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マンソン裂頭条虫は犬や猫を終宿主とする条虫で,人はその中間宿主であるケンミジンコないしは蛇や蛙等を生食する場合に感染するが,その多くは幼虫(plerocercoid)の形で人体の各組織内に寄生し病害をもたらす。このような幼虫寄生によるマンソン孤虫症のわが国における感染の現状は本月報Vol.15,No.4(1994)に報告した。ただ本幼虫は極めてまれに人体内でも幼虫になることがあり,わが国ではすでに12例が報告されていることも同時に報告した。
本報告ではその第13例目と第14例目を見出したので極めてまれな例として報告する。なお,同時に蛇の刺身を食べた他1例(71歳,男,農業)も生食数日後から全身倦怠感,微熱,膨満感が出現し,37.5%の好酸球増多が見られ,右前腕と右下腿外側にそれぞれ紅斑を認めたが,検便では虫卵は見られなかった。
第1例:山梨県在住,47歳,男,農業
平成8(1996)年6月4日,自分達で捕獲したシマヘビを友人2人と共に刺身で食べた。数日後に発熱(39℃),全身倦怠感が生じたので,山梨赤十字病院を受診し,感冒との診断で投薬されたが改善されなかった。同月14日に右臍部に2cm程の発疹があり,指先で押すと中から10〜15cmの白色虫体が出現した。
16日に検便で虫卵を発見,combantorineを投与したが改善しなかった。25日には便内に白色きしめん状の虫体が認められたので翌日女子医大を訪れ,検便でマンソン裂頭条虫卵が発見されたので,7月4日に入院。白血球8,270,好酸球47.1%と好酸球増多が見られた。5日にpraziquantel30mg/kgを投与したところ,2隻の成虫体が排出した。
7月8日には腹部膨満感は消失し,好酸球数も26.7%に低下,糞便検査で虫卵は陰性になった。
第2例:山梨県在住,56歳,男,農業
平成8(1996)年6月4日,第1例と共にシマヘビの刺身を食べ,数日後に全身倦怠感を覚え,14日に腹部膨満感,便秘が出現,山梨赤十字病院を訪れた。感冒と診断され投薬されたが,改善しなかった。検便では虫卵陰性。
7月8日に女子医大に来院し,検便によってマンソン裂頭条虫卵が検出された。白血球数8,780,好酸球増多(21.0%)が見られた。16日praziquantel30mg/kg投与により3隻の成虫体が排出された。
なお,上記3例(虫卵検出されなかった例含む)とも幼虫抗原によるELISA法では6,400倍の強陽性であった。
東京女子医大 山浦 常
国立予防衛生研究所 影井 昇
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