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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||
2類感染症: | 細菌性赤痢13例(感染地域:インドネシア8例、ベトナム2例、インド1例、エジプト1例、シンガポール1例) 腸チフス1例(感染地域:インド) |
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3類感染症: | 腸管出血性大腸菌感染症 症10例(うち有症者7例、HUSなし)
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4類感染症: | A型肝炎1例(感染地域:宮城県) つつが虫病2例(感染地域:ともに福島県) デング熱1例(感染地域:クアラルンプール)
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5類感染症: |
(補)他に報告遅れとして、E型肝炎1例(感染地域:三重県.感染源:不明)、急性脳炎4例〔ムンプスウイルス1例(0歳)、A型インフルエンザウイルス1例(7歳)、B型インフルエンザウイルス1例(3歳)、インフルエンザウイルス型不明1例(30代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(30代1例、40代1例.血清群:ともにA群)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では青森県(40.5)、大分県(38.4)、長崎県(38.1)、山口県(37.1)、宮崎県(37.1)、新潟県(35.6)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は377例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約79%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では富山県(0.86)、大分県(0.78)、山形県(0.60)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では富山県(6.5)、北海道(4.0)、鳥取県(3.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では宮崎県(16.1)、福井県(15.4)、福岡県(11.5)、大分県(11.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は微減したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(5.8)、鹿児島県(4.5)、沖縄県(4.4)、佐賀県(3.7)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(1.9)、長崎県(1.1)、熊本県(1.0)、鹿児島県(1.0)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(3.1)、石川県(1.7)、北海道(1.5)が多い。百日咳の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では千葉県(0.05)、岐阜県(0.04)が多い。風しんの報告数は減少した。都道府県別では北海道、栃木県、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、鹿児島県から各1例の報告であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では島根県(0.22)、山口県(0.22)、岡山県(0.17)が多い。麻しんの報告数は増加した。都道府県別では埼玉県11例、東京都9例、青森県、千葉県、神奈川県、滋賀県、広島県、佐賀県から各1例の報告があった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(2.3)、青森県(1.6)、秋田県(1.2)、高知県(1.2)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は横ばいであったが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.9)、福島県(1.7)、群馬県(1.5)が多い。成人麻しんは11例と報告数は増加し、東京都から8例、宮城県、茨城県、神奈川県から各1例の報告があった。
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症である。感染を受けてから1〜3日間の潜伏期間を経て、発熱(38℃以上)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然出現し、咳・鼻水などの上気道炎症状がこれに続く。1週間前後の経過で軽快するのが典型的なインフルエンザの症状であり、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強い。高齢者では超過死亡の原因として知られている二次性の細菌性肺炎、小児では発症率は低いものの生命に関わる可能性のあるインフルエンザ脳症等の合併症が知られている。感染症発生動向調査によると、2007年第13週現在の全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関からの定点当たり報告数は21.5(報告数102,402)となり、前週の定点当たり報告数(32.5)から大幅に減少した(図1)。
図1. インフルエンザのシーズン別・週別発生状況(1996年第30週〜2007年第13週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第13週) |
図3. インフルエンザの報告症例の年齢別割合(2006年第36週〜2007年第13週) |
都道府県別では、青森県(40.5)、大分県(38.4)、長崎県(38.1)、山口県(37.1)、宮崎県(37.1)、新潟県(35.6)の順であるが、高知県を除く全ての都道府県で定点当たり報告数の減少がみられている(図2)。2006年第36週以降これまでの定点医療機関からの定点当たり累積報告数は192.1(累積報告数902,928)であり、年齢別では5〜9歳が32.7%と最多であり、次いで10〜14歳(21.8%)、0〜4歳(20.2%)の順である(図3)。
◆ 麻しん
麻しんは空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染と様々な感染経路を示す疾患であり、その感染力は極めて強い。麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合は、10日間前後の潜伏期を経て発症し、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復期へと続いていく。先進国においては罹患者における致死率は低下(0.1〜0.2%)しているものの、わが国においても合併症発症率、入院率は高く、未だ重篤な疾患であることには変わりはない。
図1. 麻しんの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第13週) | 図2. 主要都道府県における麻しんの報告の週別推移(2006年第36週〜2007年第13週) | 図3. 麻しんの報告症例の年別・年齢群別割合(1999〜2005年) |
特に埼玉県11例、東京都9例、千葉県、神奈川県各1例であり、南関東地域のこれら4都県で計22例の報告となり、同地域における麻しんの流行は更に進行している可能性が高いと思われる(図2)。2006年第36週以降の累積患者報告数は253例であり、年齢別では10〜14歳の割合が21.3%と最も多く、1歳児(18.2%)、0歳児(16.6%)を上回っており、2005年までと比較して年長者の報告割合が増加している(図3、図4)。
感染症情報センターホームページにおいても流行情報を掲載しているが、入学式、始業式等の学校、幼稚園、保育園行事の実施に伴って、今後流行は更に拡大する可能性が高い。麻しんは国内からの排除(elimination)を目標とすべき疾患であり、そのためには地域的な流行は積極的に阻止されなければならない。麻しんの流行を阻止するためには、1歳になったらすぐと学童期前の2回目接種を含めた麻しん関連ワクチンのより積極的な勧奨が必要であると 共に、1例でも発生すればすぐに対応を講じる等の対策が重要である(「保育園・幼稚園・学校等での麻しん患者発生時の対応マニュアル」)。また今後、麻しん発症者の医療機関受診の増加に伴い、院内感染事例の増加も危惧されるところであり、医療機関における適切な準備と迅速な対応が望まれる(「医療機関での麻疹対応について」)。今後とも麻しん発生動向に対するより注意深い観察と、麻しん発生時における迅速な対応が必要である。
なお、感染症発生動向調査における麻しん報告は小児科定点(成人麻しんは基幹定点)からのものであり、そのデータのみで現在のような地域的な流行の実態を迅速に把握し、対応することは困難であるとの指摘が以前よりある。そのため、国立感染症研究所感染症情報センターでは、全国の医療関係者が麻しんの発生情報を入力し、情報発信・情報共有が可能となるように、2006年5月より麻疹DBデータベースをホームページ上に立ち上げている。麻疹・風疹混合生ワクチン(MRワクチン)接種啓発用ポスターのダウンロードと合わせて、積極的に活用していただきたい。
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