発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第28週コメント〉 7月20日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢5例〔感染地域:愛知県1例、中国1例、スリランカ1例、インド/ネパール1例.疑似症1例〕
腸チフス2例(感染地域:ともにインドネシア) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症122例(有症者98例、うちHUS 6例、死亡1例)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:群馬県(19例)、大阪府(9例)、兵庫県(9例)、福岡県(8例)、青森県(7例)
年齢群:10歳未満(58例)、10代(13例)、20代(23例)、30代(9例)、40代(4例)、50代(9例)、60代(4例)、70歳以上(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(61例)、O26 VT1(28例)、O157 VT2(22例)、O157 VT1( 4例)、O121 VT2( 3例)、O111 VT1(2例)、その他/不明(2例) |
4類感染症: |
E型肝炎2例〔感染地域:北海道1例(感染源:猪肉/鹿肉)、千葉県1例(感染源:不明)〕
A型肝炎2例〔感染地域:千葉県1例、国内(都道府県不明)1例〕
つつが虫病4例(感染地域:青森県2例、長野県2例)
デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、マレーシア1例)
マラリア2例(ともに三日熱_感染地域:ともにパプアニューギニア)
レジオネラ症7例 |
(すべて肺炎型)
年齢群:50代3例、60代2例、70代2例
感染地域:栃木県1例、岐阜県1例、京都府1例、島根県1例、広島県1例、山口県1例、福岡県1例 |
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 11例 |
(腸管10例、腸管外1例)
感染地域:国内8例、タイ2例、ペルー1例
感染経路:経口3例、性的接触2例(ともに異性間)、不明6例 |
ウイルス性肝炎4例 |
〔すべてB型_感染経路:性的接触3例(異性間2例*、同性間1例)、不明1例〕*うち1例はアメーバ赤痢と重感染 |
急性脳炎3例 |
〔A型インフルエンザウイルス2例(3歳、5歳.うち1例死亡)、病原体不明1例(2歳)〕 |
クロイツフェルト・ヤコブ病2例〔ともに孤発性プリオン病(古典型)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(A群.20代) |
後天性免疫不全症候群10例 |
(無症候5例、AIDS 3例、その他2例)
感染経路:性的接触9例(同性間7例、異性間/同性間1例、不明1例)、輸血・血液製剤1例(感染地域は国外)
感染地域:国内8例、セネガル1例、韓国1例 |
梅毒6例(早期顕症I期2例、早期顕症II期2例、無症候2例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
〔遺伝子型:VanB 1例(菌検出検体:便)、遺伝子型:不明1例(菌検出検体:胆汁)〕
(補)他に梅毒1例の報告があったが、削除予定。また報告遅れとして、コレラ1例(疑似症)、腸管出血性大腸菌感染症35例(うち16例は感染地域が山口県であり、飲食店関連の集団発生)、E型肝炎2例〔感染地域:ともに北海道(感染源:ホルモン1例、不明1例)〕、急性脳炎2例(ともに病原体不明.10代1例、40代1例)、クロイツフェルト・ヤコブ病1例〔遺伝性プリオン病(家族性)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第22週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(9.43)、青森県(2.43)、長崎県(0.90)、岩手県(0.68)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は51例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続して増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では奈良県(2.6)、佐賀県(2.5)、長野県(2.4)、宮崎県(2.4)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第25週以降、減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い状態である。都道府県別では秋田県(2.3)、北海道(2.3)、三重県(2.2)、福島県(2.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降、減少が続いている。都道府県別では福井県(7.5)、大分県(7.4)、熊本県(6.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第25週以降、減少が続いている。都道府県別では大分県(2.7)、長野県(2.4)、北海道(2.3)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降、増加が続いている。都道府県別では福井県(16.9)、岐阜県(7.5)、愛知県(6.3)、静岡県(5.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では鳥取県(1.5)、宮城県(1.5)、埼玉県(1.4)、山形県(1.4)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では秋田県(0.06)、香川県(0.06)、福井県(0.05)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では和歌山県(0.06)、徳島県(0.05)、茨城県(0.03)、富山県(0.03)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では和歌山県(11.1)、宮城県(10.9)、愛媛県(6.9)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では千葉県(0.05)、青森県(0.05)、鳥取県(0.05)、広島県(0.04)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(4.3)、鹿児島県(4.2)、徳島県(3.5)、長野県(3.4)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では群馬県(2.1)、愛媛県(1.7)、石川県(1.4)、青森県(1.3)が多い。
〈6月コメント〉
◆性感染症について 2006年7月12日集計分 性感染症定点数:950
2006年6月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が3.05(男1.37、女1.69)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.91(男0.37、女0.54)、尖圭コンジローマが0.63(男0.34、女0.29)、淋菌感染症が1.12(男0.93、女0.19)で、男女とも4疾患のうち、性器クラミジア感染症が最も多かった(図1)。前月に比べると、性器クラミジア感染症は男女ともに微増、性器ヘルペスウイルス感染症は男性で減少、女性で微減、尖圭コンジローマは男性で微減、女性で増加、淋菌感染症は男女ともに微減した(グラフ総覧参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、平均+1標準偏差(SD)を超えた疾患は男女ともにみられなかった(図2)。一方、性器クラミジア感染症は男性で平均-1SD、女性で平均-2SD、淋菌感染症は男性で平均-2SD、女性で平均-1SDを下回った。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(6月) |
定点当たり報告数を男女別・年齢階級別(5歳毎)に比較すると、4疾患すべてにおいて男女ともに15〜19歳群から報告がみられ、そのピークは、性器クラミジア感染症の男女、性器ヘルペスウイルス感染症の女性、尖圭コンジローマの女性、淋菌感染症の男女で20代であり、性器ヘルペスウイルス感染症および尖圭コンジローマの男性で30代であった(図3)。性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症では、男女ともにピーク以降、年齢が高くなるに従い減少傾向が認められ、50代以降の報告は僅かである。しかし性器ヘルペスウイルス感染症では、男女ともに50代以降の年齢群の報告も少なくない。また、淋菌感染症では全ての年齢群において男性の占める割合が高いが、性器クラミジア感染症の15〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症の15〜39歳、尖圭コンジローマの15〜24歳の若い年齢群で、女性の占める割合が高い。感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4に示した。前月との比較では、男性では尖圭コンジローマは減少したが、他の3疾患は増加し、女性では性器ヘルペスウイルス感染症と淋菌感染症は横ばいであったが、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマは増加した。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈される必要がある。詳細は「感染症週報IDWR」2000年第46週号(10月報)4ページの説明を参照されたい。
◆薬剤耐性菌について (7月12日集計分)
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基幹定点数(6月):460.
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[定点当たり報告数]
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.32(前月:4.36、前年同月:3.97)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。6月は前月よりわずかに減少し、過去7年間の同月との比較では最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.23(前月:1.37、前年同月:1.22)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。6月は前月より減少し、過去7年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.13(前月:0.09、前年同月:0.10)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわずかに多い傾向がある。6月は前月と比べ増加し、過去7年間の同月との比較では上位に属した。 |
[年齢階級別]
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の61%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の67%を占める一方、65歳以上が全体の17%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の70%を占めている(図3:PDF参照)。
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[性別:女性を1 として算出した男/女比]
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MRSA感染症…男:女=1.6:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.5:1
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[都道府県別]
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MRSA感染症
定点当たり報告数は山口県(8.9)、新潟県(7.7)、静岡県(6.5)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は富山県(10)と千葉県(10)が突出して多く、この2県は過去3カ月も上位1、2位であった。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が60件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難。
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◆結核サーベイランス月報 7月24日集計分
6月の新登録患者数は2,339人(男性1,489、女性850人)で、このうち活動性肺結核患者は1,849人(うち喀痰塗抹陽性者は884人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(288人)、大阪府(大阪市を除く)(155人)、大阪市(128人)、埼玉県(さいたま市を除く)(83人)、横浜市(78人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は232人であった。
詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。
注目すべき感染症
◆ 流行性耳下腺炎
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流行性耳下腺炎(mumps:ムンプス)は、2〜7歳の児を中心とした小児に好発する疾患である(図1)。2〜3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側性の唾液腺(耳下腺が最も多い)の有痛性腫脹を特徴とするウイルス感染症である。通常は1〜2週間で軽快する予後良好の疾患であり、不顕性感染も3分の1程度に認められるが、発症者の中には無菌性髄膜炎をはじめ、髄膜脳炎、難聴、睾丸炎、卵巣炎、膵炎などの種々の合併症を起こす場合がある。感染経路はヒト-ヒト間の飛沫感染、接触感染であり、特に免疫を有しない乳幼児が集団生活する保育所などではしばしば集団発生が認められている。また成人での発症例では、合併症によって入院する例が比較的多い。
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図1.流行性耳下腺炎の報告症例の年別・年齢群別割合(1999〜2005年) |
感染症発生動向調査によると、2003年から2004年、2004年から2005年と2年連続して累積報告数の増加がみられている(図2)。また、2006年では第28週までの累積報告数が124,261例で、2005年の同時期(93,876例)を大きく上回っており、2002年以降では最多である(図3)。
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図2. 流行性耳下腺炎の年別発生状況 |
図3. 流行性耳下腺炎の年別・週別発生状況(1996〜2006年第28週) |
図4. 流行性耳下腺炎の都道府県別報告数(2006年第1〜28週) |
2006年第28週の定点当たり報告数を都道府県別にみると、新潟県(4.3)、鹿児島県(4.2)、徳島県(3.5)、長野県(3.4)、北海道(3.0)が多いが、第28週までの定点当たり累積報告数では鹿児島県(112.9)、長野県(97.4)、沖縄県(94.1)、鳥取県(93.0)、山口県(72.8)の順となっている(図4)。
流行性耳下腺炎の発生動向については地域的流行を含め、今後とも十分な注意が必要である。
◆ 腸管出血性大腸菌感染症
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2006年の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は第15週(27例)から増加が認められ、第20週(59例)に50例を超え、21週以降は80例前後で推移していたが、第26週(134例)に100例を超えた。その後第27週は127例、第28週は122例であった。本年第28週までの累積報告数は1,144例であるが、今までのところ例年(2000年1,208例、2001年1,641例、2002年1,260例、2003年831例、2004年1,187例、2005年1,250例)と比べ、多いとは言えない(図1)。 |
図1. 腸管出血性大腸菌感染症(無症状病原体保有者含む)の年別・週別発生状況 |
第28週に診断された122例についてみると、報告の多かった都道府県は群馬県(19例)、兵庫県(11例)、大阪府(10例)、青森県(7例)、福岡県(7例)であった(図2a)。群馬県の19例のうち11例は、第27週に引き続き保育園関連の集団発生であり、青森県の7例は第27週の3例と合わせて、牧場における動物とのふれあい体験に関連した集団発生である。また、2006年4月から、国内を感染地域とする場合に、県名などの詳細情報を届け出るようになったが、第28週に感染地域として多かった都道府県は、報告都道府県とほぼ同様で、群馬県(19例)、大阪府(9例)、兵庫県(9例)、福岡県(8例)、青森県(7例)であった(図2b)。性別では男性53例、女性69例であり、年齢階級別(10歳毎)では0〜9歳(58例)が最も多く、47.5%を占めた。また、有症状者は98例で、無症状病原体保有者が24例であった。無症状病原体保有者は、食品産業従事者の定期検便によって発見される場合もあるが、多くは探知された患者と食事を共にした者や、接触者の調査などによって発見される場合が多い。分離された菌の血清型・毒素型別では、O157 VT1・VT2(61例)、O26 VT1(28例)、O157 VT2(22例)の順に多かった。
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図2. 腸管出血性大腸菌感染症の都道府県別報告・感染状況(2006年第28週) |
図3. 腸管出血性大腸菌感染症の都道府県別報告状況(2006年第1〜28週) |
図4. 腸管出血性大腸菌感染症の性別・年齢群別・症状の有無別報告数(2006年第1〜28週) |
第1〜28週の累積報告数1,144例についてみると、報告の多かった都道府県は、大阪府(110例)、群馬県(80例)、東京都(72例)、愛知県(66例)、兵庫県(63例)である(図3)。性別では男性556例、女性588例であり、年齢階級別(10歳毎)では0〜9歳(466例)が最も多く、41%を占めている。性別・年齢群別にみると、0〜9歳及び10〜19歳は男性が女性より多く、それ以上の年齢群では女性が男性より多い。また、有症状者は771例(67%)で、無症状病原体保有者が373例である。性別・年齢群別に症状の有無をみると、30〜50代では男女ともに無症状病原体保有者が多く、それ以外では有症状者が多い(図4)。分離された菌の血清型・毒素型は、O157 VT1・VT2(432例)、O157 VT2(256例)、O26 VT1(249例)の順に多かった。
溶血性尿毒症症候群(HUS)は報告遅れ分や追加報告を含み、第28週に8例報告があり、累積では33例となった。2006年4月からHUS発症例の届出は、病原体の分離ができない症例であ っても、便から直接のベロ毒素の検出や、血清抗体の検出によって届出対象となった。33例のうち9例は、血清抗体の検出により届け出られたものである。死亡については、2006年では第28週までに2例の報告があった。しかし、HUSなどの合併症や死亡については、届け出時点以降での発生が十分反映されていない可能性があり、発生があった場合の追加・修正報告をお願いしている。
2006年も既に保育施設での集団発生が散見されている他、飲食店や展示動物に関連した集団発生もみられている。今後、本症の発生はさらに増加するものと予想され、その発生動向に
は注意が必要である。食品の取り扱いには十分注意して食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが大切である。そのため保育
施設においては、特にオムツ交換時の手洗い、園児に対する食前の手洗い指導を徹底し、これからの季節は簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要がある。
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