発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第41週コメント〉 10月19日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢6例〔感染地域:国内(都道府県不明)1例、中国2例、インド1例*、ラオス1例、
パキスタン1例〕*コレラ(第40週診断)と重複感染 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症59例(うち有症者34例、HUSなし、死亡なし)
感染地域:国内57例、中国2例(うち香港1例)
国内の多い感染地:神奈川県(8例)、北海道(6例)、山形県(5例)、福岡県(5例)
年齢群:10歳未満(14例)、10代(7例)、20代(13例)、30代(12例)、40代(3例)、50代(6例)、60代(3例)、70歳以上(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2( 26例)、O157 VT1・VT2( 14例)、O111 VT1(5例)、O26 VT1(4例)、O26 VT1・VT2(2例)、O153 VT1(2例)、O157 VT1(2例)、その他/不明(4例) |
4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:大阪府)
オウム病1例(感染地域:東京都、感染源:不明)
デング熱1例(感染地域:バングラデシュ)
日本脳炎2例(感染地域:福岡県1例、熊本県1例.40代1例、60代1例)
マラリア2例 |
四日熱1例_感染地域:ウガンダ
熱帯熱1例_感染地域:パプアニューギニア |
レジオネラ症6例 |
(すべて肺炎型)
年齢群:50代2例、60代2例、70代2例
感染地域:愛知県2例、岩手県1例(温泉)、宮城県1例、富山県1例、台湾1例 |
レプトスピラ症2例(感染地域:東京都1例、鹿児島県1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 4例 |
(腸管アメーバ症3例、腸管外アメーバ症1例)
感染地域:国内3例、ペルー1例
感染経路:経口1例、経口/性的接触(異性間)1例、性的接触(異性間)1例、不明1例 |
ウイルス性肝炎6例_すべてB型〔感染経路:性的接触(異性間)3例、不明3例〕
急性脳炎1例(マイコプラズマ.10代)
クリプトスポリジウム症1例(感染地域:インド)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型1例、遺伝性プリオン病家族性1例) |
後天性免疫不全症候群15例 |
(無症候8例、AIDS 5例、その他2例)
感染地域:国内11例、米国1例、台湾1例、国内/ナイジェリア1例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触13例(異性間2例、同性間9例、異性間/同性間2例)、静脈薬物使用/性的接触(異性間)1例、不明1例 |
ジアルジア症2例〔感染地域:国内1例、国外(国不明)1例〕
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、晩期顕症1例、無症候2例)
破傷風4例(50代1例、60代2例、70代1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:血液、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液)
(補)他に報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インド)、細菌性赤痢3例(中国2例、インド1例)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は微減した。都道府県別では大分県(0.17)、岐阜県(0.06)、沖縄県(0.03)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は136例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第37週以降、減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では三重県(1.07)、大分県(0.83)、秋田県(0.74)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では、福島県(2.1)、鳥取県(2.0)、山形県(1.9)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では鳥取県(10.9)、熊本県(7.9)、大分県(7.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では群馬県(1.4)、宮崎県(1.4)、徳島県(1.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では石川県(2.8)、長野県(2.6)、新潟県(2.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では栃木県(0.52)、愛知県(0.45)、宮城県(0.44)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では福井県(0.09)、奈良県(0.09)、千葉県(0.05)が多い。風しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では秋田県(0.03)、宮城県(0.02)、栃木県(0.02)、兵庫県(0.02)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第28週以降、減少が続いている。都道府県別では宮城県(0.64)、山梨県(0.33)、秋田県(0.32)、福島県(0.31)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では滋賀県(0.06)、秋田県(0.03)、千葉県(0.02)、愛知県(0.02)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では新潟県(4.0)、長野県(2.1)、鹿児島県(2.0)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では大阪府(2.3)、沖縄県(1.7)、青森県(1.3)が多い。
〈9月コメント〉
◆性感染症について 2006年10月11日集計分 性感染症定点数:951
●月別推移
2006年9月の月別定点当たり報告数は、性器クラミジア感染症が2.88(男1.25、女1.64)、性器
ヘルペスウイルス感染症が0.93(男0.36、女0.57)、尖圭コンジローマが0.59(男0.33、女0.26)、淋菌感染症が1.19(男0.95、女0.24)で、男女とも4疾患のうち、性器クラミジア感染症が最も多かった(図1)。 前月に比べると、性器クラミジア感染症は男性で横ばい、女性で減少、性器ヘルペスウイルス感染症は男性で微減、女性で微増、尖圭コンジローマは男性で微減、女性で増加、淋菌感染症は男女ともに横ばいであった(「グラフ総覧」参照)。 男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症では男女ともに平均-2標準偏差(SD)を下回り、淋菌感染症では男性が平均-2SDを、女性が平均-1SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(9月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群でみた定点当たり報告数のピークは、女性では4疾患すべてにおいて20〜24歳群であったが、男性では性器クラミジア感染症が20〜24歳群、性器ヘルペスウイルス感染症が30〜34歳群、尖圭コンジローマと淋菌感染症が25〜29歳群であり、男性に比べて女性の方がやや若い傾向が認められた(図3)。性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症では男女ともに、ピーク以降、年齢が高くなるに従い減少傾向が認められ、50代以降の報告は僅かである。しかし性器ヘルペスウイルス感染症では、男女ともに50代以降の年齢群の報告も少なくない。
年齢群でみた男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群において男性が女性よりも多いが、性器クラミジア感染症の15〜34歳、性器ヘルペスウイルス感染症の15〜39歳と65歳以上、尖圭コンジローマの15〜24歳では女性が男性より多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系及び皮膚科系などの診療科から構成されるが、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4に示した。2001年以降、男女ともに性器クラミジア感染症と淋菌感染症は減少傾向がみられ、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマはほぼ横ばいの傾向である。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症は増加し、淋菌感染症は同値で、性器ヘルペスウイルス感染症と尖形コンジローマは減少した。女性では尖圭コンジローマと淋菌感染症は同値であったが、性器クラミジア感染症と性器ヘルペスウイルス感染症は減少した。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈する必要があります。詳細は、IDWR週報2000年第46週号(10月報)4ページの説明を参照してください。
◆薬剤耐性菌について (10月11日集計分)
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基幹定点数(9月):454.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.01(前月:4.35、前年同月:3.64)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。9月は前月より減少し、過去7年間の同月との比較では最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.49(前月:0.66、前年同月:0.61)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。9月は前月より大幅に減少し、過去7年間の同月との比較では低位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.16(前月:0.16、前年同月:0.16)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわずかに多い傾向がある。9月は前月と変わりなく、過去7年間の同月との比較では上位に属した。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の59%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 …小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の51%を占める一方、65歳以上が全体の29%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の66%を占めている(図3:PDF参照)。
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.6:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.0:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は栃木県(9.1)、福島県(7.7)、山口県(6.8)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(3.7)、富山県(3.2)が突出して多く、富山・千葉県は過去半年にわたり上位1、2位であった。ついで沖縄県(1.4)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が71件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難。
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◆結核サーベイランス月報 10月24日集計分
9月の新登録患者数は2,059人(男性1,320人、女性739人)で、このうち活動性肺結核患者は
1,655人(うち喀痰塗抹陽性者は811人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(239人)、大阪府(大阪市を除く)(130人)、大阪市(121人)、埼玉県(さいたま市を除く)(95人)、千葉県(千葉市を除く)(86人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は163人であった。
*マル初者…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。
また、2005年の結核発生動向調査年報が出されました。詳しくは、結核研究所ホームページ (http://www.jata.or.jp/rit/rj/data_tp.html)をご覧ください。
注目すべき感染症
◆ 今週は該当記事はありません。
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