発生動向総覧
*2007年4月からの法改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。
〈第24週コメント〉 6月20日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 222例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢20例〔感染地域:埼玉県8例*、神奈川県2例、国内(都道府県不明)1例、南アフリカ5例、中国1例、タイ1例、インドネシア1例、モルディブ1例〕
*第23週に続く知的障害者更正施設における集団発生
腸管出血性大腸菌69例(うち有症者46例、HUSなし)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地域:東京都7例、埼玉県6例、大阪府6例、石川県5例、千葉県5例
年齢群:10歳未満(20例)、10代(16例)、20代(7例)、30代(3例)、40代(7例)、50代(2例)、60代(8例)、70歳以上(6例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(33例)、O157 VT2(20例)、O26 VT1(7例)、O111 VT1・VT2(3例)、O1 VT2(1例)、O121 VT1(1例)、O145 VT1・VT2(1例)、O157 VT1(1例)、O165 VT2(1例)、その他/不明(1例) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:中国.感染源:豚レバー)
オウム病1例(感染地域:神奈川県、感染源:インコ)
つつが虫病1例(感染地域:兵庫県)
日本紅斑熱1例(感染地域:広島県)
マラリア2例
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熱帯熱1例(感染地域:パプアニューギニア)
三日熱1例(感染地域:インドネシア)
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ライム病1例(感染地域:米国)
レジオネラ症13例(肺炎型12例、ポンティアック型1例)
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年齢群:40代1例、50代3例、60代4例、70代4例、80代1例
感染地域:宮城県2例、神奈川県2例、北海道1例(温泉)、青森県1例、群馬県1例、東京都1例、石川県1例、愛知県1例、兵庫県1例、山口県1例、愛媛県1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢16例(腸管アメーバ症13例、腸管外アメーバ症3例) |
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感染地域:国内12例、中国1例、インド1例、インドネシア1例、イラク1例
感染経路:経口4例、性的接触4例(異性間3例、同性間1例)、不明8例 |
ウイルス性肝炎3例 |
B型2例_感染経路:ともに不明
C型1例_感染経路:不明 |
急性脳炎1例〔病原体不明(1歳)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病3例(すべて孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群13例(AIDS 4例、無症候9例)
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感染地域:国内10例、中国1例、国内/中国1例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触12例(異性間4例、同性間8例)、不明1例 |
梅毒9例(早期顕症I期2例、早期顕症II期1例、無症候6例)
破傷風2例(60代1例、70代1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液、不明1例_菌検出検体:尿)
(補)他に、マラリア1例の報告があったが、削除予定。また、報告遅れとして、E型肝炎2例〔感染地域(感染源):新潟県1例(豚ホルモン、豚レバー)、中国1例(不明)〕、急性脳炎3例〔麻疹ウイルス1例(20代)、マイコプラズマ1例(2歳)、病原体不明1例(50代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第12週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(7.28)、宮城県(1.22)、鹿児島県(0.90)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は200例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では富山県(1.9)、青森県(1.5)、東京都(1.0)、福井県(1.0)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(4.1)、埼玉県(3.6)、宮崎県(3.4)、茨城県(3.3)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では鳥取県(9.4)、三重県(8.8)、滋賀県(8.8)、大分県(8.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(4.4)、富山県(4.0)、埼玉県(3.3)、愛知県(3.2)、滋賀県(3.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では熊本県(4.3)、佐賀県(2.7)、福島県(2.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では長野県(3.0)、新潟県(2.4)、宮城県(2.4)、富山県(2.3)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では兵庫県(0.14)、香川県(0.14)、岡山県(0.13)、山口県(0.12)が多い。風しんの報告数は9例と減少した。都道府県別では神奈川県3例、茨城県、東京都、山梨県、愛知県、大阪府、和歌山県から各1例の順であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(5.0)、山口県(3.8)、島根県(3.0)が多い。麻しんの報告数は減少し、24都道府県から175例の報告があった。都道府県別では千葉県30例、北海道23例、埼玉県19例、東京都17例、神奈川県16例、福岡県14例、大阪府11例、宮城県7例、岡山県6例、香川県5例、愛知県、広島県から各4例、栃木県、新潟県から各3例、山形県、兵庫県、和歌山県から各2例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では岩手県(1.28)、宮崎県(1.08)、大分県(1.06)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(2.4)、福島県(1.4)、宮城県(1.2)が多い。成人麻しんの報告数は3週連続で減少し、20都道府県から47例の報告があった。都道府県別では、東京都16例、神奈川県7例、宮城県5例、秋田県、埼玉県から各2例、北海道、青森県、岩手県、山形県、茨城県、群馬県、千葉県、静岡県、三重県、大阪府、奈良県、岡山県、広島県、山口県、福岡県から各1例の報告があった。
〈5月コメント〉
◆性感染症について 2007年6月12日集計分 性感染症定点数:972
(産婦人科・産科・婦人科:469、泌尿器科:395、皮膚科95、性病科13)
●月別推移
2007年5月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.77(男1.20、女1.56)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.95(男0.37、女0.57)、尖圭コンジローマが0.58(男0.32、女0.26)、淋菌感染症が1.04(男0.84、女0.19)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、4疾患すべてで男女ともに増加した(「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症では男女ともに平均-1標準偏差(SD)を下回り、性器ヘルペスウイルス感染症では女性で+1SDを上回り、淋菌感染症では男女ともに-1SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(5月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では4疾患すべてで25〜29歳で、女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症が20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症が20〜24歳および25〜29歳(同値)であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢階級別分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群において男性が女性よりも報告数が多いが、性器クラミジア感染症では15〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜39歳および50〜70歳以上、尖圭コンジローマでは15〜29歳の年群において、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は、男女ともに2001年以降減少傾向がみられ、尖圭コンジローマは2005年半ば頃から微かながら減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症はほぼ横ばい傾向である。前月との比較では、男女ともで4疾患すべてが増加した。
◆薬剤耐性菌について (6月12日集計分)
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基幹定点数(5月):463.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.20(前月:4.06、前年同月:4.36)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。5月は前月より増加し、過去8年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.17(前月:0.84、前年同月:1.37)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。5月は前月より増加し、過去8年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.08(前月:0.09、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。5月は前月より減少し、過去8年間の同月との比較では下位に属した。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の65%を占める一方、70歳以上が全体の17%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の72%を占めている(図3:PDF参照)。
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.8:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.3:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は栃木県(8.3)、富山県(7.0)、山口県(6.8)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(5.0)、東京都(3.5)、福井県(3.3)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が39件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ 麻しん
感染症発生動向調査によると、全国約3,000カ所の小児科定点からの麻しんの報告数は、2007年第24週は24都道府県から175例(定点当たり報告数0.058)の報告があり、前週よりも減少した(図1)。
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都道府県別では千葉県30例、北海道23例、埼玉県19例、東京都17例、神奈川県16例、福岡県14例、大阪府11例、宮城県7例、岡山県6例、香川県5例、愛知県、広島県から各4例、栃木県、新潟県から各3例、山形県、兵庫県、和歌山県から各2例の順となっている。北海道からの報告数が初めて20例以上となる一方で、南関東地域(千葉県、埼玉県、神奈川県、東京都)からの報告数は82例と前週の114例から大きく減少した(図2)。
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図1. 麻しんの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第24週)
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図2. 主要都道府県における麻しんの報告の週別推移(2007年第1〜24週)
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2007年第1〜24週までの小児科定点からの累積報告数は1,706例(定点当たり報告数0.57)であり、都道府県別では埼玉県293例、千葉県289例、東京都225例、神奈川県167例、北海道110例、大阪府73例、栃木県60例、宮城県58例、福岡県43例、広島県42例、山梨県36例、茨城県33例、愛知県28例、香川県26例、鹿児島県24例、長野県、岡山県から各23例、兵庫県21例、徳島県18例、群馬県、新潟県から各12例の順となっており、南関東地域の4都県に加えて新たに北海道で累積報告数が100例以上となった(図3)。累積報告数の年齢別割合では、0〜4歳の報告割合は37.0%(631例)と例年(55〜67%)と比べて低く、10〜14歳の報告割合は31.1%(530例)と例年(5〜15%)よりも高い状況が続いている(図4)。
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図3. 麻しんの都道府県別累積報告状況(2007年第1〜24週)
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図4. 麻しんの報告症例の年別・年齢群別割合(2000年〜2007年第24週)
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図5. 成人麻しんの年別・週別発生状況(1999年第14週〜2007年第24週)
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全国約450カ所の基幹定点からの成人麻しん(届出対象は15歳以上)の2007年第24週の報告数は20都道府県から47例(定点当たり報告数0.101)となり、前週よりもやや減少した(図5)。都道府県別では、東京都16例、神奈川県7例、宮城県5例、秋田県、埼玉県から各2例、北海道、青森県、岩手県、山形県、茨城県、群馬県、千葉県、静岡県、三重県、大阪府、奈良県、岡山県、広島県、山口県、福岡県から各1例の報告があった。2007年第1〜24週までの累積報告数は573例(定点当たり報告数1.26)であり、都道府県別では東京都199例、神奈川県78例、宮城県58例、埼玉県38例、北海道17例、千葉県14例、山形県、広島県から各12例、長野県11例、茨城県、群馬県、新潟県から各10例、福島県、石川県、大阪府から各9例、岩手県8例、島根県7例、山梨県6例の順である(図6)。
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図6. 成人麻しんの都道府県別累積報告状況(2007年第1〜24週)
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図7. 主要都道府県における成人麻しんの報告の週別推移(2007年第1〜24週)
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図8. 成人麻しんの報告症例の年齢群別割合(2007年第1週〜24週)
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累積報告数の上位5都道県をみると、東京都からの報告数は減少しているが、神奈川県、宮城県、埼玉県の報告数は増加し、北海道は横ばいである(図7)。累積報告数の年齢別割合では、20〜24歳30.5%(175例)、15〜19歳23.7%(136例)、25〜29歳23.4%(134例)、30〜34歳12.0%(69例)の順であり、30歳以下で全報告数の75%以上を、34歳以下で約90%を占めている(図8)。
麻疹の重篤な合併症である麻疹脳炎の発生は、2007年ではこれまでに第13、20、21、23週に4例(10代1例、20代3例)の発生報告があった。
全国の衛生研究所における麻疹ウイルスの分離・検出状況をみると、2007年2月〜6月に北海道、山形県、茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、石川県、山梨県、大阪府、兵庫県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県、沖縄県の17都道府県から計179件の報告がされている。そのうちウイルスの遺伝子型別が実施された119件中117件はD5型が検出されており、残りの2件はワクチン接種約2週間後に採取された検体からPCRでA型が検出されている(本号15〜16ページ病原体情報参照、最新の報告数は感染症情報センターホームページ:https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data61j.pdf に掲載)。
第24週の小児科定点からの麻しんの報告数は前週と比較して大幅な減少となる一方で、基幹定点からの成人麻しんの報告数は前週と比較してわずかな減少にとどまった。もっとも、成人麻しんの報告数の減少は3週間連続であることを考慮するならば、全国的には今回の流行における麻しんおよび成人麻しんの報告数は概ね減少傾向にあるものと考えられる。しかしながらまだ報告数の増加がみられている地域も存在しており、今後ともその発生動向には注意が必要である。
2001年のように、過去に日本国内でしばしばみられたような1歳児の麻疹ワクチン接種率が低いことによって引き起こされた乳幼児を中心とした麻疹の大流行は2度と発生させるべきではなく、現在の麻疹関連ワクチン(麻疹・風疹混合ワクチンもしくは麻疹ワクチン)定期接種対象者に対するより積極的なワクチンの接種勧奨と高い接種率の維持が必要であることはいうまでもない。しかしながら今回の日本国内における麻疹の流行は、10代、20代の年齢層においての発生報告例が多いことが特徴であり、これは1978年に麻疹ワクチンが定期接種となり、大半が麻疹ワクチンを1回接種していることに加えて、麻疹ワクチンの接種から比較的長い年月が経過している世代において麻疹の流行がみられていることを示している。この流行形態は、既に麻疹が国内から排除された米国や韓国においても、麻疹関連ワクチン(麻疹ワクチン、麻疹・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン等)の接種者の多くが1回接種者であった時期に一時的にみられているが、我が国はこれら諸外国と比べて麻疹関連ワクチンの定期接種が1回接種であった期間が長く、現状のままでは今後も比較的短期間のうちに今回と同様の流行を繰り返していく可能性が高いものと考えられる。今後同様の流行が繰り返されないためには、大半が麻疹ワクチンを1回接種している世代に対する麻疹感受性者対策、学校や施設等における麻疹発生時の積極的な対応、その対応の迅速で円滑な実施のために重要な麻疹発生例の全数把握の実現等の新たな対策が必要である。
以下に、麻しん関連情報として感染症情報センターのホームページに掲載されている主な項目とそのURLを挙げる。麻しん対策として活用いただければ幸いである。
●麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html
□緊急情報
□関連情報(注目すべき感染症/速報「麻しん」、医療機関での麻疹の対応について、保育園・幼稚園・学校等での麻しん患者発生時の対応マニュアル)
□国内情報(麻疹の現状と今後の麻疹対策について、我が国の健常人における麻疹PA抗体保有率、病原微生物検出情報[IASR]麻疹特集、ウイルス検出状況、他)
●Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
●麻疹発生DB(データベース):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas-db.html
●予防接種の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html
●年齢別麻疹、風疹、MMRワクチン接種率:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/atopics/atpcs001.html
●感染症の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_03/k03_03.html
●「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの?」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn01.html
●「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレゼントにしましょう」ポスター: http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn04.html
●「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスター: http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn07.html
●2006年度第2期麻疹・風疹ワクチン接種に関する全国調査−2006年10月1日現在中間評価−:http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3252.html
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