 発生動向総覧
◆全数報告の感染症
＊「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正（平成15年11月5日施行）により、対象疾患、分類が一部変更されました（2003年第43号「速報」参照）。
〈第12週コメント〉3月30日集計分
注意：これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
| 1類感染症： |
報告なし |
| 2類感染症： |
細菌性赤痢16例（推定感染地域：国内1例、インド8例、インドネシア4例、タンザニア1例、不明2例）
腸チフス2例（推定感染地域：国内1例、不明1例）
パラチフス1例（推定感染地域：インド） |
| 3類感染症： |
腸管出血性大腸菌感染症症6例（うち有症者5例）
血清型・毒素型：O18 VT1（ 1例）、O91 VT1（1例）、O157 VT1・VT2（1例）、O165 VT1・VT2（1例）、その他（2例） |
| 4類感染症： |
つつが虫病1例（福島県）
デング熱1例（推定感染地域：インドネシア）
レジオネラ症1例（60代）
E型肝炎2例〔推定感染地域：国内1例（推定感染源：ブタレバー・ホルモン）、中国（香港）1例（推定感染源：不明）〕
A型肝炎5例（推定感染地域：すべて国内）
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| 5類感染症： |
| アメーバ赤痢6例 |
推定感染地域：国内5例、中国1例
推定感染経路：経口2例、性的接触（同性間）1例、不明3例 |
ウイルス性肝炎1例〔B型＿推定感染経路：性的接触（異性間）〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例（ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群）
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例（30代） |
| 後天性免疫不全症候群7例 |
（すべて無症候）
推定感染経路：性的接触4例（異性間1例、同性間3例）、静注薬物使用1例、不明2例
推定感染地域：国内5例、ブラジル1例、不明1例 |
梅毒1例（早期顕症II期）
破傷風1例（70代）
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例（遺伝子型：VanC＿菌検出検体：関節内留置ドレーン）
（補）他に、ウイルス性肝炎1例の報告があったが削除予定。また、報告遅れとして、E型肝炎1例（推定感染地域：国内）、エキノコックス症1例（多包条虫、北海道）、急性脳炎8例〔A型インフルエンザウイルス4例（3歳3例、5歳1例）、ロタウイルス1例（2歳）、病原体不明3例（20代1例、50代1例、70代1例）〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる５類感染症（週報対象のもの）
全国の指定された医療機関（定点）から報告され、疾患により小児科定点（約3,000 カ所）、インフルエンザ（小児科・内科）定点（約5,000 カ所）、眼科定点（約600 カ所）、基幹定点（約500 カ所）に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ：定点当たり報告数は、第4週のピークを過ぎてからは減少が続いている。都道府県別では高知県（17.3）、北海道（9.6）、新潟県（7.6）が多い。
小児科定点報告疾患：咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期（前週、当該週、後週）と比較してかなり多い。都道府県別では鹿児島県（1.4）、島根県（1.4）、岐阜県（1.2）が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続して減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では新潟県（5.0）、山形県（4.1）、鳥取県（4.1）が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続して減少した。都道府県別では宮崎県（16.8）、佐賀県（13.4）、山口県（13.2）が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続して増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県（4.4）、福岡県（3.9）、沖縄県（3.8）が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では愛知県（0.31）、宮城県（0.30）、岐阜県（0.23）が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では青森県（1.2）、福島県（1.2）、鳥取県（1.1）が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山梨県（0.12）、栃木県（0.09）、千葉県（0.08）が多い。風しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では青森県（0.05）、島根県（0.04）、滋賀県（0.03）が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では熊本県（0.44）、群馬県（0.23）、岩手県（0.18）が多い。麻しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では新潟県（0.02）、岡山県（0.02）が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続して減少した。都道府県別では沖縄県（4.5）、鹿児島県（4.4）、鳥取県（4.1）が多い。RSウイルス感染症は、ゼロ報告を含めて36都道府県から128例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。
基幹定点報告疾患：マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大阪府（1.00）、埼玉県（0.89）、岡山県（0.80）が多い。
 注目すべき感染症
◆ 流行性耳下腺炎
| 流行性耳下腺炎（mumps：ムンプス）は、2〜7歳の児を中心とした小児に好発する疾患である。2〜3週間の潜伏期（平均18日前後）を経て発症し、片側あるいは両側性の唾液腺（耳下腺が最も多い）の有痛性腫脹を特徴とするウイルス感染症である。通常は1〜2週間で軽快する予後良好の疾患であるが、最も多い無菌性髄膜炎をはじめ、髄膜脳炎、難聴、睾丸炎、卵巣炎、膵炎などの種々の合併症を起こす場合がある。 |
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| 図1. 流行性耳下腺炎の年別発生状況 |
感染経路はヒト−ヒト間の飛沫感染、接触感染であり、特にムンプスウイルスに免疫を持たない乳幼児が集団生活する保育所などで、しばしば集団発生が認められている。また成人での発症例では、合併症によって入院することが比較的多い。
2006年の流行性耳下腺炎の発生動向については第12週まででみると、過去3年間で最も報告の多かった2005年（図1）を上回った状態が継続している（図2）。第12週までの累積報告数は49,152（定点当たり累積報告数16.17）であり、年齢別では、4〜5歳が35.0%と最多であり、7歳以下が80%以上を占めているのは例年と同様である（図3）。都道府県別では、2006年第12週の定点当たり報告数は沖縄県（4.5）、鹿児島県（4.4）、鳥取県（4.1）が多いが、第12週までの定点当たり累積報告数でみると、沖縄県（59.7）、鳥取県（45.4）、長野県（42.3）、鹿児島県（36.0）、大分県（34.5）の順となっている（図4）。
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| 図2. 流行性耳下腺炎の年別・週別発生状況（1996〜2006年第12週） |
図3. 流行性耳下腺炎の報告症例の年齢群別割合（2006年第1〜12週） |
図4. 流行性耳下腺炎の都道府県別報告状況（2006年1〜12週） |
今後、夏季に向かって流行性耳下腺炎の発生は継続していくものと予想されるので、その発生動向には注意が必要である。
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