発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第22週コメント〉6月9日集計分
注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ1例(疑似症)
細菌性赤痢7例〔感染地域:国内(都道府県不明)1例、カンボジア2例、エジプト2例、マレーシア1例、カンボジア/ベトナム1例〕
腸チフス3例(感染地域:インド1例、ネパール/バングラデシュ1例、タイ1例)
パラチフス1例(感染地域:愛知県) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症76例(うち有症者50例、HUSなし)
感染地域:国内75例、ボリビア1例
国内の多い感染地:大阪府(9例)、熊本県(9例)、栃木県(4例)、神奈川県(4例)、広島県(4例)
年齢群:10歳未満(30例)、10代(9例)、20代(16例)、30代(5例)、40代(4例)、50代(5例)、60代(4例)、70歳以上(3例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(34例)、O26 VT1(19例)、O157 VT2(9例)、O157 VT1(5例)、O111 VT1(3例)、O25 VT2(1例)、O128 VT1・VT2(1例)、その他/不明(4例) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:インド.感染源:不明)
A型肝炎7例(感染地域:北海道1例、東京都1例、石川県1例、愛知県1例、高知県1例、佐賀県1例、マダガスカル1例)
つつが虫病19例(感染地域:秋田県5例、新潟県5例、福島県3例、青森県2例、山形県2例、群馬県1例、長野県1例.うち1例死亡)
デング熱2例(ともにデング熱_感染地域:フィリピン1例、タイ1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:広島県1例、鹿児島県1例)
ブルセラ症1例(感染地域:イタリア)
マラリア1例(卵形_感染地域:ガーナ/ナイジェリア/インドネシア)
レジオネラ症8例 |
8例(すべて肺炎型)
年齢群:50代1例、60代2例、70代5例
感染地域:栃木県1例、富山県1例、石川県1例、兵庫県1例、福岡県1例、佐賀県1例、国内(不明)1例、中国1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢6例 |
(すべて腸管アメーバ症)
感染地域:国内4例、フィリピン1例、ブラジル1例
感染経路:経口1例、性的接触(異性間か同性間かは不明)1例、不明4例 |
ウイルス性肝炎4例〔すべてB型_感染経路:性的接触(異性間)2例、不明2例〕
急性脳炎1例(病原体不明.20代)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例〔ともに孤発性プリオン病(古典型CJD)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(50代1例、80代1例.血清群:A群1例、不明1例) |
後天性免疫不全症候群20例 |
(無症候15例、AIDS 5例)
感染経路:性的接触17例(異性間7例、同性間9例、異性間/同性間1例)、不明3例
感染地域:国内17例、国内/韓国1例、国内/タイ1例、国内/ロシア1例 |
ジアルジア症1例(感染地域:インド)
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候2例)
破傷風1例(60代)
(補)他に報告遅れとして、A型肝炎7例(感染地域:新潟県.全例とも、第19週および20週に報告された4例とともに、寿司店に関連した集団発生)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代、血清群:A群)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は横ばいであったが、過去5年間の同時期(前週、当該週、
後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(12.6)、北海道(4.0)、岩手県(3.7)、秋田県(3.0)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は100例の報告があり、報告数は減少した。年齢別
では、1歳以下の報告数が全体の73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第19週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では福井県(3.1)、香川県(2.7)、鹿児島県(2.1)、埼玉県(2.1)、愛媛県(2.0)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は微増し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では富山県(4.8)、新潟県(4.5)、北海道(3.8)、福井県(3.8)が多い。感染性胃腸炎の定点
当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(11.6)、山口県(8.3)、大分県(7.8)、宮崎県(7.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(5.2)、佐賀県(5.0)、長野県(4.7)、愛媛県(4.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降、増加が続いている。都道府県別では岐阜県(3.9)、香川県(3.1)、愛知県(2.8)、福井県(2.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第19週以降、
増加が続いている。都道府県別では島根県(1.7)、静岡県(1.4)、鳥取県(1.4)、山形県(1.4)が多い。百日咳の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では栃木県(0.11)、山形県(0.07)、徳島県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(0.05)、栃木県(0.04)、岡山県(0.04)、鹿児島県(0.04)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第10週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では
愛媛県(4.0)、埼玉県(3.4)、熊本県(3.3)、佐賀県(3.0)山口県(3.0)が多い。麻しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では千葉県(0.05)、広島県(0.04)、秋田県(0.03)が多い。
流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では鹿児島県(6.0)、長野県(3.8)、宮崎県(3.6)、山梨県(3.4)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は横ばいであるが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では岐阜県(2.6)、大阪府(2.6)、青森県(1.8)、群馬県(1.6)が多い。
注目すべき感染症
◆ A群預血性レンサ球菌咽頭炎
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes )を原因菌とする感染症であり、温帯地域では普遍的にみられる疾患である。感染後1〜4日の潜伏期間を経て突然の発熱、咽頭痛、全身倦怠感によって発症し、時に皮疹を伴うことがある。また、合併症としてリウマチ熱や急性糸球体腎炎などを起こすことがある。通常、発熱は3〜5日で下がり、主症状は1週間以内に消失するが、合併症予防のためにも有効な抗菌薬(ペニシリン系薬が第一選択であるが、その他、セフェム系薬やマクロライド系薬等も使用される)の内服を10日間程度継続する必要がある。
例年、冬季から夏季にかけて報告数の増加がみられている。年別では、2000年以降では2004年に増加がみられ、2005年はそれよりもやや減少した(図1)。2006年(第22週での累積報告数136,449)ではこれまでのところ、2004年(第22週での累積報告数112,487)の報告数を上回っている(図2、図3)。 |
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図1. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の年別発生状況 |
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図2. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の年別・週別発生状況(1996年〜2006年第22週) |
図3. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の年別・週別発生状況 |
図4. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告症例の年齢群別割合(2006年第1〜22週) |
年齢別では、4〜5歳31.9%、6〜7歳24.6%、2〜3歳14.6%の順であり(図4)、これまでと同様、7歳以下が全体の75%前後を占めている(図5)。
第22週の定点当たり報告数を都道府県別にみると、富山県(4.8)、新潟県(4.5)、北海道(3.8)、福井県(3.8)、鳥取県(3.7)、茨城県(3.6)、埼玉県(3.6)の順となっている。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は夏季に入って報告数が多くなるので、その発生動向には今後とも引き続き注意が必要である。 |
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図5. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告症例の年齢群別割合(1999年4月〜2005年) |
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