国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第10号ダイジェスト
(2007年3月5日〜11日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第10週コメント〉2007年3月14日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: コレラ1例(疑似症)
細菌性赤痢5例(感染地域:山形県1例、茨城県1例、国内(都道府県不明)1例、インド1例、インドネシア1例)
腸チフス1例(感染地域:埼玉県)
3類感染症: 腸管出血性大腸菌感染症 7例(うち有症者6例、HUSなし)

感染地域:神奈川県1例、石川県1例、兵庫県1例、岡山県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:10歳未満(2例)、10代(1例)、20代(3例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2 (2例)、O157 VT2 (3例)、O26 VT1 (1例)、その他・不明(1例)

4類感染症: A型肝炎1例(感染地域:福岡県)
デング熱2例(デング熱1例、デング出血熱1例)
   感染地域:東チモール1例、ブラジル1例
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ケニア)
レジオネラ症2例(ともに肺炎型)

年齢群:ともに70代
感染地域:山口県1例(温泉)、鹿児島県1例

5類感染症:
アメーバ赤痢12例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ4例)

感染地域:国内10例、ベトナム1例、国外(国不明)1例
感染経路:経口1例、性的接触3例(異性間2例、同性間1例)、不明8例
急性脳炎2例〔A型インフルエンザウイルス1例(1歳)、病原体不明1例(0歳)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病3例(孤発性プリオン病古典型1例、その他2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.血清群:G群)
後天性免疫不全症候群12例(無症候10例、AIDS 1例、その他1例)
感染地域:国内11例、国内・国外不明1例
感染経路:すべて性的接触(異性間2例、同性間8例、同性間・異性間不明2例)
梅毒5例(早期顕症I期2例、早期顕症II期2例、無症候1例) バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:腹水)

(補)他に2007年分の報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:フィリピン)、E型肝炎3例〔感染地域:北海道2例(感染源:ホルモン1例、鹿肉または焼肉1例)、中国1例(感染源:不明)〕、急性脳炎1例〔インフルエンザウイルス(型不明)、4歳〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(70代1例、80代1例.血清群:ともにA群.うち1例死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例(遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:尿、遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:胆汁、遺伝子型不明1例_菌検出検体:血液)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第2週以降増加が続いている。都道府県別では福岡県(48.5)、新潟県(47.7)、福井県(44.9)、大分県(41.2)、三重県(39.2)、長野県(38.7)、沖縄県(36.9)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は694例の報告があり、第5週以降報告数は減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は横ばいであるが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(0.97)、奈良県(0.74)、熊本県(0.67)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では富山県(8.5)、鳥取県(5.7)、北海道(5.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では福井県(16.7)、宮崎県(15.3)、愛媛県(12.7)、熊本県(12.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(5.8)、宮崎県(4.9)、大分県(4.0)、鹿児島県(4.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(4.0)、佐賀県(2.0)、鹿児島県(1.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(2.7)、北海道(1.4)、石川県(1.4)、宮城県(1.2)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では栃木県(0.09)、秋田県(0.06)、千葉県(0.05)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では千葉県4例、埼玉県、大阪府各2例、北海道1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してもやや多い。都道府県別では山口県(0.86)、岡山県(0.26)、岩手県(0.23)が多い。麻しんの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では埼玉県5例、東京都2例、鹿児島県1例の報告であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(2.1)、宮崎県(1.8)、青森県(1.7)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.3)、静岡県(1.9)、福島県(1.7)が多い。




 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症であり、感染の標的は鼻咽頭、気管支などである。一般的に、急激に発症する38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに加えて、咽頭痛、鼻汁、咳などの症状もみられる。通常の感冒(いわゆるかぜ)とは、全身症状を伴い、重症化することが比較的多い点で異なるが、加えて基本的に流行性疾患であり、一旦本格的な流行が始まると、短期間(2〜3カ月間)に乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込むところも、通常の感冒とは異なる点である。

図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1996年第30週〜2007年第10週)

図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第10週)

図3. インフルエンザの報告症例の年齢別割合(2006年第36週〜2007年第10週)

感染症発生動向調査によると、2007年第10週現在の全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関からの定点当たり報告数は27.6(報告数132,147)となり、第2週以降、9週連続(第3週の流行開始以降では7週連続)して増加が続いている(図1)。都道府県別では、福岡県(48.5)、新潟県(47.7)、福井県(44.9)、大分県(41.2)、三重県(39.2)、長野県(38.7)、沖縄県(36.9)、宮崎県(35.4)の順である。東北、関東、中国の各地域の報告数も増加しており、四国地域を除けば全国的な流行となっている(図2)。2006年第36週以降の定点医療機関からの累積報告数は486,518(定点当たり累積報告数105.7)である。年齢別では5〜9歳が31.7%と最多であり、次いで10〜14歳(23.3%)、0〜4歳(19.2%)の順であることは今シーズンこれまでと同様である(図3)

2006年第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルスの分離報告(総報告数1,629)では、AH1亜型(Aソ連型)7.0%(報告数114例)、AH3亜型(A香港型)53.3%(868例)、B型39.7%(647例)である(図4)。この様にAH3亜型とB型の混合流行であるが、最近ではB型の割合が増加している(図5)
図4. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況(2006年第36週〜2007年第10週) 図5. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離の週別推移(2006年第36週〜2007年第10週)

今シーズンのインフルエンザの流行は1月中旬(2007年第3週)より開始し、7週後の第10週現在も報告数の増加は継続しており、ほぼ全国的な流行となった。今シーズンの流行のピークは近いと思われるが、インフルエンザの発生動向には今後とも注意が必要である。


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