発生動向総覧
◆全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第43号「速報」参照)。
〈第34週コメント〉8月26日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ 1例(推定感染地域:国内)
細菌性赤痢 15例(推定感染地域:国内1例、中国9例、インド3例、タイ1例、 ネパール1例)
腸チフス 1例(推定感染地域:インド)
パラチフス 4例(推定感染地域:インド2例、インドネシア1例.他の1例は疑 似症) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症 202例(うち有症者154例) 報告の多い都道府県:愛知県(16例)、東京都(14例)、大阪府(13例)、広島県(13例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(88例)、O26 VT1(40例)、O157 VT2
(36例)、O111 VT1・VT2(7例)、O157 VT1(4例)、O111
VT1( 2例)、O26 VT1・VT2( 1例)、O63 VT2( 1例)、
O103 VT1(1例)、O115 VT1(1例)、その他(21例)
年齢:10歳未満(90例)、10代(22例)、20代(36例)、30代(20例)、40代(10
例)、50代(11例)、60代(5例)、70歳以上(8例)) |
4類感染症: |
デング熱 1例(推定感染地域:ミクロネシア)
マラリア 2例 三日熱1例(推定感染地域:インド)
熱帯熱1例(推定感染地域:ナイジェリア)
ライム病 1例(推定感染地域:国内)
レジオネラ症 2例(68歳、84歳) |
5類感染症: |
アメーバ赤痢 7例(推定感染地域:国内5例、パラオ1例、その他1例. 推定感染経路:経口感染1例、性的接触3例、不明3例)
ウイルス性肝炎 1例(C型_推定感染経路:不明)
クロイツフェルト・ヤコブ病 3例(いずれも孤発性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 2例〔66歳(死亡)、42歳〕
後天性免疫不全症候群 16例(無症候5例、AIDS 11例)
推定感染経路:性的接触14例(異性間6例、同性間8例)、不明2例
推定感染地域:国内13例、タイ1例、不明2例
梅毒 4例(早期顕症I期2例、早期顕症II期1例、無症候1例)
破傷風 1例(55歳)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:亀 頭部分泌液)
(補)他にコレラ1例、アメーバ赤痢1例の報告があったが削除予定。また報告遅れとして、
急性脳炎5例〔病原体不明2例(3歳、4歳)、A型インフルエンザウイルス2例(2歳、5
歳)、ムンプスウイルス1例(2歳)〕の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第11週から増加傾向が認められ、第25週には過去10年間の全ての週と比較して最高値となった。その後も第29週まで最高値を更新 し続けたが、第30週からは減少している。しかし相変わらず、過去10年間の当該週と比較して 最高値を示しており、都道府県別では福井県(1.5)、高知県(1.5)、宮崎県(1.4)が多い。A群溶 血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週から減少し続けているが、過去5年間の同 時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多く、都道府県別では鳥取県(1.3)、宮崎県(1.1)が 多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第12週から減少傾向が続いているが、第34週は増 加した。過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では福井県(6.7)、大分県(5.8)、 宮崎県(5.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第20週から第29週まで緩やかに増加し た後、第30週からほぼ横ばいで推移したが、第33週から減少している。都道府県別では大分県(3.0)、北海道(2.5)、長野県(2.5)、福岡県(2.5)が多い。風しんの定点当たり報告数は前週と 同値で、都道府県別では18都道府県から報告があったが、いずれも0.1以下であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は、第26週を除き、第20週から第29週まで増加し続けたが、第30 週からは減少している。都道府県別では秋田県(3.0)、青森県(2.5)、福島県(2.2)が多い。麻しんの定点当たり報告数は前週と同値で、第1週から継続して、過去10年間の当該週と比較し て最低値を示している。15都道府県から報告があったが、いずれも0.1以下であった。RSウイルス感染症はゼロ報告を含めて32都道府県から報告がなされ、報告数は合計28例であった。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は第20週から増加傾向が認めら れた後、第25週をピークに減少傾向が認められていたが、第33週から再び増加している。過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では山口県(1.0)、山形県(0.9)が多い。
注目すべき感染症
◆ 腸管出血性大腸菌感染症
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図1. 腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原体保有者含む)の年別週別発生状況 |
図2. 腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原体保有者含む)の都道府県別発生状況 (2004年第1〜34週の累積) |
図3. 腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原体保有者含む)の都道府県別発生状況 (2004年第34週のみ) |
腸管出血性大腸菌感染症は感染症法に基づく3類感染症として、患者または無症状病原体保有者について、診断した医師は届け出が義務づけられている。無症状病原体保有者は、食品産業従事者の定期的検便によって偶然発見される場合もあるが、探知された患者と食事を 共にした者や接触者の調査などによって発見される場合が多い。
2004年第34週の現段階での報告数は202例であった。1週間当たりの報告数は第30週を除き、第29週以降ほぼ同数で推移している(図1)。また、第34週までの累積報告数は2,305例で、 過去3年間の同週までの累積報告数(2001年3,296例、2002年2,319例、2003年1,514例)と比較 すると、2002年の状況に近い。第34週までの累積報告数を都道府県別にみると、東京都(181 例)、石川県(163例)、大阪府(144例)、岡山県(141例)、愛知県(108例)が多い(図2)。第34 週に限ると、愛知県(16例)、東京都(14例)、大阪府(13例)、広島県(13例)が多く(図3)、報告の多くは家庭内感染を含む散発事例であるが、保育所での集団発生が複数の都道府県で散見される他、飲食店や高齢者施設における集団発生もみられている。
第34週までの累積報告数を血清型・毒素型別にみると、O157 VT1・VT2 798例(35%)、
O157 VT2 524例(23%)、O26 VT1 458例(20%)の順に多い。また、年齢群別(0〜69歳までは
10歳毎、および70歳以上)にみると、10歳未満943例(41%)が最も多く、10代381例、20代314例、
30代205例、40代124例、50代137例、60代94例、70歳以上107例となっている。
溶血性尿毒症症候群(HUS)は第34週に2例報告があり、本年の累積は31例となった。それらの原因菌の血清型・毒素型別では、O157 VT2(16例)、O157 VT1・VT2(9例)、O26 VT1・ VT2(2例)、O111 VT1・VT2(2例)、その他2例であった。また、年齢群別では10歳以下が24例 (うち、5歳以下は20例)、10代1例、60代1例、70歳以上5例であった。性別では男性10例、女 性21例と女性に多かった。また、死亡例は第34週に1例報告され、本年報告されている死亡例 は4例(70代女性、2歳女性、3歳女性、80歳男性)となったが、原因菌の血清型・毒素型はそれ ぞれO157 VT1・VT2、O26 VT1・VT2、O111 VT1・VT2、O157 VT1・VT2であった。死亡例や HUSの合併については、届け出時点以降での発生が十分反映されていない可能性があり、このような発生があった場合には「入力時のお願い」として、修正報告することをお願いしている。
例年報告は初秋にも多くみられるので、今後も一層の注意が必要である。また、本年におい
ても、保育所などに関連した集団発生の報告が散見されている。保育所などでの人から人へ
の感染を防ぐために、タオルの共用を避けることや、普段からの手洗い(特にオムツ交換時)、
園児への排便後・食事前の手洗い指導を徹底することが重要である。さらに、簡易プールなど
の衛生管理にも注意を払う必要がある。
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