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Vol.17 (1996/12[202])

<国内情報>
C群ロタウイルスによる集団下痢症−千葉県


 C群ロタウイルスによる下痢症は,発生数は少ないものの世界各地で報告されている。しかし,ほとんどが散発例で,集団発生例は日本で数例報告されているだけである。千葉県において,1993年4月,本ウイルスによる集団発生を経験し,本月報(Vol.14,No.6,1993)にも報告した。1996年4月,県南部K町の小学校において同様の集団下痢症を認めたので報告する。

 患者発生は4月20日に始まり,24日から増加し始め,25日,26日をピークとして,27日まで続いた(図1)。患者は全学年に見られた。発病率は1〜5年生は10%前後であったが,6年生は42%と高率であった。全校では,240名中42名,18%であった。臨床症状は,吐気(45%),嘔吐(43%),下痢(31%)が高率で,発熱(17%),腹痛(14%)も若干見られた。予後は良好で,発病後2〜3日で回復した。給食は,O町給食センターで調理されており,他の施設での患者発生は見られなかった。

 患者14名について,便12件,ペア血清3件を採取し,検査を行った。電子顕微鏡観察では,12件中11件からロタウイルスを検出したが,A群ロタウイルスELISAでは全例陰性であった。そこで,C群ロタウイルスRPHA(岡山県環境保健センター分与)を行ったところ,12件中10件陽性を示した。ウイルスRNAのSDS-PAGEは,C群ロタウイルス特有の泳動パターンを示した。さらに,CaCo-2細胞によるウイルス分離を試みたところ,12件中9件からウイルスを分離し,IFAによりC群ロタウイルスであることを確認した。一方,ペア血清3件について,便中のウイルス粒子を用いた免疫電顕を行ったところ,3件とも抗体上昇を認めた。なお,患者便,食品,水の細菌学的検査から既知の病原細菌は検出されなかった。

 以上の結果から,今回の集団発生は,C群ロタウイルスの感染によるものであることが確認された。県内のサーベイランス検査定点の検体からは,1996年2月2例,3月1例,4月2例,C群ロタウイルス陽性が見られている(成人3例,小児2例)。また,東京都病原微生物検査情報(Vol.17,No.3,1996)でも,同時期に報告が見られている。これらのことから,本年は,1993年以来2年ぶりのC群ロタウイルスの流行があったと考えられる。



千葉県衛生研究所
篠崎邦子 山中隆也 小川知子 時枝正吉
勝浦保健所
高橋 亮 太田洋子 酒井利郎 常包正俊


図1. K小学校における患者発生





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