国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第48号ダイジェスト
(2006年11月27日〜12月3日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症


〈第48週コメント〉12月7日集計分

注意:これはこれは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 細菌性赤痢12例(感染地域:インド3例、エジプト3例、カンボジア2例、インドネシア1例、フィリピン1例、ミャンマー1例、カタール1例)
腸チフス1例(疑似症)
パラチフス1例(感染地域:セネガル)
3類感染症: 腸管出血性大腸菌感染症32例(うち有症者23例、HUSなし)
感染地域:国内31例、中国1例
国内の多い感染地:広島県7例、静岡県5例
年齢群:10歳未満(16例)、10代(3例)、20代(3例)、30代(4例)、40代(3例)、50代(2例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(12例)、O157 VT2(9例)、O26 VT1(6例)、O103 VT1(1例)、その他/不明(4例)
4類感染症: E型肝炎1例(感染地域:中国・感染源:不明)
A型肝炎2例(感染地域:東京都1例、広島県1例)
つつが虫病17例(感染地域:千葉県5例、福島県3例、鹿児島県3例、長崎県2例、神奈川県1例、石川県1例、静岡県1例、広島県1例)
マラリア1例(三日熱_感染地域:タイ/パプアニューギニア)
レジオネラ症 10例(すべて肺炎型.うち1例死亡)
年齢群:3歳1例、40代1例、60代3例、70歳以上5例
感染地域:北海道1例、宮城県1例(温泉)、群馬県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、新潟県1例、富山県1例、長野県1例(温泉)、大阪府1例、長崎県1例
5類感染症:
アメーバ赤痢
6例
(腸管アメーバ症3例、腸管外アメーバ症3例)
感染地域:国内5例、シンガポール1例
感染経路:経口2例、性的接触(異性間・同性間不明)2例、不明2例
ウイルス性肝炎
3例
B型2例_感染経路:ともに性的接触(ともに異性間)
C型1例_感染経路:不明
急性脳炎1例(病原体不明、30代)
後天性免疫不全症候群 11例(無症候4例、AIDS 5例、その他2例)
感染地域:国内9例、国外(国不明)2例
感染経路:性的接触10例(異性間4例、同性間4例、異性間/同性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明1例
梅毒3例(早期顕症I期2例、無症候1例)
破傷風1例(70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症4例(遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:ともに血液、遺伝子型不明2例_菌検出検体:胆汁1例、尿1例)

(補)他にレジオネラ症1例、クリプトスポリジウム症1例の報告があったが、削除予定。また報告遅れとして、細菌性赤痢3例〔感染地域:神奈川県1例、三重県1例、国内(都道府県不明)1例〕などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第46週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県 (1.97)、沖縄県(0.67)、広島県(0.51)、岐阜県(0.44)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,084例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第42週 以降、増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では北海道(1.8)、富山県(1.1)、秋田県(1.1)、大分県(1.0)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第42週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では北海道(4.5)、新潟県(3.5)、鳥取県(3.2)、宮崎県(3.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第39週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では福井県(45.2)、富山県(43.2)、群馬県(32.8)、埼玉県(32.2)、三重県(31.2)、愛媛県(30.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第43週より増加が続いている。都道府県別では島根県(3.5)、福井県(3.3)、山形県(3.2)、石川県(3.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第42週以降、減少が続いている。都道府県別では山形県(3.2)、大分県(2.3)、秋田県(1.4)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では宮城県(0.92)、栃木県(0.85)、岩手県(0.74)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では広島県(0.06)、愛知県(0.03)、和歌山県(0.03)、沖縄県(0.03)が多い。風しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では、千葉県、愛知県、長崎県から各1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では宮城県(0.36)、岩手県(0.15)、栃木県(0.11)が多い。麻しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では埼玉県4例(0.02)、岡山県(0.02)、神奈川県(0.01)、愛知県(0.01)、広島県(0.01)各1例の報告であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(3.1)、青森県(2.6)、大分県(2.5)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(2.7)、埼玉県(2.0)、群馬県(1.8)、新潟県(1.7)が多い。成人麻しんは、東京都、神奈川県から各1例の報告があった。



 注目すべき感染症

◆ 感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は多種多様の病原体による疾患を包含する症候群名であり、全国約3,000カ所の小児科定点から毎週報告がなされている。発生が増加するのは主に冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルスが原因であると推測されている(IASR, Vol 24. No12. p321-322)。例年、感染症発生動向調査による報告のピークは12月中旬以降となることが多く(図1)、その時期の報告、特に集団発生例の多くはノロウイルスによるものと推測される(感染症情報センターホームページ http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-kj.html)。

ノロウイルスでは牡蠣の生食による食中毒が知られているが、感染している調理従事者や配膳者によって食材にウイルスが付着し、それらを食することで起こる集団食中毒や、感染者に直接的もしくは間接的に接触することによる感染経路も存在する。
図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(1996年〜2006年第48週) 図2. 感染性胃腸炎の都道府県別報告状況(2006年第48週)

また、患者の吐物や下痢便は強力な感染源である。実際、これまでの集団生活施設等での集団発生では、吐物・下痢便の拭き取りや消毒、あるいはそれらの付着した衣類の洗浄を適切に行わなかったためと考えられる例がある〔消毒剤の種類と濃度については、厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/dl/040204-1.pdf「ノロウイルスに関するQ&A」Q17及びQ20〕。したがって、ノロウイルスのヒト−ヒト感染の予防には、流水・石けんによる手洗いの励行、吐物・下痢便の適切な処理、更には病院や集団生活施設においては、可能な限り発病者との接触を避けることが重要である。

2006年第48週の感染性胃腸炎の定点当たり報告数は21.8(報告数65,638)であり、1981年以来の最高値であった第47週の値を更に上回った。都道府県別では福井県(45.2)、富山県(43.2)、群馬県(32.8)、埼玉県(32.2)、三重県(31.2)、愛媛県(30.1)、宮崎県(29.8)、滋賀県(29.6)、山口県(27.3)、大分県(26.8)の順となっている。当初は西日本を中心に患者発生の増加がみられていたが、最近では中部地域や関東地域での流行も大きくなりつつある(図2)。
例年、感染性胃腸炎の発生のピークは第50〜51週前後であるので、今後も更に報告が増加する可能性が高いと考えられる。今後とも、感染性胃腸炎の発生動向にはより注意深い観察が必要である。


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