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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||
2類感染症: |
細菌性赤痢3例(感染地域:ベトナム1例、カンボジア1例、ケニア1例) 腸チフス2例(感染地域:インド1例、インドネシア1例*) パラチフス1例(感染地域:インドネシア*) *腸チフスとパラチフスの重複感染 |
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3類感染症: | 腸管出血性大腸菌感染症39例(うち有症者19例、HUS 1例) 感染地域:すべて国内 国内の多い感染地:広島県13例、大阪府5例 年齢群:10歳未満(15例)、10代(1例)、20代(9例)、30代(8例)、40代(2例)、50代(1例)、60代(2例)、70歳以上(1例) 血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(20例)、O157 VT2(8例)、O26 VT1(6例)、O157 VT1(2例)、O111 VT1(1例)、その他/不明(2例) |
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4類感染症: | オウム病1例(感染源:不明、感染地域:タイ) つつが虫病20例(感染地域:鹿児島県6例、千葉県2例、岐阜県2例、長崎県2例、青森県1例、福島県1例、神奈川県1例、愛知県1例、三重県1例、高知県1例、熊本県1例、大分県1例)
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5類感染症: |
破傷風2例(60代、70代) バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanA_菌検出検体:便) (補)他に報告遅れとして、E型肝炎1例〔感染地域:国内(都道府県不明)、感染源:不明〕、急性脳炎3例〔ライノウイルス1例(4歳)、病原体不明2例(0歳、1歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(血清群:ともにA群、年齢:1歳、30代)、髄膜炎菌性髄膜炎1例(20代、感染地域:国内.死亡)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第43週以降、増加が続いている。都道府県別では宮崎県(3.27)、大分県(0.86)、岐阜県(0.72)、広島県(0.72)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,887例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第42週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では北海道(2.0)、山形県(1.7)、富山県(1.5)、秋田県(1.4)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第42週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では北海道(4.4)、新潟県(4.4)、鳥取県(3.7)、大分県(3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第39週以降、増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では福井県(41.4)、愛媛県(37.2)、埼玉県(31.4)、富山県(31.1)、宮城県(28.9)、山口県(28.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は第43週より増加が続いている。都道府県別では福井県(4.1)、宮崎県(3.8)、大分県(3.5)、宮城県(3.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では山形県(3.4)、大分県(2.8)、島根県(1.4)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続して増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では岩手県(1.10)、富山県(0.90)、埼玉県(0.81)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では北海道、群馬県、神奈川県、新潟県、滋賀県、奈良県、高知県、宮崎県から各1例の報告であった。風しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では、兵庫県から1例のみの報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では島根県(0.22)、岩手県(0.21)、宮城県(0.21)が多い。麻しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では、茨城県から2例、神奈川県、山梨県、静岡県、愛知県から各1例の報告であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(3.4)、青森県(2.4)、長野県(2.4)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(3.1)、群馬県(2.6)、大阪府(1.7)、愛媛県(1.7)が多い。成人麻しんは、埼玉県から1例の報告があった。
◆ インフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする呼吸器感染症である。現在、ヒトの間では2種類のA型ウイルス(H1N1;Aソ連型、H3N2;A香港型)とB型ウイルスの計3種類が世界中で流行を繰り返している。日本では毎年12月末〜1月初旬に流行が始まり、その後急激に発生が増加し、1月最終週〜2月第1週に流行のピークを迎えることが多い。国内の患者発生数は推定で、2004/05シーズンに約1,770万人(IASR, Vol. 26, No. 11, p287-288, 2005)、2005/06シーズンに約1,116万人(IASR, Vol. 27, No. 11, p293-294, 2006)とされている。
インフルエンザ予防の基本はワクチン接種である。わが国では65歳以上の高齢者、および60〜64歳で基礎疾患のある者に対して、接種費用の一部公費負担による接種勧奨が行われている。 | ||
図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1996年〜2006年第49週) |
図2. 2006/07シーズンインフルエンザウイルス分離状況(2006年第36〜49週) |
今シーズンのインフルエンザワクチンには、A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)、A/広島/52/2005(H3N2)、B/マレーシア/2506/2004の3種類のウイルス株が含まれている(IASR, Vol. 27, No. 10, p267-268, 2006)。インフルエンザの流行時期を考えると、ワクチン接種は12月中に済ませておくことが勧められる。
感染症発生動向調査によると、第49週における定点当たり報告数は0.15(報告数657)で、まだ全国的な流行の開始には至っていない(図1)。都道府県別では宮崎県(3.27)、大分県(0.86)、岐阜県(0.72)、広島県(0.72)、沖縄県(0.64)、福井県(0.41)の順となっている。宮崎県では、管内に2週連続で注意報レベルを超えている保健所がみられ、既に地域的な流行が始まっているものと思われる。
第36週以降これまでに、インフルエンザウイルスの分離は広島県、山梨県、滋賀県、岡山県、 大阪府、兵庫県等の全国の衛生研究所から報告されており、B型18件(56.3%)、AH1(Aソ連)型12件(37.5%)、AH3(A香港)型2件(6.3%)の順となっている(図2)。今シーズンのインフルエンザの報告は今までのところ、例年と比べて早く増加しているとは言えないが、全国的な流行の時期は近付いているものと考えられる。今後とも、インフルエンザの発生動向には注意が必要である。
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の病原体による疾患を包含する症候群であり、全国約3,000カ所の小児科定点から毎週報告がなされている。発生が増加するのは主に冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルスが原因であると推測されている(IASR, Vol. 24. No. 12. p321-322)。例年、感染症発生動向調査による報告のピークは12月中旬以降となることが多く(図1)、その時期の報告、特に集団発生例の多くはノロウイルスによるものと推測される(http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-kj.html)。
ノロウイルス感染症の潜伏期間は数時間〜数日(平均1〜2日)で、主な症状は嘔気・嘔吐及び下痢であり、嘔吐・下痢は1日数回から多いときには10回以上のこともある。 | ||
図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(1996年〜2006年第49週) | 図2. 感染性胃腸炎の都道府県別報告状況(2006年第49週) |
しかし、症状持続期間は数時間〜数日(平均1〜2日)と比較的短く、以前から他の病気がある等の要因がない限りは、重症化して長期にわたり入院を要することは少ない。また、発熱の頻度は高くない。治療では特効薬はなく、対症療法となるが、最も重要なことは水分補給によって脱水を防ぐことである。
これまでノロウイルスの感染経路としては、食中毒としての経口感染がよく知られていたが、患者や無症状病原体保有者との直接もしくは間接的接触による接触感染や、患者の嘔吐物や下痢便を介した飛沫感染等のヒト−ヒト感染があり、その感染力は非常に強い。実際に、乳幼児、児童、高齢者の集団生活施設や病院で、ヒト−ヒト感染によると思われる集団感染や院内感染がしばしば報告されている。ヒト−ヒト感染であっても、飲み込まれたウイルスがヒトの腸管に達して感染が成立する。従って、ヒト−ヒト感染の予防法として重要なことは流水・石鹸による手洗いの徹底であり、また嘔吐物・下痢便の適切な処理と消毒である(「ノロウイルス感染症とその対応・予防」http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html)。
2006年第49週の感染性胃腸炎の定点当たり報告数は22.2(報告数66,871)となり、第48週の値(21.8)を更に上回ったが、増加の速度は緩やかとなっている(図1)。都道府県別では福井県(41.4)、愛媛県(37.2)、埼玉県(31.4)、富山県(31.1)、宮城県(28.9)、山口県(28.8)、鳥取県(28.7)、千葉県(28.3)、神奈川県(28.2)、石川県(27.9)が多い(図2)。地域的には当初西日本が中心であったが、その後全国的な流行となり、現在では関東地域を中心とした東日本の流行が大きくなりつつある。
これまでの感染性胃腸炎の発生動向をみると、流行のピークにさしかかっているものと予想されるが、今後ともその発生動向には注意が必要である。
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