発生動向総覧
◆全数報告の感染症
*「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正(平成15年11月5日施行)により、対象疾患、分類が一部変更されました(2003年第43号「速報」参照)。
〈第6週コメント〉2月16日集計分
注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ1例(推定感染地域:国内)
細菌性赤痢7例(推定感染地域:マレーシア/シンガポール4例*、インド1例、タイ1例、フィリピン1例)
*第5週の2例とともに同一修学旅行に伴う発生
腸チフス3例(推定感染地域:インドネシア2例、インド/ネパール/東南アジア1例)
パラチフス2例(推定感染地域:バングラデシュ1例、ミャンマー1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症症4例(うち有症者2例)
血清型・毒素型:O157 VT2(3例)、O103 VT1(1例) |
4類感染症: |
オウム病1例(推定感染源:不明)
つつが虫病1例(熊本県)
デング熱1例(推定感染地域:インドネシア)
レジオネラ症6例(30代1例、40代1例、50代1例、60代2例、80代1例.うち2例死亡)
E型肝炎1例(推定感染地域:国内、推定感染経路:イノシシの解体時に血液との接触)
A型肝炎5例(推定感染地域:国内3例、タイ1例、フィリピン1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例 |
推定感染地域:国内5例、韓国1例、インドネシア1例、不明1例
推定感染経路:経口1例、性的接触(異性間)2例、不明5例 |
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(ともに孤発性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(40代、70代.ともに死亡) |
後天性免疫不全症候群10例 |
(すべて無症候)
推定感染経路:性的接触9例(同性間7例、不明2例)、不明1例
推定感染地域:国内9例、その他1例 |
ジアルジア症1例(推定感染地域:インド)
髄膜炎菌性髄膜炎1例(推定感染地域:国内)
梅毒3例(早期顕症II期2例、無症候1例)
破傷風1例(70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液)
急性脳炎4例〔A型インフルエンザウイルス2例(4歳、6歳)、インフルエンザウイルス型不明1例(3歳)、RSウイルス1例(1歳)〕
(補)他に、2005年分の報告遅れとして、急性脳炎1例〔病原体不明(1歳)〕、2006年分の報告遅れとして、細菌性赤痢2例(推定感染地域:インドネシア1例、南アフリカ1例)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(90代)、急性脳炎3例〔インフルエンザウイルス型不明2例(0歳、4歳)、病原体不明1例(1歳)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は減少した。都道府県別では愛知県(45.3)、長野県(37.0)、
石川県(36.5)、富山県(36.4)、埼玉県(33.1)、福井県(31.1)が多い。
小児科定点報告疾患:咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では佐賀県(0.83)、宮崎県(0.78)、福井県(0.77)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では山形県(5.2)、新潟県(4.8)、北海道(3.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(15.6)、愛媛
県(13.1)、大分県(12.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(3.8)、沖縄県(3.4)、福岡県(3.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では島根県(0.26)、山梨県(0.24)、岐阜県(0.23)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では島根県(0.87)、青森県(0.86)、鳥取県(0.79)、福島県(0.77)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では京都府(0.03)、香川県(0.03)、高知県(0.03)、福岡県(0.03)が多い。風しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では青森県(0.05)、岐阜県(0.04)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では栃木県(0.02)、鹿児島県(0.02)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(3.9)、島取県(2.7)、大分県(2.5)、島根県(2.5)が多い。RSウイルス感染症は、ゼロ報告を含めて39都道府県から310例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大阪府(1.00)、青森県(0.67)、群馬県(0.67)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
第6週のインフルエンザの定点当たり報告数は全国レベルで21.9(報告数102,650)であり、報告は2週連続して減少した(図1)。都道府県別では、定点当たり報告数が30.0を超えているのは愛知県(45.3)、長野県(37.0)、石川県(36.5)、富山県(36.4)、埼玉県(33.1)、福井県(31.1)の6県、40.0を超えている県は1県といずれも減少した(図2)。現在、インフルエンザの流行の中心は中部地域であると考えられるが、全国的には流行のピークは過ぎている可能性が高い。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1996〜2006年第週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(第6週現在) |
2005年第36週〜2006年第6週の今シーズンの累積定点当たり報告数は144.8(累積報告数678,195)であり、都道府県別では宮崎県(278.3)、福岡県(208.1)、佐賀県(203.3)、静岡県(194.1)、福井県(194.0)、愛知県(188.0)、愛媛県(187.8)、岡山県(187.5)、鹿児島県(179.0)、鳥取県(177.9)の順であった。今シーズンはこれまでのところ、インフルエンザの発生は九州地方と中部地方で多かったと考えられる。年齢別では5〜9歳が200,481(29.6%)と最も多く、次いで0〜4歳が176,428(26.0%)であり、14歳以下が全体の69.2%を占めている(図3)。
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図3.2005/06シーズンにおけるインフルエンザの報告症例の年齢別割合(2005年第36週〜2006年第6週) |
図4. 2005/06シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離結果(2005年第36週〜2006年第6週) |
図5. 各シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離割合(1982/83シーズン〜2005/06シーズン第6週) |
今シーズンは第36週以降これまでに、1,867件のインフルエンザウイルスの分離報告があり、そのうち、AH1(Aソ連)型は287件(15.4%)、AH3(A香港)型は1,561件(83.6%)、B型は19件(1.0%)であった(図4)。過去にAH3型が全分離報告数の80%以上を占めたシーズンは、1982/83シーズン以降では、1982/83、1993/94、1997/98、2003/04シーズンの計4シーズンであった(図5)。
今シーズンにおけるインフルエンザの報告は第5週、第6週と減少がみられ、全国的には流行のピークは過ぎたと考えられるが、まだ流行は継続しているため、発生動向の推移には注意が必要である。
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