発生動向総覧
◆全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第2003年第43号「速報」参照)。
〈第43週コメント〉10月28日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ 1例(推定感染地域:インド)
細菌性赤痢 7例(推定感染地域:国内1例、中国2例、フィリピン2例、インド1 例、ウズベキスタン1例)
腸チフス 3例(推定感染地域:いずれもインド)
パラチフス 3例(推定感染地域:インド1例、ネパール1例、タイ/インド/パキス タン/トルコ1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症 46例(うち有症者31例)
報告の多い都道府県:大阪府(7例)、兵庫県(6例)
血清型・毒素型:O157 VT2 (17例)、O157 VT1・VT2 (16例)、O26 VT1 (4例)、
O157 VT1(2例)、O111 VT1(2例)、その他(5例)
年齢:10歳未満(22例)、10代(1例)、20代(9例)、30代(3例)、40代(2例)、
50代(3例)、60代(3例)、70歳以上(3例)
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4類感染症: |
つつが虫病 3例(いずれも福島県)
デング熱 2例(推定感染地域:ネパール1例、カンボジア1例)
日本紅斑熱 2例(徳島県、宮崎県)
レジオネラ症 1例(70代)
レプトスピラ症 2例〔推定感染地域:国内2例(愛媛県、神奈川県)〕 |
5類感染症: |
アメーバ赤痢 4例 |
推定感染地域:国内1例、インドネシア1例、不明2例
推定感染経路:経口1例、性的接触(異性間)1例、不明2例例 |
ウイルス性肝炎 4例(いずれもB型_推定感染経路:性的接触2例、不明2例)
クリプトスポリジウム症 1例(推定感染地域:南米)
クロイツフェルト・ヤコブ病 3例(いずれも孤発性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 1例(60代、死亡)
後天性免疫不全症候群 6例 |
(無症候17例、AIDS 3例、その他1例)
推定感染経路:性的接触16例(異性間4例、同性間11例、異性間同性間
不明1例)、不明5例
推定感染地域:国内19例、ブラジル1例、不明1例例 |
梅毒 4例(早期顕症II期1例、無症候3例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 1例 (遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)
急性脳炎 13例(すべて病原体不明.20代1例、50代2例、60代6例、70代1 例、80代2例、90代1例)
(補)他に、梅毒1例の報告があったが、削除予定。また、報告遅れとして、レプトスピラ
症1例〔推定感染地域:国内(長崎県)〕、急性脳炎17例〔単純ヘルペスウイルス1例
(80代)、肺炎球菌1例(70代)、病原体不明15例(10代1例、40代1例、50代2例、60
代4例、70代4例、80代3例)〕の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第25週に過去10年間の全ての週と比 較して最高値となった後、第29週まで最高値を更新し続けた。その後、第40週の微増を除き、減少を続けたが、第43週は微増した。過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多く、都道府県別では福井県(1.0)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週から減少し続けた後、第35週からは増加傾向が認められ、第43週も増加した。都道府県別では北海道(2.0)、大分県(1.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第12週から減少傾向が続いた後、第31週からはほぼ横ばいで推移している。都道府県別では愛媛県 (5.3)、三重県(5.1)、鳥取県(5.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、都道府県別では岩手県(1.6)、福井県(1.6)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第20週から第29週まで緩やかに増加した後、第32週までほぼ横ばいで推移した。第33週に微減したが、その後再びほぼ横ばいで推移している。過去5年間の同時期と比較してやや多く、都道府県別では宮崎県 (8.7)、鹿児島県(3.7)が多い。風しんの定点当たり報告数は前週とほとんど同値で、都道府県 別では14都道府県から報告があったが、いずれも0.1未満であった。麻しんの定点当たり報告数は前週とほとんど同値で、第1週から継続して、過去10年間の当該週と比較して最低値を示している。7都道府県から報告があったが、定点当たり報告数はいずれも0.1未満であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は、第40週から増加傾向が認められており、第43週も増加した。 都道府県別では佐賀県(5.2)、福井県(3.6)が多い。RSウイルス感染症はゼロ報告を含めて37都道府県から報告がなされ、報告数は合計105例であった。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は前週に続いて微減し、都道府県別では福島県(1.3)が多い。
注目すべき感染症
◆ 急性脳炎(2004年9月1日〜11月7日報告分)
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図1. 発症週別・都道府県別にみた病原体不明の急性脳炎(脳症) |
図2. 性別・年齢別にみた病原体不明の急性脳炎(脳症) |
急性脳炎は2003年11月5日施行の感染症法一部改正によって、それまでの基幹定点からの報告による定点把握疾患から五類感染症全数把握疾患に変更され、診断した全ての医師に届出が義務づけられている。届出の対象は、四類感染症に規定されているウエストナイル脳炎および日本脳炎を除き、それ以外の病原体によるもの、病原体不明のものである。また届け出には、 炎症所見が明らかでなくとも同様の症状を呈する脳症も含まれる。
2004年8月分までの報告例については、先の感染症週報39号「注目すべき感染症」において概要を述べたが、10月以降報告数の増加が目立っている。これらの多くは、秋田県、山形県、新潟県で発生している原因不明の急性脳症患者の報告であり、メディアなどでも報道されている。
感染症法のもとで、急性脳炎として2004年9月に報告(診断日とは異なる)されたのは1例のみ で、病原体がアデノウイルスと判明した症例であった。しかし、10月1日から11月7日までに報告 された症例数は62例に上った。そのうち、病原体診断が得られている急性脳炎は7例(単純ヘル ペスウイルス3例、A型インフルエンザウイルス1例、EBウイルス1例、A群コクサッキーウイルス2 型1例、肺炎球菌1例)で、病原体不明は55例(原因不明の急性脳症も含む)と多かった。病原体 不明の55例の発症週別・都道府県報告数では、秋田県23例、新潟県12例、山形県10例が多く、 福島県2例、岐阜県2例、北海道、岩手県、宮城県、東京都、石川県、福井県が各1例であった (図1)。発症日は、8月が2例、9月13〜19日が2例、20〜26日が16例、27〜10月3日が18例、4〜10日が5例、11〜17日が5例、18〜24日が6例で、他に9月中旬と記載されたものが1例であった。また、性別では男性23例、女性32例と女性が多く、年齢の中央値は69歳で、年齢群別では10代1例、20代3例、40代1例、50代6例、60代17例、70代15例、80代10例、90代2例であった(図2)。 血液透析を受けているなど腎機能障害の有無については、全てが正確に把握されているとは言 えないが、有りが20例、無しが2例、不明33例と記載されていた。また、転帰については、13例の死亡が確認されている。
*速報として、関連記事を掲載しています。
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