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鳥取県において1995年にエコーウイルス7型(E7)の流行を認めた。地域を限局した小規模の流行で,感染症サーベイランス検査定点医療機関の患者69名からE7が分離された。
検査材料として咽頭拭い液,糞便,髄液758検体(7月下旬〜11月上旬受入れ)を用い,ウイルス分離は,FL,RD-18S細胞を用いて行った。両細胞に感受性を示し,CPEは検体接種から2〜3日目の早期に認められた。ウイルス同定にはエンテロプール抗血清(国立予防衛生研究所分与)と単味抗血清(愛媛県立衛生研究所分与)を使用し中和法によった。
地区別月別ウイルス分離状況を表1に示した。鳥取県は生活経済圏により東部,中部,西部に分かれている。7月下旬にはじめて倉吉市を中心とした中部地区の無菌性髄膜炎(AM)患者からE7が分離され11月上旬でほぼ終息した。
E7が分離された患者69名の臨床診断名(調査票記載どおり)と年齢分布を表2に示した。多い順に上気道炎21名,AM20名,発疹症9名であった。年齢分布は0歳20名(29%)がもっとも多く,5歳以下の年齢層で多く分離された。
症状についてみると,発熱はいずれの症例でも38〜40℃の高熱であり,上気道炎では3〜5日間発熱が続き2峰性を示した例もあった。発疹症状は,四肢,顔の小丘疹,手掌の小水疱など発疹部位も多様で上気道炎,AMなどの症例にもみられ,いずれも2歳以下の低年齢傾向であった。また3歳のメッケル憩室炎患者は発熱3日目から下血し輸血した重症例であった。
一方,AM患者58名から咽頭拭い液48件,糞便8件,髄液44件の検体が得られ,それぞれ15/48,4/8,12/44のウイルス分離率で陽性者は20/58(35%)であった。前ページ表3にウイルス分離陽性AM患者20名のうち17例の随伴症状について示した。そのうち8例が発疹,腹痛,下痢,咳などの症状を認め,肝障害を併発した乳児2例の症例もあった。
本県におけるE7の流行は1986年以来9年ぶりの流行であった。しかし,例年のエンテロウイルスの流行時期にコクサッキーA群ウイルス16型(CA16)による手足口病の大流行があった。E7はCA16流行の終息時期から流行し,例年より遅い流行の始まりとなり,大流行に至らなかったと考えられた。
鳥取県衛生研究所 川本 歩 戎谷佐知子 本田達之助
鳥取県立厚生病院小児科 奈良井 栄
岡本小児科医院 岡本博文
表1 地区別ウイルス分離状況(人)
表2 疾患別年齢分布状況(人)
表3 AM患者の髄液細胞数と随伴症状
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