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Vol.16 (1995/11[189])

<国内情報>
インフルエンザ様患者からのエコーウイルス30型の分離−栃木県


 1994年11月〜1995年3月までに宇都宮市内にあるA高校,H医院,I事業所において,インフルエンザ様の症状を呈した患者55名から咽頭ぬぐい液またはうがい液を採取し,病因ウイルスの分離検査を行ったところ,8名からエコーウイルス30型(E30)が分離されたので報告する。

 ウイルス分離には,MDCK,Vero,HeLa,RD細胞の4種類を使用したが,E30,はRD細胞のみで分離され,市販のプール抗血清と単味抗血清による中和試験で同定された。

 表1はE30の分離状況を表したものである。A高校では11月下旬〜1月中旬にかけて5名から分離され,H医院では2月下旬〜3月上旬に2名,I事業所では11月下旬に1名から分離されたが,県内でインフルエンザが最も流行した1月下旬〜2月中旬の期間には分離されなかった。E30が分離された患者の年齢は4歳,8歳,15〜17歳,35歳であった。

 I事業所の患者3名は,治癒6カ月後に採血してE30分離株に対する中和抗体価を測定した。ウイルスが分離された患者では512倍と高い抗体価であったが,分離されなかった患者は4倍,8倍と低い値であった。

 表2はE30感染者とインフルエンザウイルス感染者の検体採取時の症状を比較したものである。E30感染者は全員が発熱(平均38.5℃)し,発熱症状はインフルエンザ感染者と同程度と思われたが,せき,上気道炎,頭痛の出現率は低く,インフルエンザ感染者よりも軽症と思われた。

 A高校生徒の欠席状況を調査してウイルス分離状況との関連をみると,インフルエンザが流行した1月下旬〜2月上旬にかけては欠席率の上昇がみられたが,E30が多く分離された11月下旬〜12月上旬には欠席率に変化がみられなかった。

 E30は,1989年から3年間連続して全国規模で無菌性髄膜炎の大流行をひきおこしたウイルスであり,栃木県においても1990年,1991年に多くの患者から分離されたが,その後は分離されなくなっていた。今回のE30の流行が地域的なもので終わったのか,それとも継続的に分離されるような常在的なものとなるのか興味がもたれ,監視したいと思う。



栃木県衛生研究所
八嶋 務 菊池美子 葭田 久 加藤敏彦 鈴木功雄


表1. インフルエンザ様患者からのエコーウイルス30型の分離状況
表2. エコーウイルス30型感染者とインフルエンザウイルス感染者の症状





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