発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第14週コメント〉4月14日集計分
注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ1例(感染地域:インド)
細菌性赤痢9例(感染地域:国内1例、インド6例、ネパール1例、ラオス1例)
腸チフス1例(疑似症) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症6例(うち有症者4例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(3例)、O157 VT2(2例)、O26 VT1(1例) |
4類感染症: |
E型肝炎3例
(感染地域:すべて国内、感染源:イノシシレバー1例、不明2例)
A型肝炎10例(感染地域:国内8例、中国1例、フィリピン1例)
エキノコックス症1例(多包条虫.北海道)
デング熱2例(デング熱1例_感染地域:タイ、デング出血熱1例_感染地域:モルディブ) マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ケニア)
レジオネラ症5例〔ポンティアック型1例(70代)、肺炎型4例(20代1例、60代2例、90代1例)〕
|
5類感染症: |
アメーバ赤痢7例 |
(腸管アメーバ症5例、腸管外アメーバ症2例)
感染地域:国内6例、オーストラリア1例
感染経路:経口4例、性的接触2例(異性間/同性間1例、同性間1例)、不明1例 |
ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間)〕
急性脳炎1例〔病原体不明(10代)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病2例〔ともに孤発性プリオン病(古典型)〕) |
後天性免疫不全症候群15例 |
(無症候9例、AIDS 5例、その他1例)
感染経路:性的接触13例(異性間3例、同性間9例、不明1例)、不明2例
感染地域:国内13例、タイ1例、不明1例 |
梅毒10例(早期顕症I期3例、早期顕症II期4例、晩期顕症1例、無症候2例)
破傷風2例(ともに50代)
(補)他に、報告遅れとしてE型肝炎1例(感染地域:国内、感染原因:不明)の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は減少が続き、1.0以下となった。都道府県別では高知県(3.1)、新潟県(2.9)、青森県(2.7)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は229例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約70%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は微減したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(2.1)、岐阜県(1.4)、兵庫県(1.1)、鹿児島県(1.1)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第11週以降、減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや
多い。都道府県別では鳥取県(4.4)、石川県(3.6)、新潟県(3.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第11週以降、減少が続いている。都道府県別では宮崎県(18.3)、大分県(12.6)、高知県(12.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(4.5)、佐賀県(4.3)、宮崎県(4.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では愛知県(0.41)、岐阜県(0.40)、宮城県(0.28)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(1.3)、福島県(1.2)、島根県(1.1)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では千葉県(0.05)、福岡県(0.05)が多い。風しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では青森県(0.05)、高知県(0.03)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では熊本県
(0.40)、鳥取県(0.37)、山口県(0.27)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では栃木県(0.04)、岐阜県(0.04)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鹿児島県(4.8)、山口県(4.5)、長野県(3.6)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎のの定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では群馬県(1.1)、大阪府(1.1)、茨城県(1.0)が多い。
注目すべき感染症
◆ 咽頭結膜熱
咽頭結膜熱は主に、アデノウイルス3型(他に1、4、7、14型など)に感染することに よって生じる咽頭炎、結膜炎を主とする急性ウイルス性感染症である。主な症状は39℃前後の発熱、頭痛、咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛、羞明、流涙、眼脂などである。感染経路は主に飛沫感染、接触感染であるが、感染力は強く、タオルなどの患者が触れた物、検査器具、患者本人や医療従事者の手指などを介して容易に感染する。 |
|
図1. 咽頭結膜熱の年別・週別発生状況(1996年〜2006年第14週) |
通常、潜伏期が5〜7日、有症状期間が3〜5日であるが、症状消失後も1カ月程度は尿・便中にウイルスが排出されると言われている。本疾患は別名プール熱とも呼ばれているように、例年夏季に発生のピークがある。
|
|
|
図2. 咽頭結膜熱の発生状況の過去5年間との比較(2006年第14週現在) |
図3. 咽頭結膜熱の都道府県別報告状況(2006年1〜14週) |
図4. 咽頭結膜熱の報告症例の年齢群別割合(2000〜2005年) |
2006年は第3週以降、過去10年間と比較して最も報告の多い状態が続いている(図1、図2)。第14週の定点当たり報告数は全国レベルで0.39であり(報告数1,166)、都道府県別では福井県(2.09)、岐阜県(1.40)、兵庫県(1.08)、鹿児島県(1.05)、香川県(0.97)の順である。第1〜14週の定点当たり累積報告数は、全国レベルで3.94であり(累積報告数は13,099)、都道府県別では福井県(16.2)、島根県(13.2)、岐阜県(12.9)、佐賀県(12.5)、鹿児島県(10.1)が多い(図3)。
年齢別では、例年5歳以下が全体の70%以上を占めて発生の中心であり、9歳までが90%以上を占めているが(図4)、これは2006年も同様である(図5)。
咽頭結膜熱は今後、夏季に向けてさらに発生が増加すると考えられるので、その発生動向には注意が必要である。 |
|
図5. 咽頭結膜熱の報告症例の年齢群別割合(2006年第1〜14週) |
IDWRトップページへ戻る
|