発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第15週コメント〉 4月20日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ1例(疑似症)
細菌性赤痢10例(感染地域:東京都2例、インド4例、インドネシア1例、ネパール1例、パキスタン1例、西アフリカ1例)
腸チフス4例(感染地域:インド3例、インド/タイ/バングラデシュ1例)
パラチフス2例(感染地域:ともにインド) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症23例(うち有症者17例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(13例)、O157 VT2(6例)、O91 VT1・VT2(2例)、その他(2例) |
4類感染症: |
E型肝炎2例〔感染地域(感染源)北海道1例(詳細不明)、愛知県1例(イノシシ内臓等)〕
A型肝炎3例(感染地域:岡山県1例、中国1例、エジプト1例)
つつが虫病3例(感染地域:福島県1例、鹿児島県2例)
デング熱1例(デング熱_感染地域:ブラジル)
マラリア2例(熱帯熱1例_感染地域:リベリア.型不明1例_感染地域:パプアニューギニア) レジオネラ症3例(いずれも肺炎型)
年齢群:50代1例、60代1例、80代1例
感染地域:岩手県1例、東京都1例、愛知県1例 |
5類感染症: |
アメーバ赤痢 7例 |
(腸管4例、腸管外2例、腸管/腸管外1例)
感染地域:国内6例、タイ1例
感染経路:経口1例、性的接触2例(ともに異性間)、不明4例 |
ウイルス性肝炎5例 |
B型4例_感染経路:性的接触(異性間)2例、不明2例
C型1例_感染経路:不明 |
クリプトスポリジウム症1例(感染地域:インド)
クロイツフェルト・ヤコブ病3例〔いずれも孤発性プリオン病(古典型2例、その他1例)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(5歳、80代)
後天性免疫不全症候群17例 |
(無症候11例、AIDS 5例、その他1例)
感染経路:すべて性的接触(異性間4例、同性間12例、不明1例)
感染地域:国内15例、中国/台湾1例、国外(国不明)1例 |
ジアルジア症1例(感染地域:ネパール)
髄膜炎菌性髄膜炎1例(50代、感染地域:国内)
梅毒11例(早期顕症I期2例、早期顕症II期4例、無症候5例)
破傷風3例(30代、70代、80代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:胆汁) (補)他に報告遅れとして、急性脳炎1例〔病原体不明(50代)〕、クリプトスポリジウム症1例〔感染地域:南米.アメーバ赤痢(腸管)と合併〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代.死亡)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ定点報告疾患:定点当たり報告数は微減した。都道府県別では秋田県(4.4)、北海道(2.1)、
新潟県(2.1)、石川県(2.1)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は188例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の82%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は横ばいであったが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(2.1)、鹿児島県(1.3)、島根県(1.3)、岐阜県(1.1)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別 では鳥取県(4.8)、石川県(4.3)、新潟県(4.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(15.7)、大分県(12.4)、高知県(11.2)、福井県(11.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では佐賀県(5.0)、宮崎県(4.8)、沖縄県(4.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では愛知県(0.49)、岐阜県(0.48)、宮城県(0.31)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加 した。都道府県別では福島県(1.9)、鳥取県(1.5)、島根県(1.4)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では大阪府(0.04)、徳島県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では島根県(0.04)、大阪府(0.03)、奈良県(0.03)、沖縄県(0.03)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(0.75)、鳥取県(0.63)、秋田県(0.54)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では岡山県(0.04)、奈良県(0.03)、和歌山県(0.03)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では鹿児島県(4.1)、長野県(3.8)、鳥取県(3.6)、沖縄県(3.6)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では大阪府(1.6)、茨城県(1.6)、石川県(1.4)が多い。
〈3月コメント〉
◆性感染症について 2006年4月12日集計分 性感染症定点数:911
2006年3月の月別定点当たり報告数は、性器クラミジア感染症が3.02(男1.28、女1.74)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.93(男0.38、女0.55)、尖圭コンジローマが0.57(男0.31、女0.26)、淋菌感染症が1.15(男0.93、女0.22)で、4疾患のうち、男性では性器クラミジア感染症および淋菌感染症、女性では性器クラミジア感染症が多かった(図1)。前月に比べると、4疾患すべてにおいて増加がみられる(「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに平均+1標準偏差(SD)を超え、尖圭コンジローマでは女性が平均+1SDを超えた(図2)。一方、性器クラミジア感染症では男性が平均-1SDを下回り、淋菌感染症では男女ともに平均-1SDを下回っていた。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(3月)
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定点当たり報告数を男女別・年齢階級別に比較すると、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症では男女ともに20代をピークとして、それより上の年齢階級では減少し、50代以降では少なかった(図3)。性器ヘルペスウイルス感染症では、女性は他の3疾患と同様に20代を、男性は30代をピークとしたが、50代以降の年齢層からの報告も少なくなかった。また、淋菌感染症では男性の占める割合が高いが、他の3疾患では若年齢層で女性の占める割合が高かった。
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各性感染症の定点当たり報告数を男女別・月別に図4に示した。前月に比べ、男女ともに大きな変動はみられなかった。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者の報告および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細は、「感染症週報(IDWR)」2000年第46号(10月報)4ページの説明を参照されたい。
◆薬剤耐性菌について (4月12日集計分)
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基幹定点数(3月):464.
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[定点当たり報告数]
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.01(前月:4.05、前年同月:4.53) 定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。3月は前月より微減し、過去6年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.97(前月:0.99、前年同月:1.02)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。3月は前月より微減し、過去6年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.08(前月:0.10、前年同月:0.10)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわずかに多い傾向がある。3月は前月より減少し、過去6年間の同月との比較では最も少なかった。 |
[年齢階級別]
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の65%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の56%を占める一方、65歳以上が全体の23%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 70歳以上の高齢者に多く、全体の58%を占めている(図3:PDF参照)。
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[性別:女性を1 として算出した男/女比]
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=3.0:1
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[都道府県別]
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MRSA感染症
定点当たり報告数は高知県(8.9)、香川県(8.5)、愛知県(7.3)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は富山県(8.0)、千葉県(7.9)、高知県(3.4)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告数が36件にとどまるため、定点当たり報告数の評価は困難。
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◆結核サーベイランス月報 4月24日集計分
3月の新登録患者数は2,131人(男性1,431、女性700人)で、このうち活動性肺結核患者は1,668人(うち、喀痰塗抹陽性者は895人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(251人)、大阪府(大阪市を除く)(133人)、大阪市(128人)、埼玉県(さいたま市を除く)(88人)、千葉県(千葉市を除く)(84人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は232人であった。
詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。
注目すべき感染症
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