国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第4号ダイジェスト
(2007年1月22日〜28日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第4週コメント〉2007年1月31日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 細菌性赤痢9例
感染地域:国内(都道府県不明)1例、インドネシア3例、インド2例、フィリピン2例.疑似症1例
腸チフス2例(感染地域:インド1例、バングラデシュ1例)
パラチフス1例(感染地域:インド)
3類感染症: 腸管出血性大腸菌感染症 6例(うち有症者3例、HUS無し)
感染地域:千葉県1例、神奈川県1例、石川県1例、兵庫県1例、福岡県1例、都道府県不明1例
年齢群:10代(1例)、20代(2例)、40代(1例)、50代(1例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2 (2例)、O91 VT1 (1例)、O157 VT1・VT2 (1例)、O157 VT1(1例)、O145 VT1+O157 VT2(1例)
4類感染症: A型肝炎2例(感染地域:岩手県1例、大阪府1例)
つつが虫病4例(感染地域:和歌山県2例、栃木県1例、岐阜県1例)
レジオネラ症6例(すべて肺炎型)

年齢群:50代2例、60代3例、70代1例
感染地域:神奈川県2例(うち1例温泉)、新潟県1例、岐阜県1例、静岡県1例、広島県1例

5類感染症:
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症3例)

感染地域:国内7例、インドネシア2例、中国1例、国内/アフガニスタン1例
感染経路:経口3例、性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)、不明5例
ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間)〕
急性脳炎2例〔アデノウイルス1例(3歳)、単純ヘルペスウイルス1例(40代)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(30代1例、40代1例.血清群:ともにA群)
後天性免疫不全症候群15例(無症候10例、AIDS 4例、その他1例)
感染地域:国内12例、ミャンマー1例、ラオス1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触12例(異性間3例、同性間6例、異性間・同性間不明3例)、不明3例
梅毒7例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、晩期顕症1例、無症候2例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)

(補)他に報告遅れとして、急性脳炎4例〔単純ヘルペスウイルス1例(50代)、HHV6 1例(0歳)、病原体不明2例(7歳1例、10代1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(80代.血清群:A群.死亡)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(8.5)、愛知県(8.0)、山形県(7.5)、福島県(5.0)、滋賀県(4.4)、三重県(4.2)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は3,267例の報告があり、報告数は3週連続で増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してもかなり多い。都道府県別では山形県(0.93)、長野県(0.84)、青森県(0.79)、石川県(0.79)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では鳥取県(6.8)、富山県(6.7)、新潟県(4.8)、石川県(4.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では大分県(11.9)、宮崎県(11.4)、愛媛県(10.8)、山口県(10.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では宮崎県(6.0)、福井県(5.5)、大分県(4.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は微増し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では宮崎県(4.0)、長崎県(2.1)、佐賀県(1.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(3.3)、岩手県(1.8)、宮城県(1.8)、石川県(1.7)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(0.15)、栃木県(0.13)、千葉県(0.05)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では大分県(0.03)、沖縄県(0.03)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では熊本県(0.21)、岡山県(0.15)、福岡県(0.13)が多い。麻しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では埼玉県(0.02)、千葉県(0.02)、岐阜県(0.02)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では新潟県(1.9)、青森県(1.4)、宮崎県(1.4)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(4.4)、茨城県(1.4)、栃木県(1.3)が多い。成人麻しんは大阪府から1例の報告があった。




 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症である。1〜3日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。正確な診断には、ウイルス学的検査が必要である。

わが国でのインフルエンザの流行は、例年12月下旬〜1月に全国的な流行が始まり、1〜3月に発生がピークに達し、4〜5月に減少するパターンを繰り返しているが、最近では春〜夏季に地域的な流行がみられることがある。

図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1996年第30週〜2007年第4週)

図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第4週)

1996/97シーズンから2005/06シーズンまでの過去10シーズンでは、12月中に全国的な流行開始の指標となる定点当たり報告数1.0を上回ったのは7シーズンあり、1月以降に上回ったのは3シーズン(2000/01、2001/02、2004/05)である。流行開始後にピークに達するまでの期間は5〜7週間であるが、6週間が最も多く過去6シーズンであり、次いで7週間が3シーズンであった。2006/07シーズンの流行は第3週より開始しており、従って流行のピークは2月下旬以降となる可能性が高い。

感染症発生動向調査によると、2007年第4週の定点当たり報告数は2.58(報告数12,185)であり、前週1.06の約2.4倍となった(図1)。都道府県別では宮崎県(8.5)、愛知県(8.0)、山形県(7.5)、福島県(5.0)、滋賀県(4.4)、三重県(4.2)、岐阜県(3.6)、茨城県(3.5)の順であり、全国平均を大きく上回っている県は、九州、中部および東北地方でみられている(図2)。

図3. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況(2006年第36週〜2007年第4週) 図4. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離の週別推移 (2006年第36週〜2007年第4週)

第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルス分離報告では、AH3亜型(A香港型)57.0%(報告数98)、B型32.0%(55)、AH1亜型(Aソ連型)11.0%(19)の順となっている(図3)。2006年第50週以降では、AH3亜型の割合が増加してきている(図4)。
インフルエンザの発生は更に増加してくるものと予想され、今後とも、その発生動向には注意深い観察が必要である。


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