発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第19週コメント〉5月18日集計分
注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ3例(感染地域:インド2例、インド/カンボジア/ラオス/タイ/韓国1例)
細菌性赤痢5例(感染地域:国内1例、インド2例、ブータン1例、ニューカレドニア1例)
腸チフス2例(感染地域:ともにインド)
パラチフス2例(感染地域:ともにインド) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症症30例(うち有症者20例、HUSなし)
感染地域:国内29例、国外1例(インドネシア/アフガニスタン)
国内の多い感染地:秋田県(11例)、佐賀県(4例)
年齢群:10歳未満(9例)、10代(9例)、20代(4例)、30代(2例)、40代(1例)、50代(4例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(15例)、O157 VT2(5例)、O26 VT1(4例)、O157 VT1(2例)、O111 VT1・VT2(1例)、O121
VT1(1例)、O152 VT1・VT2/O157 VT1・VT2(1例)、その他/不明(1例) |
4類感染症: |
E型肝炎2例(感染地域:北海道1例、ネパール1例、感染源:ともに不明)
A型肝炎 5例(感染地域:新潟県2例、大阪府1例、広島県1例、フィリピン1例)
つつが虫病6例(感染地域:秋田県3例、福島県2例、山形県1例)
デング熱1例(デング熱_感染地域:タイ)
マラリア 3例 |
三日熱1例_感染地域:インド
四日熱1例_感染地域:中央アフリカ
熱帯熱1例_感染地域:ナイジェリア |
レジオネラ症4例 |
(すべて肺炎型)
年齢群:40代1例、50代1例、60代2例
感染地域:新潟県1例、長野県1例、山口県1例、中国1例
|
|
5類感染症: |
アメーバ赤痢10例 |
(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症4例)
感染地域:国内6例、インドネシア1例、ブラジル1例、国外(国不明)1例、国内/国外1例
感染経路:経口4例、性的接触3例(すべて異性間)、不明3例 |
ウイルス性肝炎1例(B型_感染経路:不明)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例〔孤発性プリオン病(古典型CJD)1例、遺伝性プリオン病(家族性CJD)1例〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症4例(50代1例、70代2例、80代1例.血清群:A群3例、C群1例.うち2例死亡) |
後天性免疫不全症候群15例 |
(無症候9例、AIDS 5例、その他1例)
感染経路:性的接触13例(異性間4例、同性間8例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
感染地域:国内11例、フィリピン1例、国外(国不明)3例 |
ジアルジア症2例(感染地域:インド1例、バングラデシュ1例)
梅毒8例(早期顕症I期2例、早期顕症II期2例、無症候4例)
破傷風1例(60代)
(補)他に報告遅れとして、急性脳炎1例(病原体不明、50代)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(50代1例、70代1例.血清群:A群1例、C群1例.うち1例死亡)、髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:国内)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は減少した。都道府県別では愛媛県(2.9)、沖縄県(2.2)、
岡山県(2.1)、秋田県(2.0)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は108例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の79%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(1.5)、岐阜県(1.4)、鹿児島県(1.4)、香川県(1.2)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では新潟県(4.2)、茨城県(3.9)、北海道(3.8)、宮崎県(3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福井県(11.5)、三重県(10.7)、大分県(9.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.7)、宮崎県(5.7)、佐賀県(5.2)、徳島県(4.6)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では岐阜県(1.00)、徳島県(1.00)、三重県(0.91)、香川県(0.91)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では島根県(1.09)、福島県(1.06)、青森県(0.95)が多い。百日咳の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では徳島県(0.13)、福島県(0.06)、島根県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では島根県(0.04)、宮崎県(0.03)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(1.32)、愛媛県(1.08)、山口県(0.98)、熊本県(0.98)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では茨城県(0.11)、千葉県(0.04)、島根県(0.04)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では鹿児島県(4.8)、山梨県(4.3)、鳥取県(4.3)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では埼玉県(2.0)、大阪府(1.9)、石川県(1.6)、岡山県(1.6)が多い。成人麻しんは、北海道から1例の報告があった。
注目すべき感染症
◆ 麻しん
麻しんの感染経路は空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染と様々であり、その感染 力は極めて強い。10日間前後の潜伏期を経て、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復 期へと推移するが、感染力の強いカタル期にはまだ特徴的な発疹が出現しないため、麻しんと 気付かれず、この時期に周囲に感染伝播することがしばしばみられる。また最近では、麻しん ワクチン接種者において修飾麻疹を発症するケースがしばしば認められるが、この場合は発熱、 発疹ともに軽微であることが多く、やはり麻しんとは気付かれないままに周囲への感染源となっ ている場合が少なくないと思われる。
|
|
図. 麻しんの年別・週別発生状況(1996年〜2006年第19週) |
集団生活施設内で麻しん初発例が発生し、有効な対策がとられない時には、その後それぞ れ10日間前後の期間を経て複数の2次感染例、3次感染例が出現することがある。そのような場 合には施設内感染にとどまらず、周辺地域への流行となる可能性を考慮しなければならない。 感染症発生動向調査における第19週の小児科定点からの麻しんの報告は、茨城県(8例)、 千葉県(5例)、愛知県(1例)、島根県(1例)の計15例であり(図)、また基幹定点からの成人麻 しんの報告は1例(北海道)であった。
本年4月から茨城県、千葉県の学校施設などでみられている麻しんの地域的な流行は、現在
まで継続している。流行が早期に収束することが望まれるが、周辺地域あるいは遠隔地への流
行の拡大に対しては十分に警戒すべきである。今後とも、麻しんの発生動向には注意深い観
察が必要である。
|