 発生動向総覧
◆全数報告の感染症
＊「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正（11月5日施行）により、対象疾患、分類が一部変更されました（第43号「速報」参照）。
〈第37週コメント〉9月16日集計分
注意：これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
| 1類感染症： |
報告なし |
| 2類感染症： |
コレラ 3例（推定感染地域：インド2例、フィリピン1例）
細菌性赤痢 26例〔推定感染地域：国内2例、インド9例、中国6例、モロッコ 2例、ベトナム1例、ネパール1例、インドネシア1例、ペル ー1例、フィリピン1例、インド/中国（香港）1例、不明1例〕
腸チフス 2例（推定感染地域：ともにインドネシア）
パラチフス 2例（推定感染地域：インド1例、インドネシア1例） |
| 3類感染症： |
腸管出血性大腸菌感染症 104例（うち有症者60例）
報告の多い都道府県：福岡県（12例）、岩手県（10例）
血清型・毒素型：O157 VT1・VT2（34例）、O26 VT1（21例）、O157 VT2
（ 16例）、O157 VT1（ 10例）、O111 VT1（ 5例）、O26
VT1・VT2（ 3例）、O111 VT1・VT2（ 2例）、O1 VT1（ 1
例）、その他（12例）
年齢：10歳未満（52例）、10代（11例）、20代（9例）、30代（9例）、40代（6例）、
50代（6例）、60代（6例）、70歳以上（5例） |
| 4類感染症： |
デング熱 4例［推定感染地域：ミクロネシア2例（うち、ヤップ島1例）、
マレーシア1例、インドネシア1例］
日本紅斑熱 2例（島根県1例、徳島県1例）
マラリア 2例（三日熱1例＿推定感染地域：パプアニューギニア、 熱帯熱1例＿推定感染地域：ガーナ）
レジオネラ症 1例（56歳）
A型肝炎 2例（推定感染地域：ともに国内）
レプトスピラ症 1例（沖縄県） |
| 5類感染症： |
アメーバ赤痢 8例（推定感染地域：国内5例、ベトナム1例、不明2例． 推定感染経路：経口感染2例、性的接触2例、不明4例）
ウイルス性肝炎 3例（B型2例＿推定感染経路：性的接触1例、不明1例．
C型1例＿推定感染経路：刺青用の針）
クリプトスポリジウム症 41例［千葉県（33）、埼玉県（8）．推定感染地域：国 内40例、ネパール1例］
クロイツフェルト・ヤコブ病 1例（孤発性）
| 後天性免疫不全症候群 10例 |
（無症候5例、AIDS 5例）
推定感染経路：性的接触8例（異性間4例、同性間4例）、不明2例
推定感染地域：国内5例、ペルー1例、中国1例、国内/ミャンマー1例、不
明2例
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ジアルジア症 1例（推定感染地域：ネパール）
髄膜炎菌性髄膜炎 1例（東京都）
梅毒 8例（早期顕症II期4例、晩期顕症2例、無症候2例）
破傷風 1例（37歳）
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 3例
（遺伝子型VanA 1例＿菌検出検体：便．VanB 1例＿菌検出検体：便．不 明1例＿菌検出検体：便）
（補）他に、ウイルス性肝炎1例の報告があったが、削除予定。 |
◆定点把握の対象となる５類感染症（週報対象のもの）
全国の指定された医療機関（定点）から報告され、疾患により小児科定点（約3,000 カ所）、インフルエンザ（小児科・内科）定点（約5,000 カ所）、眼科定点（約600 カ所）、基幹定点（約500 カ所）に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
小児科定点報告疾患：咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第11週から増加傾向が認められ、第 25週には過去10年間の全ての週と比較して最高値となった。その後も第29週まで最高値を更新 し続けたが、第30週からは減少している。しかし、過去5年間の同時期（前週、当該週、後週）と 比較してやや多く、都道府県別では福井県（2.0）、高知県（1.1）、宮崎県（1.0）が多い。A群溶血 性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週から減少し続けていたが、第35週からは増加している。過去5年間の同時期と比較してかなり多く、都道府県別では富山県（1.6）、福島県 （1.4）、鳥取県（1.4）が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第12週から減少傾向が続い ていたが、第34週からわずかに増加している。過去5年間の同時期と比較してかなり多く、都道 府県別では大分県（5.5）、福井県（5.4）、宮崎県（5.2）が多い。手足口病の定点当たり報告数は第20週から第29週まで緩やかに増加し、その後第32週までほぼ横ばいで推移した。第33週か ら減少したが、第35週からは再びわずかに増加した。都道府県別では宮崎県（5.1）、大分県 （3.8）、福井県（3.2）が多い。風しんの定点当たり報告数は前週とほとんど同値で、都道府県別 では14都道府県から報告があったが、いずれも0.1未満であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は、第26週を除き、第20週から第29週まで増加し続けたが、第30週からは減少している。都道府県別では青森県（2.3）、福島県（2.3）が多い。麻しんの定点当たり報告数は前週とほとんど同値で、第1週から継続して、過去10年間の当該週と比較して最低値を示している。8都道府県から報告があったが、定点当たり報告数はいずれも0.1未満であった。RSウイルス感染症はゼロ報告を含めて33都道府県から報告がなされ、報告数は合計42例であった。
基幹定点報告疾患：マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、都道府県別では岡山県（1.4）、新潟県（0.8）が多い。
 注目すべき感染症
◆ 腸管出血性大腸菌感染症
腸管出血性大腸菌感染症は感染症法に基づく3類感染症として、患者または無症状病原体 保有者について、診断した医師は届け出が義務づけられている。無症状病原体保有者は、食 品産業従事者の定期的検便によって偶然発見される場合もあるが、探知された患者と食事を 共にした者や接触者の調査などによって発見される場合が多い。
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| 図1. 腸管出血性大腸菌感染症（無症状病原体保有者含む）の年別週別発生状況 |
図2. 腸管出血性大腸菌感染症（無症状病原体保有者含む）の都道府県別発生状況 （2004年第37週のみ） |
図3. 腸管出血性大腸菌感染症（無症状病原体保有者含む）の都道府県別発生状況 （2004年第1〜37週の累積） |
2004年第37週の現段階での報告数は104例であった。1週間当たりの報告数は第30週を除 き、第29週以降ほぼ同数で推移していたが、第36週からは減少している（図1）。第37週の報告 を都道府県別にみると福岡県（12例）、岩手県（10例）が多く（図2）、岩手県の事例は保育所で の集団発生であった。
2004年の第37週までの累積報告数は2,805例で、過去3年間の同週までの累積報告数（2001 年3,805例、2002年2,652例、2003年1,932例）と比較すると、2002年の状況に近い。都道府県別 にみると、東京都（214例）、大阪府（175例）、石川県（167例）が多く（図3）、年齢群別（0〜69歳 までは10歳毎、および70歳以上）にみると、10歳未満1,177例（42%）、10代451例、20代373例、 30代253例、40代147例、50代156例、60代123例、70歳以上125例となっている。血清型・毒素 型別にみると、O157 VT1・VT2 967例（35%）、O157 VT2 627例（22%）、O26 VT1 536例（19%） の順に多い。
溶血性尿毒症症候群（HUS）の第37週までの累積は35例である。年齢群別では10歳以下が 28例（うち、5歳以下は23例）、10代1例、60代1例、70歳以上5例であった。性別では男性11例、 女性24例と女性に多かった。それらの原因菌の血清型・毒素型別では、O157 VT2（16例）、 O157 VT1・VT2（9例）、O26 VT1・VT2（2例）、O111 VT1・VT2（3例）、O146 VT1・VT2（1例）、 その他4例であった。本年報告されている死亡例は4例（70代女性、2歳女性、3歳女性、80歳 男性）であるが、原因菌の血清型・毒素型はそれぞれO157 VT1・VT2、O26 VT1・VT2、O111 VT1・VT2、O157 VT1・VT2であった。死亡例やHUSの合併については、届け出時点以降で の発生が十分反映されていない可能性があり、このような発生があった場合には「入力時のお 願い」として、修正報告することをお願いしている。
例年報告は初秋にも多くみられるので、今後も一層の注意が必要である。また、本年におい ても、保育所などに関連した集団発生の報告が散見されている。保育所などでの人から人へ の感染を防ぐために、タオルの共用を避けることや、普段からの手洗い（特にオムツ交換時）、 園児への排便後・食事前の手洗い指導を徹底することが重要である。さらに、簡易プールなど の衛生管理にも注意を払う必要がある。
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