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Vol.16 (1995/10[188])

<国内情報>
瓜実条虫Dipylidium caninumの人体感染例


 瓜実条虫Dipylidium caninumはイヌやネコに普通に寄生している円葉目の条虫である。中間宿主はイヌノミ,ネコノミ,ヒトノミ,イヌハジラミなどで,これらがイヌやネコの肛門周囲に付着している虫卵を摂取するとその体内で擬嚢尾虫Cysticercoidとなり,このような昆虫をイヌやネコが食べると小腸内で成虫となる。ヒトが誤って経口摂取した場合ヒトにも感染する。

 人体症例は世界各地から報告されているが,乳幼児が多い。わが国においても,影井(1983)のまとめたものに追加・補充すると本症例(No.14)を含めて14例報告されているが,1例を除き乳幼児ばかりである(表)。

 症例(No.14):患者は1歳2カ月の女児で,平成6年10月頃から母親が時々便中に動く白色虫体がいるのに気付いた。11月末頃からは毎日排出されるようになり,虫体数も増加したが,下痢,腹痛等の症状はみられなかった。白色虫体は3.7〜6.4mmで瓜の種様であり,子宮内の虫卵は4〜10個が一団となって卵嚢内に包臓されていた。その他の特徴もあわせて瓜実条虫と固定され,プラジカンテル10mg/kg内服後,マグコロールで排出させたところ,頭節を欠く14.5cmの条虫が排出された。

影井 昇(1983):小児科Mook No.28,121



三重大学医学部医動物学教室 安藤勝彦


表 わが国における瓜実条虫の人体症例





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