発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第44週コメント〉11月8日集計分
注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
コレラ1例(疑似症)
細菌性赤痢8例(感染地域:宮城県2例、中国1例、インド1例、フィリピン1例、ベトナム1例、シンガポール1例、エジプト1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症66例(うち有症者29例、HUS 3例)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:鹿児島県18例*、兵庫県7例、愛知県6例
*うち11例は、第43週につづく幼稚園に関連した集団発生
年齢群:10歳未満(33例)、10代(6例)、20代(3例)、30代(10例)、40代(5例)、50代(3例)、60代(3例)、70歳以上(3例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(29例)、O26 VT1(19例)、O157 VT2(9例)、O111 VT1・VT2(1例)、O157 VT1(1例)、O165 VT1・VT2(1例)、その他/不明(6例) |
4類感染症: |
A型肝炎4例〔感染地域:愛知県1例、国内(都道府県不明)1例、韓国1例、タイ/インド1例〕
つつが虫病7例(感染地域:福島県3例、青森県1例、神奈川県1例、岐阜県1例、宮崎県1例)
デング熱2例(感染地域:インド1例、ドミニカ1例)
日本紅斑熱4例(感染地域:鹿児島県2例、和歌山県1例、徳島県1例)
ライム病1例(感染地域:ドイツ)
レジオネラ症1例(肺炎型.60代、感染地域:静岡県)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 |
5例(すべて腸管アメーバ症)
感染地域:国内3例、中国1例、インドネシア1例
感染経路:経口2例、性的接触(同性間)1例、不明2例 |
ウイルス性肝炎2例〔ともにB型_感染経路:性的接触(異性間)1例、不明1例〕
急性脳炎3例(すべて病原体不明.10代1例、40代1例、80代1例)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(ともに孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(血清群:A群.60代)
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後天性免疫不全症候群 |
9例(無症候8例、AIDS 1例)
感染地域:国内8例、ブラジル1例
感染経路:性的接触7例(異性間2例、同性間3例、異性間/同性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明2例 |
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、晩期顕症1例)
(補)他に報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:中国)、デング熱(デング出血熱_感染地域:ミャンマー)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(血清群:A群1例、C群1例.30代1例、80代1例.うち1例死亡)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は微増した。都道府県別では沖縄県(0.14)、広島県(0.04)、千葉県(0.03)、岐阜県(0.03)、岡山県(0.03)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は217例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続して増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では秋田県(1.00)、三重県(1.00)、鳥取県(0.84)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続して増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では北海道(3.1)、鳥取県(2.7)、新潟県(2.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第39週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では熊本県(15.7)、島根県(14.2)、宮崎県(13.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では福井県(2.1)、秋田県(1.8)、北海道(1.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続して減少した。都道府県別では山形県(2.6)、長野県(2.1)、富山県(1.7)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第40週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では埼玉県(0.66)、栃木県(0.65)、富山県(0.62)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では栃木県(0.11)、沖縄県(0.09)、千葉県(0.07)が多い。風しんの定点当たり報告数は微増した。都道府県別では滋賀県1例(0.03)、千葉県2例(0.02)、熊本県1例(0.02)、東京都2例(0.01)、大阪府2例(0.01)の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では宮城県(0.62)、愛媛県(0.19)、福島県(0.17)が多い。麻しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では和歌山県1例(0.03)、福岡県1例(0.01)の報告であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では新潟県(3.1)、宮崎県(2.0)、青森県(2.0)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(2.7)、大阪府(2.5)、岡山県
(2.0)が多い。
注目すべき感染症
◆ A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、A群溶血性レンサ球菌(化膿性レンサ球菌)を原因菌とする感染症であり、温帯地域ではよくみられる疾患である。感染後1〜4日の潜伏期間を経て、突然の発熱、咽頭痛、全身倦怠感によって発症し、時に皮疹を伴うことがある。急性咽頭炎の他、菌が産生する毒素に免疫のない人では猩紅熱となって全身症状を呈する場合がある。また、合併症としてリウマチ熱や急性糸球体腎炎などを起こすことがある。通常の経過では発熱は3〜5日で下がり、主症状は1週間以内に消失するが、合併症予防のためにも、有効な抗菌薬の内服を10日間程度継続する必要がある。第一選択はペニシリン系薬であるが、その他、セフェム系薬やマクロライド系薬等も使用される。
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図1. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の年別・週別発生状況(1996年〜2006年第44週) |
図2. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の年別発生状況(2000〜2005年) |
図3. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の都道府県別報告状況(2006年第34週〜44週) |
感染症発生動向調査によれば、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告は例年、夏季の終わり(第33週前後)に最低値となり、その後、冬季から春季にかけての流行期に向かって増加が始まる(図1)。2000年以降につき、年間の定点当たり累積報告数を比べてみると、2003年、2004年と増加がみられている(図2)。
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2005年は前年よりも減少したものの、2006年は第44週現在の定点当たり累積報告数が72.22(累積報告数217,485、いずれも暫定値)で、2000年以降では最高値となっている。この増加には、臨床現場で簡易迅速診断検査が普及したことの影響もあると推察されるが、今後、報告は更に増加してくることが予想され、注意が必要である。
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図4. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告症例の年別・年齢群別割合
(1999年4月〜2006年第44週) |
図5. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告症例の年齢群別割合(2006年第34〜44週) |
都道府県別でみると、第44週の定点当たり報告数は北海道(3.1)、鳥取県(2.7)、新潟県(2.7)、山形県(2.4)、熊本県(2.1)、福島県(2.1)の順である。また、第34〜44週の期間における定点当たり累積報告数(全国レベルでは10.5、累積報告数は31,037)をみると、北海道(21.0)、鳥取県(20.3)、福島県(18.5)、山形県(18.2)、山口県(15.1)の順であり、全国平均を上回っている地域は東日本に多い傾向がある(図3)。年齢別では例年、4〜7歳が発生の中心であり、7歳以下が報告の70%以上を占めているが(図4)、これは2006年第34〜44週についても同様である(図5)。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の発生動向には、今後とも注意が必要である。
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