発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第7週コメント〉 2月21日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。宜しく御理解下さい。
※感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢6例(感染地域:福島県1例、インドネシア4例、ベトナム1例)
パラチフス1例(感染地域:インドネシア/タイ) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症11例(うち有症者7例、HUS 1例)
報告の多い感染地域:広島県4例(第5、第6週から続く幼稚園に関連した集団発生)
年齢群:10歳未満(2例)、10代(1例)、20代(2例)、30代(1例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(1例)、70歳以上(2例)
血清型・毒素型:O157 VT2 (6例)、O157 VT1・VT2 (2例)、O26 VT1 (1例)、その他/不明(2例) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:三重県.感染源:ホルモン焼)
A型肝炎4例(感染地域:東京都2例、広島県1例、鹿児島県1例)
つつが虫病1例(感染地域:和歌山県)
レジオネラ症5例(すべて肺炎型)
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年齢群:50代1例、60代1例、70代2例、80代1例
感染地域:埼玉県1例、富山県1例、京都府1例、広島県1例、国内(都道府県不明)1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 6例(腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:国内4例、中国1例、インドネシア1例
感染経路:経口2例、性的接触(異性間・同性間不明)1例、不明3例 |
ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間・同性間不明)〕
急性脳炎1例〔病原体不明(7歳)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(遺伝性プリオン病家族性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(50代.血清群:B群)
後天性免疫不全症候群14例(無症候10例、AIDS 1例、その他3例)
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感染地域:すべて国内
感染経路:性的接触13例(異性間1例、同性間12例)、不明1例 |
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候2例)
(補)他に2007年の報告遅れとして、細菌性赤痢2例(感染地域:カンボジア1例、マダガスカル1例)、パラチフス1例〔感染地域:国外(国不明)〕、エキノコックス症1例(単包条虫_感染地域:中国/オーストラリア/ニュージーランド)、コクシジオイデス症1例(感染地域:米国アリゾナ州)、急性脳炎1例(病原体不明.60代)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.血清群:A群)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanB 1例_菌検出検体:喀痰、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第2週以降、増加が続いている。都道府県別では愛知県(32.9)、福岡県(21.7)、三重県(21.5)、山形県(20.3)、岐阜県(15.8)、宮崎県(15.3)、大阪府(15.3)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,523例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(1.28)、新潟県(0.75)、山形県(0.70)、佐賀県(0.65)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では富山県(7.2)、鳥取県(4.5)、石川県(4.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では徳島県(12.2)、熊本県(11.5)、宮崎県(10.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(5.1)、鹿児島県(4.4)、沖縄県(4.4)、和歌山県(4.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(3.6)、鹿児島県(1.6)、長崎県(1.5)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第4週以降、減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(3.1)、石川県(1.3)、長野県(1.1)、岩手県(1.1)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では栃木県(0.06)、岐阜県(0.06)、広島県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では富山県(0.07)、広島県(0.04)、兵庫県(0.02)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では山口県(0.20)、大分県(0.19)、福岡県(0.18)が多い。麻しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では埼玉県から2例、北海道、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県から各1例の報告であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では新潟県(2.4)、宮崎県(1.9)、青森県(1.5)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.4)、福島県(2.1)、群馬県(1.5)が多い。成人麻しんは茨城県から1例の報告があった。
〈1月コメント〉
◆性感染症について 2007年2月13日集計分 性感染症定点数:951
●月別推移
2007年1月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.49(男1.13、女1.36)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.86(男0.36、女0.50)、尖圭コンジローマが0.56(男0.33、女0.23)、淋菌感染症が1.06(男0.87、女0.19)で、男女とも4疾患のうち、性器クラミジア感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、性器クラミジア感染症は男性で増加、女性で微減、性器ヘルペスウイルス感染症は男性で横ばい、女性で増加、尖圭コンジローマは男性で増加、女性で横ばい、淋菌感染症は男性で増加、女性で微増した(「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症では男性で平均-1標準偏差(SD)を、女性で-2SDを下回り、尖圭コンジローマでは男性が+1SDを上回り、淋菌感染症では男女ともに-1SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(1月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、女性では4疾患すべてで20〜24歳であったが、男性では性器クラミジア感染症が20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症が25〜29歳及び35〜39歳、尖圭コンジローマが25〜29歳、淋菌感染症が25〜29歳及び30〜34歳であり、男性に比べて女性の方が罹患年齢がやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症では男女ともに、ピーク以降、年齢が高くなるに従って減少傾向が顕著であり、男性では60代以降、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症では男女ともに、50代以降の報告も少なくない。
15歳以上の年齢群でみた男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群において男性が女性よりも多いが、性器クラミジア感染症の15〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症の15〜34歳及び50〜54歳、尖圭コンジローマの15〜24歳において、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されるが、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。2001年以降、男女ともに性器クラミジア感染症と淋菌感染症は減少傾向がみられ、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマはほぼ横ばい傾向である。前月との比較では、男性では性器ヘルペスウイルス感染症で微減、他の3疾患で増加し、女性では性器ヘルペスウイルス感染症が減少し、性器クラミジア感染症と尖圭コンジローマが同値で、淋菌感染症が増加した。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈する必要があります。詳細はIDWR週報2000年第46週号(10月報)4ページの説明を参照してください。
◆薬剤耐性菌について (2月13日集計分)
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基幹定点数(1月):458.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.29(前月:4.02、前年同月:4.01)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。1月は前月より増加し、過去7年間の同月との比較では最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.90(前月:1.02、前年同月:1.06)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。1月は前月より減少し、過去7年間の同月との比較では低位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.07(前月:0.07、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわずかに多い傾向がある。1月は前月より減少し、過去7年間の同月との比較では低位に属した。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の54%を占める一方、70歳以上が全体の22%を占めてい(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図3:PDF参照)。
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=4.0:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は岐阜県(8.4)、栃木県(8.1)、滋賀県(7.1)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(3.7)、福井県(3.5)、富山県(3.2)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が30件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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◆結核サーベイランス月報
感染症発生動向調査システムの変更により、結核の集計に関して、2007年1月分から国立感
染症研究所では行わなくなりました。
結核の発生状況については、結核研究所の結核発生動向調査結果報告(http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htm)をご覧ください。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
2007年第7週現在の全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関からの定点当たり報告数は11.9(報告数56,852)となり、第2週以降増加が続いている(図1)。
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都道府県別では愛知県(32.9)、福岡県(21.7)、三重県(21.5)、山形県(20.3)、岐阜県(15.8)、宮崎県(15.3)、大阪府(15.3)、大分県(15.2)の順であり、全国平均を上回っている府県は中部、近畿、九州地方に多く、中国、四国地方では全ての県が全国平均を下回っている(図2)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1996年第36週〜2007年第7週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第7週)
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2006/07シーズンとしては、2006年第36週以降これまでに153,667例の報告があり、年齢別では5〜9歳が28.6%と最も多く、次いで10〜14歳(23.2%)、0〜4歳(19.2%)の順となっている(図3)。例年と比べると4歳以下の割合が減少している一方で、10〜14歳の割合が増加している。
第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルスの分離報 告(総報告数660)では、AH3亜型(A香港型)57.0%(報告数376例)、B型36.1%(238例)、AH1亜型(Aソ連型)7.0%(46例)である(図4)。依然としてAH3亜型が最多であるが、最近ではB型の報告も増加してきている(図5)。
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図3. インフルエンザの報告症例の年齢別割合(2006年第36週〜2007年第7週)
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図4. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況(2006年第36週〜2007年第7週)
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図5. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離の週別推移(2006年第36週〜2007年第7週)
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今シーズンのインフルエンザの流行は1月中旬(2007年第3週)から始まっており、今後も報告数は増加する可能性がある。インフルエンザの発生動向には注意深い観察が必要である。
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