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Vol.17 (1996/12[202])

<国内情報>
特定地域に発生した腸管出血性大腸菌O157散発事例について−香川県


 1996年の本県における腸管出血性大腸菌の感染者は,10月23日現在47人であり,その内訳は腸管出血性大腸菌O157感染者が45人,O26感染者が2人となっている。このうち中讃地域(香川県中央部の地域)で8月27日〜9月21日にかけて,O157の散発事例が確認され,感染者は40人(有症者21人)となった。

 これら中讃地域の感染者および関連の施設,生活環境等の調査では,直接感染源,感染経路に結びつくものはなかったが,感染者の摂食状況調査で中讃地域の感染者22世帯40人のうち,12世帯20人が特定飲食店を利用していた。感染者間において特定の飲食店利用という一部に共通性がみられたこと,また同店従事者のうち1人が感染者であったことから,食材検査,店舗内のふきとり検査など2回にわたって実施したが,O157は検出されなかった。感染者が特定飲食店を利用したのは,8月19日に1世帯2人が摂食し2人の感染,8月23日に4世帯11人が摂食し7人の感染,8月24日に2世帯6人が摂食し3人の感染,8月29日に1世帯4人が摂食し2人の感染,8月30日に2世帯6人が摂食し3人の感染,8月31日に1世帯3人が摂食し2人の感染となっており,他に1世帯1人は,摂食日が不明であった。

 あわせて国立予防衛生研究所に依頼したDNAパターンの分析結果では,県内分離株のDNAタイプは8種類に区分でき,中讃地域のうち35株については,同一のDNAパターン(Ug′UbT)によるもので,同一源流行の可能性の高いことがわかった。また他のタイプは,中讃地域の事例とは関係のないことも判明した。この(Ug′UbT)タイプは,全国的に検出例がなく,本県独特であり,中讃地域の散発事例でのみ確認された株である。

 以上のことから,摂食調査で共通性が認められるのは,特定飲食店のみであること,また同店で同一日時に同じく摂食した4世帯11人のうち4世帯7人までが感染していること,同店の従事者からO157が検出されたこと,同店を利用した感染者および従事者から検出した菌のDNAタイプがほとんど同一であること,同店の営業自粛後は,感染者の発生の沈静化が認められることなどから判断して,中讃地域においては,同店が感染経路のうちの一つに該当する可能性は高いと考えられた。

 なお,調査結果について「Kagawa-Net」(http://www.kagawa-net.or.jp/)において情報提供を行っている。



香川県薬務感染症対策課 久保英一郎 小野和宏 佐治 聰
香川県生活衛生課 井口 徹 三守 弘
香川県衛生研究所 藤井康三 吉田真由美 砂原千寿子 三木一男 山西重機


腸管出血性大腸菌O157感染者とDNAパターン分析





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