

 予研細菌部外来性細菌室の報告ではPT3はこれまでに5事例,PT5は1事例にすぎない。S. Enteritidisのファージ型がこれほどに多彩化してきたことは感染源である養鶏場の各種のファージ型を示すS. Enteritidisによる汚染が進行しているものと推察される。また,PT3,5,22の地域的特徴など国内での分布やその動向に注目しなければならない。 東京都に発生した9事例のS. Enteritidis食中毒の原因食品はポテトサラダ,五目ちらし,とろろが各1事例で,いずれも鶏卵が原因と考えられた。また,3事例についても原因食品を特定できていないが,喫食したメニューに卵料理が含まれており,鶏卵の関与が推察される。米国ではS. Enteritidis食中毒の追跡調査により原因となった養鶏場を明らかにし,食中毒防止対策に役立たせている。わが国でもS. Enteritidis食中毒は深刻な問題であり,このまま放置されればさらに本食中毒が拡大して行くことは必然であろう。食中毒の原因を究明し,感染源や感染経路の解明を行なうとともに各都道府県のS. Enteritidis食中毒発生状況の情報を迅速に交換し,S. Enteritidis食中毒制御にこれらの実験室データを積極的に生かしていくことが地研や保健所検査室の使命であろう。



東京都立衛生研究所 細菌第一研究科
柳川義勢 甲斐明美 新垣正夫 門間千枝
只野敬子 尾畑浩魅 楠  淳 伊藤 武


表 1995年4-8月に東京都で発生したS. Enteritidis食中毒(速報)





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