発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並びを一部変更しました。
〈第11週コメント〉 3月22日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
細菌性赤痢5例〔感染地域:国内(都道府県不明)2例、インドネシア1例、カンボジア1例、エジプト1例〕
腸チフス1例(感染地域:福島県) |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症8例(うち有症者6例、HUS 2例)
感染地域:岡山県3例、福井県2例、滋賀県1例、大阪府1例、兵庫県1例
年齢群:10歳未満(2例)、10代(3例)、30代(1例)、50代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(3例)、O157 VT1・VT2(2例)、その他・不明(3例) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:中国.感染源:不明)
A型肝炎1例(感染地域:愛知県)
オウム病1例(感染地域:兵庫県.感染源:セキセイインコ)
レジオネラ症4例(すべて肺炎型)
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年齢群:50代1例、60代1例、80代2例
感染地域:北海道1例、長野県1例、石川県1例(温泉)、徳島県1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢 10例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ2例) |
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感染地域:国内8例、フィリピン1例、英国1例
感染経路:経口5例、性的接触3例(異性間2例、同性間1例)、不明2例 |
急性脳炎5例
〔A型インフルエンザウイルス1例(1歳)、B型インフルエンザウイルス1例(8歳)、インフルエンザウイルス(型不明)1例(1歳)、単純ヘルペスウイルス1例(50代)、病原体不明1例(4歳)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病4例(孤発性プリオン病古典型3例、遺伝性プリオン病家族性1例)
後天性免疫不全症候群8例(無症候5例、AIDS 2例、その他1例)
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感染地域:国内6例、タイ1例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触6例(異性間3例、同性間1例、同性間・異性間2例)、静脈薬物常用1例、不明1例 |
髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:エジプト/スペイン/フランス.血清群:B群)
梅毒8例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、晩期顕症1例、無症候5例)
破傷風1例(40代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:膿)
(補)他に細菌性赤痢1例、梅毒1例の報告があったが、削除予定。また2007年分の報告遅れとして、E型肝炎1例(感染地域:北海道.感染源:鹿肉)、オウム病1例(感染地域:宮城県.感染源:インコ)、日本脳炎1例〔感染地域:茨城県(発病は2006年)〕、急性脳炎8例〔A型インフルエンザウイルス4例(2歳、5歳、9歳2例)、B型インフルエンザウイルス2例(9歳、5歳)、病原体不明2例(9歳、50代).うち1例死亡〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例(60代1例、70代2例.血清群:すべてA群.うち1例死亡)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第2週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では福岡県(60.0)、大分県(54.1)、沖縄県(53.2)、新潟県(51.8)、長崎県(48.5)、山口県(47.7)、宮崎県(47.2)、佐賀県(47.2)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は565例の報告があり、第5週以降報告数は減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当 たり報告数は減少した。都道府県別では富山県(1.03)、青森県(0.90)、島根県(0.83)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では富山県(7.9)、鳥取県(6.2)、北海道(5.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第8週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(18.1)、愛媛県(15.3)、徳島県(12.7)、福岡県(12.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(5.8)、佐賀県(4.1)、鹿児島県(4.0)、沖縄県(3.9)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(2.6)、鹿児島県(1.9)、長崎県(1.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(3.2)、石川県(2.0)、北海道(1.6)、長野県(1.2)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では栃木県(0.06)、沖縄県(0.06)、岡山県(0.04)が多い。風しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では千葉県6例、東京都2例、北海道、宮城県、埼玉県、新潟県、京都府、大阪府、兵庫県から各1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山口県(0.84)、岡山県(0.31)、福岡県(0.21)が多い。麻しんの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では千葉県、東京都、大阪府から各2例、埼玉県、神奈川県、愛知県、島根県から各1例の報告があった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では秋田県(1.7)、新潟県(1.6)、高知県(1.6)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(4.0)、岡山県(2.4)、福島県(1.1)、栃木県 (1.1)が多い。成人麻しんは東京都から5例、神奈川県から2例、茨城県、千葉県から各1例の報告があった。
〈2月コメント〉
◆性感染症について 2007年3月13日集計分 性感染症定点数:956
(産婦人科・産科・婦人科:456、泌尿器科:385、皮膚科102、性病科13)
●月別推移
2007年2月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.34(男1.00、女1.34)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.82(男0.34、女0.48)、尖圭コンジローマが0.50(男0.28、女0.21)、淋菌感染症が0.87(男0.70、女0.17)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、4疾患すべてにおいて、男女とも減少した( 「グラフ総覧」参照)。 男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症では男女ともに平均-2標準偏差(SD)を下回り、尖圭コンジローマでは女性が-1SDを下回り、淋菌感染症では男性で-2SDを、女性で-1SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(2月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、女性では4疾患すべてが20〜24歳であったが、男性では性器クラミジア感染症と淋菌感染症が25〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症が25〜29歳、30〜34歳及び35〜39歳、尖圭コンジローマが30〜34歳であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症では男女ともに、ピーク以降、年齢が高くなるに従って減少傾向が顕著であり、男性では60代以降、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症では男女ともに、50代以降の報告も少なくない。
15歳以上の年齢群でみた男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群において男性が女性よりも多いが、性器クラミジア感染症の15〜34歳、性器ヘルペスウイルス感染症の15〜34歳及び65歳以上、尖圭コンジローマの15〜24歳において、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されるが、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。2001年以降、男女ともに性器クラミジア感染症と淋菌感染症は減少傾向がみられ、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマはほぼ横ばい傾向である。前月との比較では、4疾患すべてにおいて、男女ともに減少ないし微減した。
注:本発生動向調査で得られる性感染症患者報告数および解析結果は、現在の定点の構成に基づく制限のもとに解釈する必要があります。詳細はIDWR週報2000年第46週号(10月報)4ページの説明を参照してください。
◆薬剤耐性菌について (3月13日集計分)
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基幹定点数(2月):465.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.14(前月:4.29、前年同月:4.02)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。2月は前月より減少し、過去7年間の同月との比較では最も多かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.79(前月:0.90、前年同月:0.97)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。2月は前月より減少し、過去7年間の同月との比較では最も少なかった。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.10(前月:0.07、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比してわずかに多い傾向がある。2月は前月より増加し、過去7年間の同月との比較では上位に属した。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の70%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の54%を占める一方、70歳以上が全体の23%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の71%を占めている(図3:PDF参照)。
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.8:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=1.6:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は静岡県(6.6)、滋賀県(6.6)、岩手県(6.5)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(4.6)、富山県(3.8)、福井県(3.5)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が45件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症であり、感染の標的は鼻咽頭、気管支などである。一般的に、急激に発症する38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などに加えて、咽頭痛、鼻汁、咳などの症状もみられる。通常の感冒(いわゆるかぜ)とは、全身症状を伴い、重症化することが比較的多い点で異なる。特に高齢者や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝性疾患、免疫機能が低下している患者では、原疾患の増悪とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られており、重症化や時には生命の危機を招くこともある。小児では中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息の誘発、更に頻度は低いもののインフルエンザ脳症を合併する場合がある。
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感染症発生動向調査によると、2007年第11週現在の全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関からの定点当たり報告数は32.9(報告数157,567)となり、第2週以降10週連続(第3週の流行開始以降では8週連続)して増加が続いている。定点当たり報告数は昨シーズン(2005/06シーズン)の最高値(32.4)とほぼ同じ値である(図1)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1996年第36週〜2007年第7週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第7週)
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都道府県別では、福岡県(60.0)、大分県(54.1)、沖縄県(53.2)、新潟県(51.8)、長崎県(48.5)、山口県(47.7)、宮崎県(47.2)、 佐賀県(47.2)の順となっている。高知県(12.2)、岐阜県(19.0)を除く全ての都道府県で20.0を超えている(図2)。2006年第36週以降の定点医療機関からの累積報告数は641,346(定点当たり累積報告数137.6)と前週よりも大きく増加している。年齢別では5〜9歳が32.6%と最多であり、次いで10〜14歳(23.5%)、0〜4歳(19.2%)の順である(図3)。
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図3. インフルエンザの報告症例の年齢別割合(2006年第36週〜2007年第7週)
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図4. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルスの分離状況(2006年第36週〜2007年第7週)
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図5. 2006/07シーズンにおけるインフルエンザウイルス分離の週別推移(2006年第36週〜2007年第7週)
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第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルス分離報告(総報告数1,945)では、AH1亜型(Aソ連型)7.2%(報告数140例)、AH3亜型(A香港型)53.3%(1,036例)、B型39.5%(769例)であり、AH3亜型とB型の混合流行となっている(図4、図5)。
今シーズンのインフルエンザの流行は1月中旬(2007年第3週)より開始し、8週後の第11週現在患者報告数の増加が続いている。定点当たり報告数は、中規模の流行であった昨シーズンのピークとほぼ同等の値となった。流行のピークを迎えつつあると思われるが、インフルエンザの発生動向には今後とも注意が必要である。
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