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Vol.17 (1996/6[196])

<外国情報>
ヒトの狂犬病,1995−米国・コネチカット州


 コネチカット州で10月3日に13歳の少女が狂犬病で死亡した。この州では1932年以来初めての症例である。

 患者は疲労,硬直,振擅,肩および左腕の痛みを訴え病院を訪れたが,頸部の神経根病と診断され,原因として重たい荷物を背負ったためとされた。その後,発熱,左腕および左顔面痛のため入院。頸部の硬直があり,神経異常として口蓋垂の左傾があった。ライム病による髄膜脳炎を疑い薬剤投与したが,振擅,瞳孔不同,舌の左偏,不安,嚥下困難,重篤な咽頭麻痺を起こしたため,狂犬病を疑う。触覚に幻覚が生じ,昏睡状態に陥り死亡。角膜の塗抹材料から狂犬病ウイルスを検出,血清ウイルス中和抗体も上昇。唾液および角膜上皮からRNAを抽出,遺伝子解析の結果,ウイルスはsilver-haired bat系の変異株と同定された。患者と家族は森に住んでおり,多くの動物と接触していたが,動物に噛まれた記憶はない。母親や兄弟によると8月19日頃にコウモリが家の中に侵入したことがあり,少女はその時2階で寝ていた。関係者に狂犬病暴露後免疫を行った。

 1980年以来米国では28例のヒトの狂犬病が診断されているが,本症例はコウモリが関係した15例目である。このうち10例はsilver-haired bat系変異株である。

(CDC,MMWR,45,No.10,207,1996)






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