発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第24週コメント〉 6月22日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢4例(感染地域:インド2例、ラオス1例、ベトナム1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症72例(うち有症者42例、HUSなし)
感染地域:国内69例、中国1例、韓国1例、国内/アンドラ1例
国内の多い感染地:群馬県(16例)*、石川県(8例)、岡山県(7例)
*うち11例は保育園における集団発生
年齢群:10歳未満(30例)、10代(10例)、20代(12例)、30代(3例)、40代(4例)、50代(7例)、60代(2例)、70歳以上(4例)
血清型・毒素型:O26 VT1 (28例)、O157 VT1・VT2 (27例)、O157 VT2 (8例)、O26 VT1・VT2(1例)、O103 VT1(1例)、O103 VT1・VT2(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、O124 VT2(1例)、O126 VT1(1例)、O165 VT2(1例)、その他/不明(2例) |
4類感染症: |
A型肝炎4例(感染地域:神奈川県2例、京都府1例、兵庫県1例)
オウム病 4例 |
感染地域:香川県2例、埼玉県1例、岐阜県1例
感染源:セキセイインコ3例、インコ1例 |
つつが虫病21例(感染地域:秋田県7例、新潟県5例、福島県3例、青森県2例、山形県2例、宮城県1例、愛知県1例)
デング熱1例(感染地域:インドネシア)
日本紅斑熱2例(感染地域:島根県1例、愛媛県1例)
ライム病1例(感染地域:米国)
レジオネラ症6例(すべて肺炎型) |
年齢群:40代1例、60代1例、70代1例、80代3例
感染地域:山形県1例、東京都1例、兵庫県1例、岡山県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)1例 |
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 10例 |
(腸管8例、腸管外2例)
感染地域:国内8例、米国/メキシコ1例、東南アジア1例
感染経路:経口3例、性的接触(同性間)1例、不明6例 |
ウイルス性肝炎4例 |
B型3例_感染経路:性的接触(異性間)2例、不明1例
C型1例_感染経路:不明 |
クロイツフェルト・ヤコブ病1例〔孤発性プリオン病(古典型CJD)〕 |
後天性免疫不全症候群16例 |
(無症候13例、AIDS 2例、その他1例)
感染経路:性的接触12例(異性間1例、同性間11例)、不明4例
感染地域:国内12例、中国1例、ブラジル1例、国内/ベトナム1例、不明1例 |
ジアルジア症1例(感染地域:ペルー)
梅毒13例(早期顕症II期3例、晩期顕症2例、無症候8例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:便)
(補)他に報告遅れとして、細菌性赤痢3例(感染地域:インド1例、ラオス1例.疑似症1例)、腸管出血性大腸菌感染症24例(うち13例は兵庫県)、オウム病1例(感染地域:
岐阜県.感染源:インコ)、急性脳炎4例〔単純ヘルペスウイルス2例(0歳、1歳)、HHV6 1例(2歳)、病原体不明1例(5歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例(血清型:すべてA群.30代2例、60代1例)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は微減したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(25.0)、岩手県(2.7)、青森県(2.6)、秋田県(2.4)、北海道(2.0)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は91例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約68%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第19週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が継続している。都道府県別では島根県(2.5)、鹿児島県(2.4)、福井県(2.2)、岐阜県(2.2)、愛媛県(2.1)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では北海道(4.2)、福井県(4.1)、山形県(4.0)、富山県(3.7)、茨城県(3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降、減少が続いている。都道府県別では福井県(9.6)、大分県(9.1)、福岡県(6.3)、宮崎県(6.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は横ばいで、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では佐賀県(4.6)、長野県(4.4)、愛媛県(4.2)、新潟県(4.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降、増加が続いている。都道府県別では福井県(4.7)、岐阜県(4.0)、愛知県(3.4)、香川県(3.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(1.8)、島根県(1.5)、山形県(1.2)、埼玉県(1.2)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では和歌山県(0.16)、愛知県(0.08)、栃木県(0.07)が多い。風しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では佐賀県(0.04)、滋賀県(0.03)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第10週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では埼玉県(5.5)、新潟県(5.3)、東京都(4.9)、千葉県(4.8)、愛媛県(4.8)が多い。麻しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では千葉県(0.06)、奈良県(0.06)、宮城県(0.05)、茨城県(0.05)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鹿児島県(5.0)、新潟県(3.6)、長野県(3.0)、宮崎県(2.9)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では岐阜県(1.8)、岩手県(1.4)、愛媛県(1.3)が多い。成人麻しんは2例の報告があり、千葉県から1例、大阪府から1例であった。
〈5月コメント〉
◆性感染症について 2006年6月12日集計分 性感染症定点数:953
2006年5月の月別定点当たり報告数は、性器クラミジア感染症が2.99(男1.35、女1.64)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.94(男0.39、女0.55)、尖圭コンジローマが0.63(男0.35、女0.27)、淋菌感染症が1.15(男0.96、女0.19)で、男女ともに4疾患のうち、性器クラミジア感染症が多かった(図1)。前月に比べると、全体的に増加している(「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器ヘルペス感染症および尖圭コンジローマで女性が平均+1標準偏差(SD)を超えた。一方、性器クラミジア感染症および淋菌感染症では、男女ともに平均-1SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(5月)
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定点当たり報告数を男女別・年齢階級別(5歳毎)に比較すると、4疾患すべてで男女ともに10代から報告がみられ、そのピークは、性器クラミジア感染症の男女、性器ヘルペスウイルス感染症の女性、尖圭コンジローマの男女、淋菌感染症の男女では20代であり、性器ヘルペスウイルス感染症の男性では30代であった(図3)。性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症では男女ともに、ピーク以降、年齢が高くなるに従って減少傾向が認められ、50代以降の報告は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症では、男女ともに50代以降の年齢群の報告も少なくない。また、淋菌感染症では全ての年齢群において男性の方が多いが、性器クラミジア感染症の15〜29歳、性器ヘルペス感染症の15〜34歳、尖圭コンジローマの15〜24歳の若い年齢群では、女性の方が多い。
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)での各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4に示した。前月との比較では、性器ヘルペス感染症が男性で
減少したが、女性では増加し、他の3疾患では男女で増加した。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細は「感染症週報IDWR」2000年第46週号(10月報)4ページの説明を参照されたい。
◆薬剤耐性菌について (6月12日集計分)
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基幹定点数(5月):455.
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[定点当たり報告数]
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.36(前月:4.08、前年同月:3.76)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。5月は前月より増加し、過去7年間の同月との比較では最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.37(前月:1.03、前年同月:1.34)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。5月は前月より増加し、過去7年間の同月との比較では上位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.09(前月:0.09、前年同月:0.08)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわずかに多い傾向がある。5月は前月と比べ変化なく、過去7年間の同月との比較では中位に属した。 |
[年齢階級別]
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の64%を占める一方、65歳以上が全体の19%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の60%を占めている(図3:PDF参照)。
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[性別:女性を1 として算出した男/女比]
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.9:1
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[都道府県別]
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MRSA感染症
定点当たり報告数は高知県(8.3)、山口県(8.0)、栃木県(7.9)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は富山県(12.0)と千葉県(11.0)が突出して多く、この2県は前月・前々月も上位1、2位であった。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告数が43件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難。
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◆結核サーベイランス月報 6月20日集計分
5月の新登録患者数は2,239人(男性1,480、女性759人)で、このうち活動性肺結核患者は1,769人(うち喀痰塗抹陽性者は886人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(309人)、大阪市(131人)、大阪府(大阪市を除く)(127人)、千葉県(千葉市を除く)(88人)、埼玉県(さいたま市を除く)(80人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は156人であった。
詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。
注目すべき感染症
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