発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第21週コメント〉6月1日集計分
注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢4例(感染地域:カンボジア2例、インド1例、インドネシア1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症77例(うち有症者47例、HUSなし)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:秋田県(21例*)、千葉県(5例)、大阪府(5例)
*うち18例は、前週に続く動物園およびそれに関連した保育所での集団発生
年齢群:10歳未満(30例)、10代(11例)、20代(13例)、30代(7例)、40代(5例)、50代(2例)、60代(2例)、70歳以上(7例)
血清型・毒素型:O26 VT1(34例)、O157 VT1・VT2(20例)、O157 VT2(10例)、O157 VT1(2例)、O1 VT1・VT2(1例)、O26 VT1・VT2(1例)、O103 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O121 VT2(1例)、その他/不明(6例) |
4類感染症: |
E型肝炎3例(感染地域:北海道2例、タイ1例.感染源:ジンギスカン1例、不明2例)
A型肝炎3例(感染地域:京都府1例、中国1例、韓国1例)
オウム病1例(感染地域:奈良県、感染源:セキセイインコ/ハト)
つつが虫病11例(感染地域:山形県4例、福島県2例、青森県1例、岩手県1例、新潟県1例、長野県1例、鳥取県1例)
日本紅斑熱1例(感染地域:鹿児島県)
マラリア2例(ともに熱帯熱_感染地域:ともにナイジェリア)
レジオネラ症12例 |
(すべて肺炎型、うち死亡1例)
年齢群:50代2例、60代2例、70代6例、80代1例、90代1例
感染地域:東京都3例、山形県1例、福島県1例、神奈川県1例、愛知県1例、滋賀県1例、大阪府1例、宮崎県1例、タイ2例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢6例 |
(腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症2例)
感染地域:国内5例、国内/米国1例
感染経路:性的接触4例(異性間1例、同性間3例)、その他1例(聖水)、不明1例 |
ウイルス性肝炎3例(すべてB型_感染経路:性的接触(異性間)1例、不明2例)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例〔孤発性プリオン病(古典型CJD)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.血清群:A群) |
後天性免疫不全症候群14例 |
(無症候9例、AIDS 4例、その他1例)
感染経路:性的接触13例(異性間3例、同性間9例、不明1例)、不明1例
感染地域:国内12例、タイ1例、ベトナム/インドネシア1例 |
ジアルジア症1例(感染地域:国内)
梅毒8例(早期顕症I期4例、早期顕症II期1例、無症候3例)
破傷風2例(70代1例、80代1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:耳漏)
(補)他に、報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インド)、細菌性赤痢2例(感染地域:ネパール1例、インドネシア1例)、腸チフス1例(感染地域:インド)、E型肝炎1例(感染地域:インド、A型肝炎重複感染)、エキノコックス症1例(多包条虫.感染地域:北海道)、日本紅斑熱1例(感染地域:鹿児島県)、ボツリヌス症1例(乳児ボツリヌス症.感染地域:大阪府、感染源:不明)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代、血清群:A群)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は微増した。過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と
比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(7.2)、北海道(4.3)、岩手県(3.4)、愛媛県(3.2)、岡山県(2.7)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は、125例の報告があり、報告数は微増した。年齢別では、1歳以下の報告数は全体の約66%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では福井県(2.3)、鹿児島県(1.9)、島根県(1.9)、香川県(1.9)、滋賀県(1.8)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では新潟県(4.9)、富山県(4.2)、北海道(4.1)、宮崎県(4.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(11.6)、大分県(9.5)、山口県(8.2)、宮崎県(8.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い状態である。都道府県別では佐賀県(5.7)、新潟県(4.0)、福島県(4.0)、長野県(3.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では香川県(2.6)、岐阜県(2.6)、愛知県(2.0)、三重県(2.0)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では鳥取県(1.6)、静岡県(1.2)、島根県(1.1)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では高知県(0.10)、栃木県(0.04)、岐阜県(0.04)、京都府(0.04)、福岡県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では京都府(0.07)、鹿児島県(0.04)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第10週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い状態である。都道府県別では愛媛県(3.7)、佐賀県(2.7)、熊本県(2.7)、鳥取県(2.5)が多い。麻しんの定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では千葉県(0.15)、岐阜県(0.08)、広島県(0.07)、茨城県(0.03)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鹿児島県(4.7)、新潟県(3.7)、長野県(2.9)、鳥取県(2.7)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では埼玉県(2.4)、島根県(2.1)、群馬県(1.8)、大阪府(1.6)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザの定点当たり報告数は第4週をピークに減少が続いたが、第15週以降は減少傾向は止まった。第21週には定点当たり報告数は1.0となり、地域の局地的な流行は継続、かつ、増加傾向にある(図1)。都道府県別では、沖縄県(7.2)、北海道(4.3)、岩手県(3.4)、愛媛県(3.2)、岡山県(2.7)、長崎県(2.4)、秋田県(2.3)の順となっている。これらの道県は、全て前週よりも定点当たり報告数の増加がみられているが、特に沖縄県は第20週の3.7から大幅に増加している。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1996〜2006年第21週) |
2005年第36週以降2006年第21週までの今シーズンの定点からの累積患者報告数は、 936,107(定点当たり累積報告数193.1)であり、定点当たり累積報告数の多い都道府県は宮崎 県(297.1)、愛知県(284.7)、高知県(273.6)、長野県(273.2)、福井県(264.3)の順となっている が、これは冬季の流行状況を反映したものである(図2)。
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図2. 2005/06シーズンインフルエンザ都道府県別報告状況(2005年第36週〜2006年第21週) |
図3. 2005/06シーズンインフルエンザウイルス分離状況(2005年第36週〜2006年第21週) |
図4. 2005/06シーズンインフルエンザウイルス分離型別グラフ(2005年第36週〜2006年第21週) |
今シーズンは第36週以降これまでに4,858件のインフルエンザウイルスの分離報告があり、そのうちAH1(Aソ連)型は1,255(25.8%)、AH3(A香港)型は3,343(68.8%)、B型は260(5.4%)であり、流行のピーク時にはAH3型が流行の中心であったが、第9週以降はAH1型のウイルスの分離報告の割合が増加し、第16週以降はB型インフルエンザウイルスの報告割合が最も多くなっている(図3、図4)。従って、現在の局地的な流行の中心はB型であると考えられる。
また、第21週までの今シーズンの累積報告数(936,107)の年齢群別割合では、例年の報告と同様、5〜9歳が最多(31.3%)であり、次いで0〜4歳(26.3%)となっているが、B型が流行の中心と考えられる第16〜21週の累積報告数(23,777)では、10〜14歳が最多(33.6%)であり、次いで5〜9歳(28.9%)、0〜4歳(15.8%)の順となっている(図5)。 |
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図5.インフルエンザ累積患者報告症例の年齢群別割合 |
インフルエンザの局地的な流行はまだ継続しており、しかもその流行規模は増大傾向にある。今後ともその発生動向の推移には十分な注意が必要である。
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