発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第46週コメント〉 11月24日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢3例(感染地域:中国2例、モロッコ1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症49例(うち有症者31例、HUS 1例)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:岩手県(5例)、神奈川県(5例)、鹿児島県(5例)、岡山県(4例)
年齢群:10歳未満(18例)、10代(7例)、20代(6例)、30代(4例)、40代(5例)、50代(1例)、60代(5例)、70代(1例)、80代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(23例)、O157 VT2(9例)、O26 VT1(8例)、O26 VT1・VT2(2例)、O91 VT1(2例)、その他/不明(5例) |
4類感染症: |
E型肝炎2例(感染地域:北海道1例、中国1例.感染源:豚生肉・生レバー1例、不明1例)
A型肝炎3例(感染地域:新潟県1例、兵庫県1例、フィリピン1例)
オウム病1例(感染地域:千葉県.感染源:オウム、その他鳥類)
Q熱1例(感染源:不明)
つつが虫病24例(感染地域:福島県7例、神奈川県3例、青森県2例、富山県2例、大分県2例、新潟県1例、岡山県1例、広島県1例、高知県1例、佐賀県1例、長崎県1例、宮崎県1例、鹿児島県1例) デング熱2例(感染地域:ともにインド)
日本紅斑熱2例(感染地域:三重県1例、熊本県1例)
マラリア1例(病型:卵型.感染地域:シェラレオネ)
レジオネラ症3例 |
(病型:すべて肺炎型)
年齢群:40代1例、50代1例、80代1例
感染地域:山形県1例、栃木県1例(温泉)、不明1例 |
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 11例 |
(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症4例)
感染地域:国内10例、米国1例
感染経路:性的接触3例、経口2例、不明6例 |
ウイルス性肝炎1例〔B型.感染経路:性的接触(異性間・同性間不明)〕
急性脳炎2例〔HHV6 1例(0歳)、病原体不明1例(10代)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(血清群:A群.50代) |
後天性免疫不全症候群9例 |
(無症候6例、AIDS 2例、その他1例)
感染地域:国内4例、国外5例(インドネシア1例、カナダ1例、不明3例)
感染経路:性的接触例6例(異性間2例、同性間4例)、不明3例 |
梅毒5例(早期顕症II期2例、無症候3例)
破傷風1例(70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿)
(補)他に後天性免疫不全症候群1例、梅毒1例の報告があったが削除予定。また報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:タイ)、狂犬病1例(感染地域:フィリピン)、髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:国内)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.52)、福井県(0.13)、広島県(0.13)、宮崎県(0.13)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は、472例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数は全体の約75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が継続している。都道府県別では秋田県(1.31)、富山県(1.24)、北海道(0.98)、長野県(0.93)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が継続している。都道府県別では、鳥取県(3.8)、北海道(3.7)、新潟県(3.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第39週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が継続している。都道府県別では富山県(37.5)、宮崎県(29.9)、大分県(27.8)、群馬県(27.6)、三重県(26.9)、が多い。水痘の定点当たり報告数は第43週より増加が続いている。都道府県別では北海道(2.2)、宮城県(2.0)、島根県(2.0)、福井県(1.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第42週以降減少が続いている。都道府県別では山形県(2.9)、大分県(1.6)、富山県(1.5)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い状態である。都道府県別では宮城県(0.90)、埼玉県(0.68)、富山県(0.66)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では栃木県(0.09)、千葉県(0.06)、広島県(0.04)、佐賀県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。大阪府からは2例、秋田県、福島県、愛知県からは各1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続して減少した。都道府県別では宮城県(0.49)、福島県(0.17)、熊本県(0.15)が多い。麻しんの定点当たり報告数は減少した。
都道府県別では埼玉県、東京都、岐阜県、愛知県、沖縄県から各1例の報告があった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(3.9)、長野県(2.8)、島根県(2.2)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では埼玉県(2.9)、群馬県(2.4)、大阪府
(2.3)、神奈川県(2.0)が多い。
〈10月コメント〉
◆性感染症について 2006年11月13日集計分 性感染症定点数:951
●月別推移
2006年10月の月別定点当たり報告数は、性器クラミジア感染症が2.78(男1.21、女1.57)、性
器ヘルペスウイルス感染症が0.97(男0.38、女0.59)、尖圭コンジローマが0.57(男0.32、女0.25)、淋菌感染症が1.00(男0.83、女0.16)で、男女とも4疾患のうち、性器クラミジア感染症が最も多かった(図1)。 前月に比べると、性器クラミジア感染症は男女ともに微減、性器ヘルペスウイルス感染症は男性で増加、女性で微増、尖圭コンジローマは男女ともに微減、淋菌感染症は男女ともに減少を示した(「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症では男性が平均-2標準偏差(SD)を、女性が平均-1SDを下回り、性器ヘルペスウイルス感染症では女性が平均+1SDを上回り、淋菌感染症では男女ともに平均-2SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(10月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群でみた定点当たり報告数のピークは、女性では4疾患すべてにおいて20〜24歳群であったが、男性では性器クラミジア感染症が20〜24歳群、性器ヘルペスウイルス感染症が30〜34歳群、尖圭コンジローマと淋菌感染症が25〜29歳群であり、男性に比べて女性の方がやや若い傾向が認められた(図3)。性器クラミジア感染症では男女ともに、ピーク以降、年齢が高くなるに従って減少傾向が顕著であり、50代以降の報告は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症では男女ともに、尖圭コンジローマおよび淋菌感染症では男性において、50代以降の報告も少なくない。
15歳以上の年齢群でみた男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群において男性が女性よりも多いが、性器クラミジア感染症の15〜34歳、性器ヘルペスウイルス感染症の45〜49歳と55〜59歳を除く全て、尖圭コンジローマの15〜24歳において女性が男性より多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系及び皮膚科系などの診療科から構成されるが、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移 感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4に示した。2001年以降、男女ともに性器クラミジア感染症と淋菌感染症は減少傾向がみられ、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマはほぼ横ばいの傾向である。前月との比較では、男性では尖圭コンジローマが同値であったが、他の3疾患は減少し、女性では4疾患全てが減少した。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈する必要があります。詳細は、IDWR週報2000年第46週号(10月報)4ページの説明を参照してください。
◆薬剤耐性菌について (11月13日集計分)
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基幹定点数(10月):457.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.18(前月:4.01、前年同月:3.81)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。10月は前月よりやや増加し、過去7年間の同月との比較では最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.86(前月:0.49、前年同月:0.88)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。10月は例年同様、前月より大幅に増加し、過去7年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.23(前月:0.16、前年同月:0.14)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわずかに多い傾向がある。10月は前月より大幅に増加(報告実数で46%増)し、過去7年間の同月との比較では最も多かった。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の62%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 …小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の57%を占める一方、65歳以上が全体の19%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の71%を占めている(図3:PDF参照)。
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.2:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=1.5:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は福島県(8.3)、新潟県(7.7)、高知県(6.9)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は富山県(7.2)、千葉県(6.3)が突出して多く、富山・千葉県は
過去7カ月にわたり上位1、2位であった。ついで高知県(2.0)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が104件と少ないので都道府県別定点当たり報告数の評価は困難であるが、福島県(1.9)、奈良県(1.0)などが多い。これらの県の今月の定点当たり報告数は、全国平均の昨年1年間の定点当たり報告数(1.48)に近い値である。
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◆結核サーベイランス月報 11月21日集計分
10月の新登録患者数は2,194人(男性1,389人、女性805人)で、このうち活動性肺結核患者は1,714人(うち喀痰塗抹陽性者は832人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(252人)、大阪府(大阪市を除く)(150人)、大阪市(118人)、埼玉県(さいたま市を除く)(95人)、愛知県(名古屋市を除く)(84人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は180人であった。
*マル初者…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。
また、2005年の結核発生動向調査年報が出されました。詳しくは、結核研究所ホームページ (http://www.jata.or.jp/rit/rj/data_tp.html)をご覧ください。
注目すべき感染症
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、多種多様の病原体による疾患を包含する症候群である。現在、5類感染症定点把握疾患に規定されており、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から週単位で報告がなされている。感染性胃腸炎の報告数が増加するのは冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルス感染を原因とするものであると推測されている(IASR, Vol 24. No 12. p321-322参照)。
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図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(1996年〜2006年第46週) |
図2. 感染性胃腸炎の都道府県別報告状況(2006年第34〜46週) |
図3. 感染性胃腸炎の都道府県別報告状況(2006年第46週) |
2006年第46週の定点当たり報告数は16.4(総患者報告数49,464)であり、昨年の同時期(第46週定点当たり報告数6.1、総患者報告数18,676)の2.5倍以上となっている(図1)。2006年は定点当たり報告数が最低値となったのは第33週であり、第34週以降第46週までの定点当たり累積報告数を都道府県別にみると、大分県(135.3)、熊本県(130.0)、福井県(127.9)、宮崎県(127.7)、三重県(114.5)の順となっているが(図2)、第46週のみの定点当たり報告数では、富山県(37.5)、宮崎県(29.9)、大分県(27.8)、群馬県(27.6)、三重県(26.9)の順であり(図3)、当初西日本を中心としていた流行が、中部地域や関東地域でも大きくなりつつあるものと推察される。
感染性胃腸炎の発生は、例年と比べても、流行の立ち上がりが早く、現在も大きく増加しつつある。今後とも、その発生動向の推移には注意深い観察が必要である。
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