発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第9週コメント〉2007年3月8日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢10例(感染地域:大阪府1例、インド4例、ベトナム2例、ブラジル1例、パキスタン1例、ベトナム/カンボジア1例)
腸チフス2例(感染地域:インドネシア1例.疑似症1例)
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3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症17例(うち有症者8例、HUSなし)
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報告の多い感染地域:千葉県4例、佐賀県4例
年齢群:10歳未満(8例)、10代(3例)、20代(1例)、30代(3例)、40代(1例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2 (5例)、O157 VT2 (5例)、O26 VT1 (5例)、O111 VT1(1例)、その他・不明(1例)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:福岡県)
オウム病1例(感染源:インコ)
つつが虫病1例(感染地域:岐阜県)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:コンゴ民主共和国)
レジオネラ症例(すべて肺炎型) |
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年齢群:40代2例、50代3例、60代2例、70代1例、90代1例
感染地域:福岡県2例(ともに温泉)、宮城県1例、長野県1例、愛知県1例、兵庫県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)1例、台湾1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:国内6例、インドネシア1例、国外(国不明)2例
感染経路:経口3例、性的接触(異性間)1例、経口/性的接触(異性間・同性間)1例、不明4例 |
急性脳炎1例〔B型インフルエンザウイルス(10代)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型1例、遺伝性プリオン病家族性1例)
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後天性免疫不全症候群16例(無症候11例、AIDS 3例、その他2例) |
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感染地域:国内13例、フランス1例、ギニア1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触11例(異性間5例、同性間5例、同性間/異性間1例)、不明5例 |
梅毒8例(早期顕症I期2例、早期顕症II期4例、無症候2例)
破傷風1例(70代)
(補)他にバンコマイシン耐性腸球菌感染症1例の報告があったが削除予定。また2007年分の報告遅れとして、細菌性赤痢2例(感染地域:ともにインドネシア)、E型肝炎1例〔感染地域:国内(都道府県不明)、感染源:不明〕、オウム病1例(感染源:ハト)、急性脳炎4例(単純ヘルペスウイルス2例(0歳、70代)、A型インフルエンザウイルス1例(3歳)、病原体不明1例(1歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.血清群:A群)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第2週以降増加が続いている。都道府県別では福岡県(43.2)、三重県(40.4)、福井県(38.0)、沖縄県(32.8)、大分県(32.7)、宮崎県(32.1)、愛知県
(31.7)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は962例の報告があり、第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では青森県(1.02)、富山県(1.00)、山形県(0.93)、佐賀県(0.91)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では富山県(6.8)、新潟県(5.0)、北海道(5.0)、鳥取県(4.8)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では徳島県(14.1)、熊本県(12.4)、宮崎県(12.3)、福井県(12.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.4)、宮崎県(5.0)、和歌山県(4.8)、鹿児島県(4.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(4.1)、鹿児島県(1.7)、熊本県(1.7)、佐賀県(1.7)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では富山県(3.9)、石川県(1.9)、宮城県(1.6)、長野県(1.5)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では徳島県(0.05)、栃木県(0.04)、岐阜県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では東京都2例、秋田県、神奈川県、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県から各1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は微減した。都道府県別では山口県(0.39)、岩手県(0.23)、岡山県(0.22)が多い。麻しんの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では埼玉県から2例、宮城県、長野県、愛知県から各1例の報告であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(2.1)、青森県(1.6)、宮崎県(1.6)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.6)、青森県(1.8)、佐賀県(1.5)が多い。成人麻しんは宮城県、三重県から各1例の報告があった。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症であり、感染の標的は鼻咽頭、気管支などである。一般的に、急激に発症する38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに加えて、咽頭痛、鼻汁、咳などの症状もみられる。通常の感冒(いわゆるかぜ)とは、全身症状を伴い、重症化することが比較的多い点で異なるが、加えて基本的に流行性疾患であり、一旦本格
的な流行が始まると、短期間(2〜3カ月間)に乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込むところも、通常の感冒とは異なる点である。例年、12月の半ばから流行が開始し、2月の初旬頃までに流行のピークに達することが多いが、今シーズン(2006/07シーズン)は1月の半ばから流行が始まり、2007年第8週まで報告数の増加が続いていた。
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図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1996年第30週〜2007年第9週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第9週)
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図3. インフルエンザの報告症例の年齢別割合(2006年第36週〜2007年第9週)
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感染症発生動向調査によると、2007年第9週における全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関からの定点当たり報告数は23.4(報告数112,057)となり、第2週以降、8週連続して増加が続いている(図1)。都道府県別では福岡県(43.2)、三重県(40.4)、福井県(38.0)、沖縄県(32.8)、大分県(32.7)、宮崎県(32.1)、愛知県(31.7)、長野県(30.7)の順である。定点当たり報告数が30.0を超えているのは九州及び中部地域の各県であるが、報告は全国的に増加している(図2)。2006年第36週以降これまでに、定点医療機関から354,347例の累積報告があり、年齢別では5〜9歳が30.6%と最も多く、次いで10〜14歳(23.4%)、0〜4歳(19.3%)の順となっている。例年と比べて10〜14歳の割合が増加している状況に変わりはない(図3)。
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第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルスの分離報告(総報告数1,333)では、AH1(Aソ連)亜型7.4%(報告数99例)、AH3(A香港)亜型55.9%(745例)、B型36.7%(489例)である(図4、図5)。この様に、今シーズンはAH3亜型とB型の混合流行である。 |
図4. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況(2006年第36週〜2007年第9週) |
図5. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離の週別推移(2006年第36週〜2007年第9週) |
今シーズンのインフルエンザの流行は1月中旬(2007年第3週)から始まったが、6週間後の第9週現在でもまだ増加が続いている。これまでの各シーズンの流行をみると、今シーズンの流行のピークは近いと思われるが、今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要である。
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