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Vol.17 (1996/4[194])

<国内情報>
Vibrio cholerae O139抗血清に凝集を示すVibrio metschnikoviiについて


 横浜検疫所輸入食品・検疫検査センターで,V. cholerae O139抗血清に強く凝集を示すVibrio 3株が輸入冷凍貝から分離された。分離菌株はTCBS寒天で白糖分解性のコレラ菌やO139菌に類似した黄色集落,またPMT寒天でもマンノース分解による黄色集落を形成した。全株ともオキシダーゼ,インドールおよびオルニチン脱炭酸試験が陰性で,無塩ブイヨンに発育しなかったが,VPテストは陽性であった。ブドウ糖を発酵したが,ガスは産生せず,マンニット陽性,アラビノース陰性であることから,V. metschnikoviiと同定した。なお,コレラ毒素およびNAG-ST遺伝子を保有しているものはなかった。

 分離菌3株はV. cholerae O139およびO155抗血清に強く凝集を示したが,抗O22血清には反応しなかった。抗O139を血清を代表菌株53-96で吸収したところ,O139菌株に対する凝集素価は吸収前と同じ力価が残った。一方,O155抗血清を53-96株で吸収した場合には,両者に対する凝集抗体は完全に吸収され,またその逆も同様で,V. metschnikovii 53-96菌株はO155とまったく同一のO抗原を保有していることが証明された。

 O139菌株の検査では分離培地上の疑わしい集落について,直接スライド凝集テストを行い,推定同定をしている。従って,O139菌株の同定には,精度管理された抗O139血清が不可欠であり,特異抗O139血清を作製するためには,類属反応を示す菌株(V. cholerae O22,O155,Aeromonas O95)で吸収しなければならない。

 特異吸収Vibrio cholerae O139抗血清の分与について:平成5年7月に予研から各機関へ分与したO139抗血清は,R抗体は吸収されているが,類属反応を起こす上記の菌株では吸収していないので,特異吸収O139抗血清を必要とする機関は,予研細菌部・腸管系細菌室に連絡されたい。



国立予防衛生研究所 島田俊雄 荒川英二 伊藤健一郎
神奈川県衛生研究所 沖津忠行 山井志朗
横浜検疫所 松崎充宏 鈴木荘介 北村治志





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