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Vol.17 (1996/5[195])

<外国情報>
ウシ海綿状脳症およびクロイツフェルト・ヤコブ病の新変異型に関するWHOの勧告


 1996年4月2〜3日,WHOは,英国で3月20日に発表されたウシ海綿状脳症(BSE)とクロイツフェルト・ヤコブ病の新変異型(V-CJD)に関する公衆衛生上の問題について,専門家による国際会議を開催した。審議会は動物間でのBSEの伝染を最小限にすること,およびBSE病原体へのヒトの暴露を可能な限り完全に減らすことを目的として,勧告をまとめた。

 BSEは1986年に英国で初めて確認されたウシの伝染性海綿状脳症(TSE)である。汚染されたヒツジ,ウシの肉や骨を飼料としてウシに与えるというサイクルにより,汚染が拡大したと考えられている。英国では1988年7月,反芻動物の飼料として反芻動物の組織を用いることを禁止した。BSEの垂直および水平伝播の証拠はない。

 英国で発表された10例のV-CJDは,古典的なCJDと比較して発症年齢が若く,臨床的,病理学的にも差がみられた。会議では,BSEとV-CJDの間に明確な関係は認められないものの,状況証拠からBSEへの暴露が仮説として最も可能性が高いと結論した。さらに,サーベイランスの向上のため,診断基準を設けた。

勧告

BSE

 (1) TSEの兆候を示した動物のいかなる部分,加工品とも,ヒトや動物の食物環の中に入れるべきではない。すべての国は,TSE感染動物の処分と安全な廃棄を確実に行わなければならない。

 (2) すべての国は,国際獣疫機関の勧告に従って,BSEの継続的サーベイランスと発生報告の義務付けと行うべきである。

 (3) 国は,BSE病原体を含む恐れのある組織を,ヒトや動物の食物環の中に入れることを許可すべきではない。

 (4) すべての国は,反芻動物の飼料に反芻動物の組織を用いることを禁止すべきである。

 (5) 加工品:

 ・牛乳および乳製品は安全と考えられる。汚染動物やヒトの調査で,BSE感染性がないことが証明されている。

 ・ゼラチンは安全と考えられる。材料の組織に感染性があったとしても,通常の製造工程で不活化される。

 ・牛脂は適切な処置がとられていれば同様に安全と考えられる。

 (6) 医薬品:

 ・BSE病原体は,一般の病原微生物を不活化する物理化学的方法に対しては耐性を示す。

 ・製薬業界で用いるウシの原材料は,サーベイランスが実施されていて,かつBSEの報告がないか,散発例にとどまっている国のものとする。

 ・医薬品,特に非経口医薬品によるBSEの感染予防手段に関しては,1991年のWHO審議会の勧告に従う(Bulletin of WHO,1992,70:183-190)。

 ・上記の手段は,新しい情報が得られるにつれ,見直しを行い,必要があれば強化する。

V-CJD

 1 V-CJDの地理的分布に関し,さらに調査が必要である。

 2 V-CJDの原因に関し,さらに多くの科学的データが早急に必要である。また,すべての型のCJDに関する世界的なサーベイランスが必要である。

 3 牛肉,牛肉製品を介したBSEへの暴露は,英国で取られた措置により既に大きく減少しており,今回の勧告は危険性を最小限にするものである。

(WHO,WER,71,No.15,113,1996)






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