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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||
2類感染症: | 細菌性赤痢3例(感染地域:ネパール1例、インド1例、エチオピア1例) | ||||||||||
3類感染症: | 腸管出血性大腸菌感染症 症7例(うち有症者2例、HUSなし) 報告の多い感染地域:大阪府2例 年齢群:10歳未満(1例)、10代(1例)、20代(2例)、30代(2例)、60代(1例) 血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(3例)、O91 VT1(2例)、O157 VT2(2例) |
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4類感染症: | A型肝炎5例(感染地域:千葉県1例、新潟県1例、静岡県1例、韓国1例、イ
ンドネシア1例) オウム病1例(感染源:セキセイインコ) デング熱3例(感染地域:インドネシア2例、フィリピン1例) マラリア1例(三日熱_感染地域:マリ)
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5類感染症: |
破傷風1例(90代) バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:腹水.遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿) (補)他にオウム病1例の報告があったが、削除予定。また2007年分の報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:インドネシア)、E型肝炎1例(感染地域:滋賀県、感染源:山菜)、急性脳炎3例〔A型インフルエンザウイルス1例(10代)、病原体不明2例(7歳1例、10代1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.血清群:A群)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数はは第2週以降増加が続いている。都道府県別では福岡県(34.2)、三重県(33.4)、愛知県(33.1)、福井県(26.1)、大分県(25.0)、大阪府(24.6)、宮崎県(24.0)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,214例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の78%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してもやや多い。都道府県別では富山県(1.45)、山形県(0.93)、鳥取県(0.89)、青森県(0.83)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では富山県(8.3)、鳥取県(6.1)、新潟県(5.4)、石川県(4.5)、愛媛県(4.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(13.2)、宮崎県(12.1)、愛媛県(11.6)、福井県(11.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では大分県(6.4)、沖縄県(5.4)、宮崎県(5.1)、鹿児島県(3.6)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では宮崎県(4.2)、長崎県(2.4)、鹿児島県(1.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では富山県(3.2)、石川県(1.7)、長野県(1.4)、福井県(1.4)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では栃木県(0.13)、岩手県(0.03)、東京都(0.03)、石川県(0.03)、大分県(0.03)、沖縄県(0.03)が多い。風しんの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では大阪府4例、神奈川県2例、東京都、高知県から各1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では山口県(0.53)、熊本県(0.25)、岡山県(0.24)が多い。麻しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では埼玉県から11例、大阪府4例、千葉県3例、宮城県、東京都、神奈川県、福岡県から各1例の報告であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(2.9)、宮崎県(2.5)、青森県(1.4)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.1)、青森県(1.8)、岡山県(1.6)が多い。成人麻しんは群馬県から1例の報告があった。
◆ インフルエンザ
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症であり、感染の標的は鼻咽頭、気管支などである。一般的に、急激に発症する38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに加えて、咽頭痛、鼻汁、咳などの症状もみられる。大多数の人では特別な治療なしに1週間程度で自然治癒するが、乳幼児、高齢者、基礎疾患を有する人では肺炎を併発したり、あるいは基礎疾患 の悪化を招いたりして、死に至ることもありうる。インフルエンザは全身症状を伴い、重症化することが比較的多い点で通常の感冒(いわゆるかぜ)とは異なるが、加えて基本的に流行性疾患であり、一旦本格的な流行が始まると、短期間(2〜3カ月間)に乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込むことも特徴的である。
図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1996年第30週〜2007年第8週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第8週) |
図3. インフルエンザの報告症例の年齢別割合(2006年第36週〜2007年第8週) |
感染症発生動向調査によると、2007年第8週の定点当たり報告数は18.4(報告数87,833)となり、第2週以降、7週連続して増加が続いている(図1)。都道府県別では福岡県(34.2)、三重県(33.4)、愛知県(33.1)、福井県(26.1)、大分県(25.0)、大阪府(24.6)、宮崎県(24.0)、山形県(23.9)の順である。全国平均を上回っている府県は近畿、中部、九州地方に多く、中国・四国地方、山形県を除く東北地方、北海道の各道県は全国平均を下回っている(図2)。2006年第36週以降の累積報告数は238,136例であり、年齢別では5〜9歳が29.6%と最も多く、次いで10〜14歳(23.4%)、0〜4歳(19.2%)の順となっている(図3)。例年と比べて、0〜14歳の割合が増加している状況に変わりはない。
図4. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況(2006年第36週〜2007年第6週) | 図5. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離の週別推移(2006年第36週〜2007年第6週) | 表1. 1996/97シーズン以降の各シーズンにおけるインフルエンザの流行開始時期、流行ピーク時期、およびそれらの間の期間 |
◆ 麻しん
麻しんは空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染と様々な感染経路を示す疾患であり、その感染力は極めて強い。麻しんに対して免疫を有しない者が感染した場合は、10日間前後の潜伏期を経て発症し、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復期へと続いていく。特異的な治療法はないが、先進国では栄養状態の改善や対症療法の発達等により、致死率は0.1〜0.2%にまで低下している。しかし、2000年の大阪での流行時には合併症発症率が約30%、平均入院率が約40%と示されており、未だ重篤な疾患であることには変わりはない(感染症情報センターホームページ「麻疹の現状と今後の対策について」http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/report2002/measles_top.html#m_fig2)。また、最近では麻しんワクチン接種者の一部に修飾麻しんを発症するケースがしばしば認められる。この場合は発熱、発疹共に軽微であることが多く、麻しんとは気付かれないままに、周囲への感染源となっている場合が少なくないと思われる。
感染症発生動向調査によると、2006年1年間の小児科定点からの麻しん報告数は519例(暫定値)であり、2005年の537例に続いて、2年連続して1,000例以下となった。また、2007年に入っても過去2年間と同様に低い状態が続いている(感染症週報2007年第5週号「注目すべき感染症」)(図1)。 | |
図1. 麻しんの年別・週別発生状況(1996年〜2007年第8週 |
しかし、関東南部地域(埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県)での発生は現在に至るまで継続しており、特に埼玉県では第8週の報告数は11例(1保健所より10例)と増加している(図2)。現在、麻しんは全数報告ではなく、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告であり、実際の発生数はこの約10倍程度にのぼるものと思われる。
愛知県における患者発生はこの6カ月間継続してみられており、埼玉県を中心とした関東南部地域及び愛知県においては、地域的な流行が生じていると考えられる。
麻しんは通常春から夏にかけて流行するが、今後、埼玉県を中心とした関東南部地域や愛知県において発生数は更に増加し、流行の規模及び地域が拡大する可能性が危惧される。麻しんは既に国内からの排除(elimination)を目標とすべき疾患であるが、そのためには地域的な流行を積極的に阻止する必要がある。麻しんの流行を阻止するためには、麻しん関連ワクチンの2回接種を含めたより積極的な勧奨と、1例でも発生すればすぐに対応を講じる等の対策が重要である。今後の麻しんの発生動向には、より注意深い観察が必要である。
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