発生動向総覧
◆全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(平成15年11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(2003年第43号「速報」参照)。
〈第48週コメント〉12月8日集計分
注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ3例(推定感染地域:フィリピン2例、疑似症1例)
細菌性赤痢6例(推定感染地域:国内1例、タイ2例、インド1例、ベトナム/カンボジア1例、モロッコ1例)
腸チフス1例(推定感染地域:国内) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症27例(うち有症者21例)
報告の多い都道府県:兵庫県(4例)
血清型・毒素型:O157 VT2(11例)、O157 VT1・VT2(9例)、O26 VT1(3例)、O91 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、その他(2例)
年齢:10歳未満(13例)、20代(6例)、30代(3例)、50代(2例)、60代(3例) |
4類感染症: |
つつが虫病21例(福島県4例、岐阜県3例、埼玉県2例、富山県2例、長野県2例、宮崎県2例、神奈川県1例、愛知県1例、高知県1例、佐賀県1例、長崎県1例、鹿児島県1例)
日本脳炎1例(岡山県.70代)
レジオネラ症6例(50代1例、60代2例、70代2例、80代1例)
A型肝炎2例(推定感染地域:フィリピン1例、アフリカ1例) |
5類感染症: |
アメーバ赤痢6例 |
推定感染地域:国内3例、不明3例
推定感染経路:経口2例、性的接触(異性間)2例、不明2例 |
ウイルス性肝炎1例〔B型_推定感染経路:性的接触(異性間)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.死亡) |
後天性免疫不全症候群16例 |
(無症候11例、AIDS 3例、その他2例)
推定感染経路:性的接触10例(異性間3例、同性間7例)、不明6例
推定感染地域:国内12例、不明4例 |
梅毒9例(早期顕症I期2例、早期顕症II期3例、無症候3例、先天梅毒1例)
急性脳炎1例〔病原体不明(4歳)〕
(補)他に、報告遅れとして、細菌性赤痢4例(タイ2例、ブラジル/アルゼンチン/ペルー1例、不明1例)、腸チフス1例(推定感染地域:インド)、パラチフス2例(推定感染地域:インド1例、タイ1例)、エキノコックス症1例(多包条虫.北海道)、コクシジオイデス症1例(推定感染地域:米国)、デング熱1例(出血熱.推定感染地域:インドネシア)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例〔遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液(死亡)、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:腹水〕、急性脳炎2例〔ともに病原体不明(ともに1歳)〕の報告などがあった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第45週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では山形県(2.3)、山梨県(2.0)、熊本県(1.9)、岡山県(1.8)、長野県(1.5)、岩手県(1.3)が多い。
小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第42週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(1.59)、佐賀県(1.22)、山形県(0.73)、石川県(0.69)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では山形県(4.2)、石川県(3.2)、北海道(3.2)、鳥取県(3.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第41週以降、増加が続いている。都道府県別では山口県(22.6)、佐賀県(22.0)、福井県(21.6)、福岡県(21.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は第39週以降、増加が続いている。都道府県別では島根県(3.9)、愛媛県(3.6)、岩手県(3.3)、山口県(3.2)、新潟県(3.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第43週以降、減少が続いている。都道府県別では愛媛県(1.24)、香川県(0.56)、新潟県(0.55)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では島根県(1.00)、青森県(0.86)、福島県(0.56)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では栃木県(0.09)、島根県(0.09)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では宮城県(0.02)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第28週以降、減少が続いている。都道府県別では山口県(0.41)、宮崎県(0.41)が多い。麻しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では埼玉県(0.02)、長崎県(0.02)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(5.2)、沖縄県(5.0)、長野県(4.2)が多い。RSウイス感染症は、ゼロ報告を含めて42都道府県から1,379例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(1.9)、愛媛県(1.7)、埼玉県(1.6)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザの第48週の定点当たり報告数は0.41(総患者報告数は1,909)であり、過去11シーズンでは、1995/96シーズン(1.27)、1996/97シーズン(0.44)、1998/99シーズン(0.41)に次いで高い値である。また、小児科定点のみならず、内科定点も含めたサーベイランスが始まった1999/2000シーズン以降では最多である(図)。都道府県別で定点当たり報告数が1を超えているのは、山形県(2.3)、山梨県(2.0)、熊本県(1.9)、岡山県(1.8)、長野県(1.5)、岩手県(1.3)、福島県(1.0)であり、また前週の熊本県に加えて大阪府でも、管内の定点当たり報告数が10.0を上回って注意報レベルを超えた保健所が出現している(感染症情報センターホームページ:「インフルエンザ流行レベルマップ」第48週参照)。報告数の増加は全国的な傾向であり、また第45週以降、増加は加速してきている。現在の傾向が続けば、2004/05シーズンとは異なり、今シーズンのインフルエンザの全国的な流行は12月中に始まる可能性が高いと考えられる。
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第36週以降、総計68件のインフルエンザウイルス分離報告がある。内訳はAH1型9件、AH3型59件、B型0件であり、これまでのところ、AH3型の報告数が多くを占めている。
今後は、インフルエンザの発生動向に一層注意し、予防対策の徹底を図ることが重要である。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1995〜2005年第48週) |
◆ 感染性胃腸炎
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感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第41週以降、増加が続いており、第48週は11.8に達した(図1)。例年、最大のピークは12月(第51週前後)にあるが、現在そのピークに向かって急増しているものと推定される。都道府県別では、山口県(22.6)、佐賀県(22.0)、福井県(21.6)、福岡県(21.4)、静岡県(18.0)、滋賀県(18.0)、鳥取県(17.2)、宮崎県(17.1)、京都府(17.1)、熊本県(17.0)が多い。定点当たり報告数が20.0を超えた上位4県の報告数の推移をみると、いずれも第48週になって初めて20.0を超えており、特に第45週以降の報告数は急増している(図2)。
例年、この時期の感染性胃腸炎の急増はノロウイルス感染症の増加と関係している(IASRVol 24. No 12. p321-322参照)。
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図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(1995〜2005年第48週) |
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図2. 主要都道府県における感染性胃腸炎の週別推移(2005年第1〜48週) |
ノロウイルス感染症は、牡蠣などの2枚貝の生食による感染や、非衛生的な調理によってウイルスが付着した食材による集団感染のような、経口感染による食中毒がよく知られているが、それ以外にも接触感染や飛沫感染などのヒト−ヒト感染があり、その感染力は極めて強い。毎年12月前後を中心に国内の各地域で、保育施設などの乳幼児の集団生活施設や、高齢者の施設などにおける集団感染事例が報告されている。ノロウイルスの流行時期には手洗いの励行のみならず、その他食事配膳に関する注意や、発病者の嘔吐物・下痢便の適切な処理と消毒も重要である。
今後とも、感染性胃腸炎の発生動向の推移には注意深い観察が必要である。
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