発生動向総覧
◆全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第2003年第43号「速報」参照)。
〈第10週コメント〉3月16日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢 46例(推定感染地域:国内37例*、インド3例、インドネシア2例、フィリピン2例、ミャンマー1例.疑似症1例)*うち36例は愛知県からの報告で、同一施設での集団発生
腸チフス 1例(推定感染地域:国内.死亡) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症 36例(うち有症者17例)
血清型・毒素型:O26 VT1 (32例*)、O157 VT1・VT2 (2例)、O157 VT2 (1例)、その他(1例)
年齢:10歳未満(24例)、20代(5例)、30代(4例)、40代(1例)、60代(1例)、70歳以上(1例)
*うち31例は、第9週に報告のあった1例とともに、宮城県の保育施設での集団発生 |
4類感染症: |
エキノコックス症 1例(多包条虫)
マラリア 2例 熱帯熱1例(推定感染地域:バヌアツ)
三日熱 1例(推定感染地域:ミャンマー)
レジオネラ症 1例(70代.死亡)
E型肝炎 1例(推定感染地域:国内.推定感染源:焼肉) |
5類感染症: |
アメーバ赤痢 6例 |
推定感染地域:国内4例、中国(香港)1例、フィリピン1例
推定感染経路:経口2例、性的接触(同性間)1例、不明3例 |
ウイルス性肝炎 2例 |
B型1例_推定感染経路:性的接触(異性間)
C型1例_推定感染経路:性的接触(異性間) |
後天性免疫不全症候群 8例 |
(無症候6例、AIDS 2例)
推定感染経路:性的接触6例(異性間1例、同性間5例)、静注薬物使用1例、不明1例
推定感染地域:国内6例、スペイン1例、ブラジル1例 |
髄膜炎菌性髄膜炎 1例(推定感染地域:国内.3歳)
梅毒 2例(ともに早期顕症I期)
破傷風 1例(40代)
急性脳炎 5例〔B型インフルエンザウイルス4例(1歳1例、4歳1例、7歳2例.うち、死亡3例)、病原体不明1例(50代)〕
(補)他に、マラリア1例、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例、後天性免疫不全症候群3例の報告があったが、削除予定。また、昨年分の報告遅れとしてE型肝炎1例(推定感染地域:国内、推定感染源:不明)、本年分の報告遅れとしてE型肝炎1例(推定感染地域:国内、推定感染源:不明)、急性脳炎5例〔B型インフルエンザウイルス4例(1歳3例、2歳1例.うち、死亡1例)、ロタウイルス1例(5歳)〕の報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ定点報告疾患:定点当たり報告数は2005年第1週以降で初めて減少に転じたが、まだ過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が継続している。都道府県別では福井県(82.7)、秋田県(76.0)、長野県(72.0)、長崎県(69.0)、新潟県(68.8)、熊本県(65.9)、石川県(64.9)、山口県(62.4)が多い。
小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では石川県(0.66)、福井県(0.50)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では山形県(4.5)、富山県(3.0)、北海道(2.6)、福井県(2.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は微減し、第3週以降減少傾向が継続している。都道府県別では宮崎県(17.2)、福井県(15.2)、大分県(12.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(6.2)、宮崎県(3.6)、鹿児島県(3.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では徳島県(0.91)、和歌山県(0.61)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では奈良県(0.09)、和歌山県(0.03)、香川県(0.03)が多い。風しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では鹿児島県(0.11)、滋賀県(0.06)、北海道(0.04)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(6.4)、佐賀県(3.3)、熊本県(3.0)が多いが、福井県では2004年の第42週以降、高値が続いている。RSウイルス感染症は、ゼロ報告を含めて35都道府県から65例の報告があり、報告数はほぼ横ばいであった。年齢別では、1歳以下が全体の77%を占めている。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は横ばいであった。しかし、過去5年間の同時期と比較してかなり多く、都道府県別では岡山県(2.2)、山口県(1.4)、福島県(1.1)が多い。
注目すべき感染症
◆インフルエンザ
2005年第10週の全国定点医療機関からの報告数は207,306、定点当たり報告数は44.0で、2005年第1週以降はじめて減少に転じた(図1)。定点当たり報告数が60.0を超えているのは福井県(82.7)、秋田県(76.0)、長野県(72.0)、長崎県(69.0)、新潟県(68.8)、熊本県(65.9)、石川県(64.9)、山口県(62.4)の8県、50以上では22道県であるが、それぞれ第9週(12道県および25道県)よりも減少した(図2)。 |
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図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1994/95シーズン〜2005年第10週) |
また、前週よりも報告数が減少したのは、第9週では14都府県であったのに対して、第10週では36都道府県と大幅に増加しており、インフルエンザの流行はピークを過ぎつつあるものと推定される(図3)。今シーズンのピークにおける定点当たり報告数は50.0で、過去10シーズンとの比較では、1997/98、1994/95シーズンに続く高い水準を示した。また、第1週から10週までの定点からの総報告数は1,141,465で、昨シーズン(717,439)よりも大幅に増加している。
今シーズンはB型インフルエンザウイルスの分離報告数が半数以上(約62%)を占めた(本号8ページ「病原体情報」参照)。
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図2. インフルエンザの週別・都道府県別発生状況(2005年第10週) |
図3. インフルエンザ定点当たり報告数の都道府県別増減(2005年第10週) |
表1. 2004/05シーズンのインフルエンザ脳症の報告例(2005年第10週現在) |
急性脳炎の報告基準の変更に伴い、2004年3月よりインフルエンザ脳症も急性脳炎として報告されることになったが、今シーズンにおける報告例の概要を表1に示す。これまでに24例の報告があり、インフルエンザ流行の増大に伴って第7週(2月中旬)以降に報告数が増加している。
また、今シーズンの特徴を反映して、B型インフルエンザ罹患者での発症が比較的多い(A型4例、B型17例、不明3例)。なお、第10週現在インフルエンザの流行はまだ継続中であり、インフルエンザ脳症の報告はさらに増加していくものと思われ、今後とも注意深い観察が必要である。
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