発生動向総覧
◆全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(第2003年第43号「速報」参照)。
〈第14週コメント〉4月14日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が、集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ 2例(推定感染地域:フィリピン1例、台湾1例)
細菌性赤痢 8例(推定感染地域:国内1例、インド2例、フィリピン1例、インドネシア1例、インド/パキスタン1例、インド/ネパール1例、不明1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症 9例(うち有症者8例)
報告の多い都道府県:富山県(4例、第13週からの飲食店における集団発生)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(6例)、O157 VT2(2例)、その他(1例) 年齢:10歳未満(1例)、20代(3例)、30代(1例)、50代(1例)、60代(2例)、70歳以上(1例) |
4類感染症: |
オウム病 2例(推定感染源:ジュウシマツ1例、鳥1例)
つつが虫病 1例(神奈川県)
マラリア 1例(型不明_推定感染地域:アフリカ)
E型肝炎 2例 (推定感染地域:ともに国内、推定感染源:豚レバー1例、不明1例)
A型肝炎 7例(推定感染地域:国内5例、カンボジア1例、東南アジア1例) |
5類感染症: |
アメーバ赤痢 6例 |
推定感染地域:すべて国内
推定感染経路:経口1例、性的接触(異性間)1例、不明4例 |
ウイルス性肝炎 1例(B型_推定感染経路:不明)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 1例(49歳) |
後天性免疫不全症候群 6例 |
(無症候3例、AIDS 2例、その他1例)
推定感染経路:すべて性的接触(異性間1例、同性間5例)
推定感染地域:すべて国内 |
梅毒 10例(早期顕症I期3例、早期顕症II期3例、無症候4例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 1例 (遺伝子型:VanB_菌検出検体:尿)
急性脳炎 2例〔ともに病原体不明(1歳、20代)〕
(補)他に、ウイルス性肝炎1例、梅毒2例の報告があったが、削除予定。また、報告遅れとしてE型肝炎1例(推定感染地域:中国)、急性脳炎10例〔A型インフルエンザウイルス1例(3歳)、B型インフルエンザウイルス4例(30代1例、70代2例、80代1例:死亡)、ペニシリン耐性肺炎球菌1例(60代)、病原体不明4例(40代1例、50代2例、60代1例)〕の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ定点報告疾患:定点当たり報告数は5週間連続で大きく低下したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態は継続している。都道府県別では沖縄県(18.7)、秋田県(18.6)、福井県(12.5)、青森県(12.3)が多い。
小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱のの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では岐 阜県(0.42)、福井県(0.41)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.1)、石川県(2.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では宮崎県(17.8)、福井県(13.9)、鳥取県(9.9)、大分県(9.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では沖縄県(4.6)、宮崎県(3.2)、三重県(2.7)、福岡県(2.7)が多いが、特に沖縄県では第4週以降、全国で最も高い値が続いている。手足口病の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では沖縄県(0.56)、高知県(0.52)が多い。百日咳の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では福井県(0.18)、栃木県(0.07)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では福島県(0.06)、岡山県(0.06)、沖縄県(0.06)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では愛媛県(0.78)、岐阜県(0.53)、和歌山県(0.39)が多い。麻しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では福井県(0.05)、高知県(0.03)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(3.5)、熊本県(2.3)、福岡県(2.2)、佐賀県(2.1)が多い。RSウイルス感染症は、ゼロ報告を含めて34都道府県から44例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下が全体の75%を占めている。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時
期と比較してやや多い。都道府県別では山口県(1.67)、石川県(1.20)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ、特にインフルエンザ脳症について
2005年第14週の全国レベルでのインフルエンザ報告数は24,589、定点当たり報告数は5.24と、第9週のピーク以降は大幅な低下が続いている(図1)。例年よりも遅れているが、インフルエンザの流行は終息に向かっている。
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図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1994/95シーズン〜2005年第14週) |
表1. インフルエンザ脳症とライ症候群の比較 |
表2. 2004/05シーズンのインフルエンザ脳症の報告例(2005年第14週現在) |
インフルエンザ脳症は毎年、インフルエンザの流行期に一致して5歳未満の乳幼児を中心に発生がみられている。インフルエンザ発症による発熱から神経症状(痙攣、熱せん妄、意識障 害など)の出現までが0〜1日以内と急速であり、予後は致命率30%、後遺症出現率25%と言われている(「インフルエンザ脳症」の手引き:厚生労働省インフルエンザ脳症研究班編集より)。以前はライ症候群と混同された場合もあったが、異なった病態である(表1)。
今シーズンのインフルエンザ脳症の報告一覧を表2に示す。これまではA型インフルエンザ罹患者(特にAH3)に多いとされてきたが、今シーズンはB型の流行を反映してか、第14週現在でB型罹患者からの報告が60%以上を占めている。しかしながら、全報告例は36例にとどまっており、従来1シーズンに100〜300例といわれていた報告数と比べて少なくなっている。また、報告のあった自治体は17都府県であり、30道府県からの報告はなかった。インフルエンザ脳症が急性脳炎のカテゴリーに組み込まれて、全国の医療機関から報告されるようになったのは実質的に今シーズンからであるが、将来に向けてそのサーベイランスの効率性および精度を高めることは、検討すべき課題である。
インフルエンザ脳症はこれまで小児の疾患であるとされてきたが、表2にみるように、最近高年齢者での報告が含まれている。しかし高齢者におけるインフルエンザ脳症が、従来の小児におけるものと同じものかどうかについては、今後の検討が必要と思われる。
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