国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報
IDWR 感染症発生動向調査週報

第1-2号ダイジェスト
(2007年1月1日〜14日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

*第1週は年末年始の医療機関休業の影響を受けることから、報告数も通常より少なくなる。そのため、 本号は第1〜2週合併号とする。

全数報告の感染症

〈第1週コメント〉2007年1月9日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 細菌性赤痢7例(感染地域:愛知県1例、エジプト3例、タイ2例.疑似症1例)
3類感染症: 腸管出血性大腸菌感染症 3例(うち有症者2例、HUS無し)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:熊本県2例
年齢群:10歳未満(2例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(2例)、O157 VT1(1例)
4類感染症: つつが虫病9例(感染地域:和歌山県6例、福島県1例、福井県1例、鹿児島県1例)
レジオネラ症1例(肺炎型.60代.感染地域:岐阜県)
5類感染症:
アメーバ赤痢 2例(ともに腸管アメーバ症)

感染地域:国内1例、中国1例
感染経路:ともに経口
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(血清群:A群.60代)
後天性免疫不全症候群 3例(無症候2例、AIDS 1例)
感染地域:国内2例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触(異性間)2例、不明1例
破傷風1例(80代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)

(補)他に報告遅れとして、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.血清群:B群)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(2.03)、岐阜県(1.22)、沖縄県(0.84)、愛知県(0.70)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は2,381例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の79%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では富山県(0.93)、秋田県(0.85)、山形県(0.83)、石川県(0.83)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続して減少した。都道府県別では鳥取県(3.4)、富山県(1.7)、宮崎県(1.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では福井県(11.0)、徳島県(10.2)、宮城県(10.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(5.3)、佐賀県(4.9)、大分県(4.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では大分県(1.08)、長崎県(0.68)、宮崎県(0.67)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では富山県(1.10)、宮城県(1.00)、石川県(0.76)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(0.03)、沖縄県(0.03)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では宮崎県(0.06)、沖縄県(0.06)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では岩手県(0.05)、宮城県(0.05)、岡山県(0.04)が多い。麻しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では埼玉県(0.03)、群馬県(0.02)、岡山県(0.02)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は第49週以降、減少が続いている。都道府県別では青森県(2.2)、新潟県(2.2)、宮崎県(2.0)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(2.7)、大阪府(1.8)、静岡県(1.3)が多い。成人麻しんは神奈川県から1例の報告があった。


〈第2週コメント〉2007年1月18日集計分

1類感染症: 報告なし
2類感染症: コレラ1例(感染地域:青森県)
細菌性赤痢14例(感染地域:大阪府1例、インド5例、インドネシア2例、エジプト2例、セネガル2例、中国1例、カンボジア/ラオス1例)
腸チフス1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
3類感染症: 腸管出血性大腸菌感染症 24例(うち有症者12例、HUS 1例)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地:熊本県9例、宮城県5例
年齢群:10歳未満(5例)、10代(8例)、20代(1例)、30代(4例)、40代(4例)、50代(1例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(20例)、O157 VT1(1例)、O157 VT2(1例)、O26 VT1(2例)
4類感染症: A型肝炎4例(感染地域:長崎県2例、宮城県1例、大分県1例)
オウム病1例(感染地域:静岡県.感染源:ハト)
つつが虫病3例(感染地域:千葉県2例、鹿児島1例)
デング熱1例(感染地域:ラオス)
レジオネラ症10例(すべて肺炎型)
年齢群:40代1例、50代1例、60代4例、70代2例、80代2例
感染地域:新潟県2例、大阪府2例、北海道1例、長野県1例(温泉)、岡山県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例、東京/タイ1例
5類感染症:
アメーバ赤痢 15例(腸管アメーバ症11例、腸管外アメーバ症3例、腸管・腸管外アメーバ症1例)

感染経路:経口2例、性的接触(同性間)1例、その他1例、経口/性的接触(同性間・異性間不明)1例、不明10例
ウイルス性肝炎2例〔ともにB型_感染経路:ともに性的接触(異性間)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(30代.血清群:G群.死亡)
後天性免疫不全症候群13例(無症候9例、AIDS 3例、その他1例)

感染地域:国内9例、国外(国不明)1例、国内・国外不明3例 感染経路:性的接触11例(異性間3例、同性間8例)、不明2例

ジアルジア症2例(感染地域:ともに国内)
梅毒4例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、晩期顕症1例)

(補)他に梅毒(無症候)1例の報告があったが、削除予定。また報告遅れとして、細菌性赤痢3例(感染地域:カンボジア1例、インド1例.疑似症1例)、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:国内)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代.血清群:不明)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:ともにVanC、菌検出検体:ともに血液)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は増加した。都道府県別では岐阜県(1.53)、宮崎県(1.24)、滋賀県(1.11)、愛知県(0.92)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は2,688例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の80%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は横ばい であったが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では石川県(0.93)、山形県(0.70)、北海道(0.69)、富山県(0.69)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では鳥取県(3.5)、富山県(3.3)、愛媛県(3.0)、石川県(2.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(12.8)、高知県(10.6)、大分県(10.1)、福島県(10.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(5.3)、大分県(4.9)、福井県(4.9)、鳥取県(4.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では宮崎県(1.14)、佐賀県(1.00)、長崎県(0.91)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では富山県(2.1)、石川県(1.6)、宮城県(1.4)、北海道(1.0)、岩手県(1.0)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では長野県(0.07)、岩手県(0.05)、兵庫県(0.05)が多い。風しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では千葉県、東京都、沖縄県から各1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では岡山県(0.13)、佐賀県(0.09)が多い。麻しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では岐阜県(0.04)、埼玉県(0.03)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(3.4)、宮崎県(2.5)、島根県(2.0)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(2.0)、群馬県(1.8)、愛媛県(1.5)が多い。成人麻しんは埼玉県から1例の報告があった。



 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症である。

感染を受けてから1〜3日の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状が続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強い。高齢者では超過死亡の多くを占める二次性の細菌性肺炎、小児では発症率は低いものの生命に関わる可能性のあるインフルエンザ脳症等の合併症が知られている。

図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1996年第30週〜2007年第2週)

図2. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況(2006年第36週〜2007年第2週)

温帯地域およびそれより高緯度の国々では、インフルエンザの流行は毎年冬季にみられており、日本を含めた北半球の温帯地域では1〜2月頃に、南半球では7〜8月頃に流行のピークとなる。わが国では、例年12月下旬〜1月から全国的な流行が始まり、1〜3月頃に患者数が最大となり、4〜5月頃に減少するが、最近では、春季から夏季にかけて地域的な流行がみられることもある。

インフルエンザの第2週の定点当たり報告数(0.37)は流行開始の指標である1.0に達してなく、全国的な流行には至っていないが、今シーズンでは最も高い値となっており、流行開始は近づいているものと考えられる。今後のインフルエンザの発生動向には、注意深い観察が必要である。

図3. 2006/07シーズンにおける週別インフルエンザウイルスの分離状況




↑ トップへ戻る

Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.