発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第3週コメント〉 1月24日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては、発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢11例(感染地域:インドネシア5例、インド4例、ミャンマー1例、カンボジア/シンガポール1例) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症20例(うち有症者10例、HUS無し)
感染地域:国内17例、シンガポール2例、ニュージーランド1例
国内の多い感染地:福岡県4例、茨城県3例、愛媛県3例
年齢群:10歳未満(7例)、10代(1例)、20代(1例)、30代(7例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(13例)、O157 VT2(4例)、O153 VT2(1例)、その他/不明(2例) |
4類感染症: |
つつが虫病7例〔感染地域:鹿児島県2例、千葉県1例、東京都1例、愛知県1例、国内(都道府県不明)2例〕
レジオネラ症4例(すべて肺炎型)
年齢群:50代1例、60代1例、70代1例、90代1例
感染地域:茨城県1例、富山県1例、長野県1例、滋賀県1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 9例 |
(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症1例)
感染地域:国内8例、中国1例
感染経路:経口2例、性的接触(同性間)1例、不明6例 |
ウイルス性肝炎2例〔ともにB型_感染経路:性的接触(異性間)1例、不明1例〕
クリプトスポリジウム症1例(感染地域:タイ)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.血清群:G群)
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後天性免疫不全症候群8例 |
(無症候4例、AIDS 4例)
感染地域:国内4例、国外(国不明)1例、国内・国外不明3例
感染経路:性的接触5例(異性間3例、同性間2例)、不明3例 |
髄膜炎菌性髄膜炎1例(0歳.感染地域:国内)
梅毒7例(早期顕症II期4例、無症候2例、先天梅毒1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:創部)
(補)他に報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:インドネシア)、E型肝炎2例(感染地域:北海道1例、群馬県1例.感染源:ともに不明)、エキノコックス症1例(多包条虫.感染地域:北海道)、急性脳炎4例〔単純ヘルペスウイルス1例(50代)、HHV6 1例(1歳)、病原体不明2例(ともに2歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症5例(50代1例、60代2例、70代1例、80代1例.血清群:A群2例、B群2例、不明1例.うち3例死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanA_菌検出検体:尿)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(3.6)、福島県(3.2)、愛知県(2.8)、山形県(2.6)、岐阜県(2.1)、滋賀県(2.0)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は、2,826例の報告があり、報告数は2週連続で増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の70%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してもやや多い。都道府県別では長野県(1.04)、石川県(0.86)、富山県(0.72)、鳥取県(0.68)、長崎県(0.68)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では鳥取県(5.2)、富山県(5.0)、新潟県(3.8)、愛媛県(3.8)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では大分県(11.7)、福島県(11.0)、愛媛県(10.3)、石川県(10.0)、宮崎県(10.0)が多い。水痘の定点当たり報告数
は減少した。都道府県別では宮崎県(4.5)、愛媛県(3.6)、大分県(3.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では宮崎県(3.7)、長崎県(1.9)、鹿児島県(1.9)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では富山県(2.9)、宮城県(1.6)、岩手県(1.5)、北海道(1.4)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では栃木県(0.11)、宮城県(0.08)、秋田県(0.06)、千葉県(0.06)、和歌山県(0.06)が多い。風しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.03)、神奈川県(0.02)、岐阜県(0.02)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では岡山県(0.22)、熊本県(0.17)、佐賀県(0.09)が多い。麻しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では埼玉県(0.03)、秋田県(0.03)、千葉県(0.02)、東京都(0.02)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(2.3)、岩手県(1.8)、宮崎県(1.6)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い状態が続いている。都道府県別では沖縄県(3.6)、愛媛県(1.5)、新潟県(1.5)が多い。成人麻しんは、宮城県、埼玉県、長野県から各1例の報告があった。
〈12月コメント〉
◆性感染症について 2007年1月15日集計分 性感染症定点数:946
●月別推移
2006年12月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.41(男1.03、女1.38)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.85(男0.36、女0.49)、尖圭コンジローマが0.48(男0.24、女0.23)、淋菌感染症が0.96(男0.78、女0.17)で、男女とも4疾患のうち、性器クラミジア感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、性器クラミジア感染症は男女ともに微減、性器ヘルペスウイルス感染症は男性で減少、女性で微増、尖圭コンジローマは男性で減少、女性で増加、淋菌感染症は男性で微増、女性で微減した(「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症では男女ともに平均-2標準偏差(SD)を下回り、尖圭コンジローマでは男性が-1SDを下回り、淋菌感染症では男性が-2SD、女性が-1SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(12月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症が20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症が20〜24歳及び25〜29歳であったが、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症が25〜29歳、尖圭コンジローマが25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳、40〜44歳(すべて同値)、淋菌感染症が20〜24歳及び25〜29歳であり、男性に比べて女性の方が罹患年齢がやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症では男女ともに、ピーク以降、年齢が高くなるに従って減少傾向が顕著であり、男性では60代以降、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症では男女ともに、50代以降の報告も少なくない。15歳以上の年齢群でみた男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群において男性が女性よりも多いが、性器クラミジア感染症の15〜34歳、性器ヘルペスウイルス感染症の15〜34歳、尖圭コンジローマの15〜29歳において、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されるが、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。2001年以降、男女ともに性器クラミジア感染症と淋菌感染症は減少傾向がみられ、性器ヘルペスウイルス感染症と淋菌感染症は横ばい傾向である。前月との比較では、男性では淋菌感染症と性器ヘルペスウイルス感染症が同値で、他 の2疾患は減少し、女性では性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマが増加し、他の2疾患は減少した。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈する必要があります。詳細はIDWR週報2000年第46週号(10月報)4ページの説明を参照してください。
◆薬剤耐性菌について (1月15日集計分)
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基幹定点数(12月):459.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.02(前月:3.98、前年同月:3.90)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定
である。12月は前月よりわずかに増加し、過去7年
間の同月との比較では最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.02(前月:0.88、前年同月:1.30)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて
(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少
なく推移している。12月は前月より増加し、過去7
年間の同月との比較では低位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.07(前月:0.11、前年同月:0.10)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわ
ずかに多い傾向がある。12月も11月に引き続き前
の月より大幅に減少し(報告数で37%の減少)、過
去7年間の同月との比較では最も少なかった。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の66%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の67%を占める一方、70歳以上が全体の14%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の76%を占めている(図3:PDF参照)。
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.6:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=1.4:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は山口県(7.3)、栃木県(7.3)、静岡県(7.0)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(8.8)が突出して多く、ついで高知県(3.0)、東京都(2.8)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が33件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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◆結核サーベイランス月報 1月22日集計分
12月の新登録患者数は2,005人(男性1,292、女性713人)で、このうち活動性肺結核患者は1,558人(うち喀痰塗抹陽性者は723人)であった。都道府県・政令指定都市別の新登録患者数は、東京都(266人)、大阪市(118人)、大阪府(大阪市を除く)(105人)、愛知県(名古屋市を除く)(73人)、埼玉県(さいたま市を除く)(68人)が多い。
また、別掲により集計されているマル初者数*は162人であった。
*マル初者…結核の感染が強く疑われるが発病はしておらず、発病予防のための内服を行っている者。
詳しいコメントは、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。。
注目すべき感染症
◆ RSウイルス感染症
RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、病原体であるRSウイルスが感染者の鼻汁、喀痰などから接触感染、あるいは飛沫感染により伝播する疾患である。1歳までに50〜70%、3歳までにすべての小児がRSウイルスの初感染を受けるとされる。その後も、年長児や成人での再感染が生じるため、年齢を問わず発症するが、特に乳幼児期において重要な疾患である。母体からの移行抗体にもかかわらず、生後数週間〜数カ月間の時期に重篤な症状を引き起こし、乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めると報告されている。年長児や成人では重症となることは少ない。
特異的な治療法はなく、基本的には酸素投与、呼吸管理、輸液などの対症療法が中心である。予防としては、現在実用化されているワクチンはなく、研究段階である。また、遺伝子組み換え技術を用いて作成された単クローン抗体製剤が認可されており、早産児や慢性肺疾患を持つ小児などのハイリスク児に対して、流行前から流行期には一か月毎に予防的な投与が考慮される。
RSウイルス感染症の発生動向については、感染症法改正(2003年11月5日施行)により対象疾患となり、全国約3,000の小児科定点医療機関から毎週報告がなされている。診断は臨床症状のみでは不可能であることから、届出基準としてウイルスの分離・同定、迅速診断キットによる抗原検出、血清抗体検出(中和反応または補体結合反応)による病原検査が必須とされている。しかし、臨床現場で最も簡便な迅速診断キット検査については、保険適用が3歳未満の入院症例に限定されているので、届出されていない例もかなり多いと考えられる。このような限界を念頭におきながらも、最近の発生動向調査でのデータをまとめた。
2003年第45週(報告開始になった11月5日を含む週)〜2006年第30週(7月30日までの週)の状況をみると、第36、37週(9月中旬)に増加し始め、第45、46週(11月初旬)に急増して、第50、51週(12月中旬)にピークとなり、その後4月頃までゆっくりと減少した(図1)。また、春季夏季にもわずかながら報告が見られている。2006年は過去と同様に第36週より増加し始め、第45週より急増し、第49週には前年までの最高値である1,864人/週を上回った後、その後も増加が続き、第52週には3,957人/週となった。性別では2004年で男性55%、女性45%、2005年で男性56%、女性44%、2006年で男性56%、女性44%で、男性がやや多い。
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年齢群別では、0歳が約50%(2004年52%、2005年47%、2006年45%)、1歳が約30%(2004年26%、2005年28%、2006年30%)、2歳が約10%(2004年10%、2005年12%、2005年12.5%)、3歳が約5%(2004年5%、2005年6%、2006年6%)であり、2歳以下が全体の約90%(2004年87%、2005年87%、2005年88%)を占めていた(図2)。
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図1. RSウイルス感染症の年別・週別発生状況(2003年第45週〜2007年第3週)
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図2. RSウイルス感染症の報告症例の年別・年齢群別割合(2004〜2006年)
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報告数は年始の影響もあり第1週に一旦減少したものの、再び増加がみられており、引き続きその発生動向には注意が必要と考えられる。なお、それぞれの地域での流行状況については、各都道府県の地方感染症情報センターからの情報を参考にしていただきたい。
臨床的には、特に乳児や基礎疾患を有する小児で重篤な経過をたどりやすいので、迅速かつ適切な対応が必須である。
◆ インフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症である。1〜3日の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状が続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いことが多い。
流行のピークは、日本を含めた北半球の温帯地域では1〜2月頃、南半球では7〜8月頃である。わが国でのインフルエンザの流行は、例年12月下旬〜1月から全国的な流行が始まり、1〜3月に患者数がピークに達し、4〜5月に減少するパターンを繰り返しているが、最近では春〜夏季に地域的な流行がみられることもある。
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感染症発生動向調査によると、2007年第3週の定点当たり報告数は1.06(報告数4,960)であり、今シーズンでは初めて、全国的な流行の指標である定点当たり報告数1.0を上回った(図1)。都道府県別では宮崎県(3.6)、福島県(3.2)、愛知県(2.8)、山形県(2.6)、岐阜県(2.1)、滋賀県(2.0)、福岡県(1.7)、茨城県(1.6)、京都府(1.6)の順であるが、九州、近畿、中部、および北関東〜東北地方南部の地域において、全国平均を上回っている府県が多い(図2)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1996年第30週〜2007年第3週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第3週)
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2006年第36週以降これまでに、全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルス分離報告では、AH3亜型(A香港型)47.4%(報告数54)、B型40.4%(46)、AH1亜型(Aソ連型)12.3%(14)の順となっている(図3)。特に2006年第50週以降では、AH3亜型の割合が増加している(図4)。
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今シーズン(2006/07シーズン)のように、定点当たり報告数が1月以降に初めて1.0を上回ったシーズンは、1996/97シーズンから昨シーズン(2005/06シーズン)までの過去10シーズンでは、計3回(2000/01シーズン、2001/02シーズン、2004/05シーズン)みられている。
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図3. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況
(2006年第36週〜2007年第3週)
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図4. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離状況の週別推移
(2006年第36週〜2007年第3週)
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過去10シーズンで12月中に流行開始となったシーズンでは、ピークは第4〜5週となっているのに対して、1月以降に流行が開始したシーズンではピークはより遅い時期となっている(2000/01シーズンは第11週、2001/02シーズンは第8週、2004/05シーズンは第9週)(図1)。今後、インフルエンザの報告数はピークに向けて更に増加してくるものと予想される。インフルエンザの発生動向には、よりいっそうの注意深い観察が必要である。
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