発生動向総覧
*2007年4月からの法改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第26週コメント〉 7月4日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 242例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢5例(感染地域:埼玉県3例*、静岡県1例、インド/タイ1例)
*第23〜25週に続く知的障害者更正施設における集団発生
腸管出血性大腸菌89例(うち有症者65例、うちHUS 2例)
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感染地域:すべて国内
国内の多い感染地域:大阪府7例、東京都6例、石川県6例、兵庫県6例、長崎県6例
年齢群:10歳未満(21例)、10代(14例)、20代(19例)、30代(8例)、40代(1例)、50代(9例)、60代(9例)、70歳以上(8例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(40例)、O157 VT2(17例)、O26 VT1( 11例)、O157 VT1( 7例)、O121 VT2( 4例)、O103 VT1(2例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、その他/不明(5例)
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4類感染症: |
:A型肝炎1例(感染地域:石川県)
オウム病2例〔感染地域:福島県1例(感染源:インコ)、群馬県1例(感染源:不明)〕
日本紅斑熱1例(感染地域:熊本県)
マラリア1例(熱帯熱1例_感染地域:ナイジェリア)
ライム病1例(感染地域:北海道)
レジオネラ症13例(肺炎型11例、ポンティアック型2例) |
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年齢群:40代1例、50代2例、60代2例、70代7例、90代1例
感染地域:広島県2例、兵庫県2例(うち1例温泉)、山形県1例(温泉)、茨城県1例、静岡県1例(温泉)、神奈川県1例、新潟県1例(温泉)、京都府1例、大分県1例、国内(都道府県不明)2例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢7例 |
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(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症1例)
感染地域:国内5例、タイ1例、カンボジア1例
感染経路:経口3例、経口/性的接触(同性間)1例、不明3例
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ウイルス性肝炎3例 |
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B型2例_感染経路:性的接触(異性間)1例、不明1例
サイロメガロウイルス1例
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急性脳炎3例〔すべて病原体不明(0歳2例、1歳1例)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病3例(孤発性プリオン病古典型2例、遺伝性プリオン病家族性1例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(30代)
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後天性免疫不全症候群13例(無症候11例、その他2例)
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感染地域:国内12例、ミャンマー1例
感染経路:性的接触12例(異性間4例、同性間7例、異性間・同性間1例)、不明1例
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ジアルジア症2例(感染地域:ともに国内)
梅毒8例(早期顕症I期4例、早期顕症II期3例、無症候1例)
破傷風2例(ともに70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:胆汁)
(補)他に梅毒1例の報告があったが削除予定。また報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕、急性脳炎3例〔単純ヘルペスウイルス2例(20代、70代)、HHV6 1例(1歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(50代.死亡)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第12週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(11.05)、福島県(0.55)、秋田県(0.24)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は177例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約69%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では富山県(1.4)、広島県(1.2)、滋賀県(1.0)、山形県(1.0)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(4.6)、宮崎県(3.4)、茨城県(3.2)、三重県(3.2)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では大分県(11.8)、三重県(7.2)、福井県(7.1)、鳥取県(6.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では長野県(2.9)、滋賀県(2.6)、富山県(2.6)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では熊本県(7.6)、福島県(4.3)、佐賀県(4.1)、福岡県(3.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では長野県(4.4)、高知県(3.0)、宮城県(2.3)、石川県(2.2)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では山口県(0.14)、秋田県(0.09)、徳島県(0.07)が多い。風しんの報告数は16例と減少した。都道府県別では兵庫県5例、大阪府3例、新潟県、静岡県から各2例、北海道、栃木県、千葉県、鹿児島県から各1例の順であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(9.2)、鳥取県(8.9)、山口県(7.5)、福井県(7.3)が多い。麻しんの報告数は3週連続で減少し、18都道府県から106例の報告があった。都道府県別では大阪府13例、北海道13例、東京都12例、千葉県11例、神奈川県、福岡県から各10例、埼玉県8例、宮城県、愛知県から各5例、山梨県4例、岡山県、広島県、大分県から各3例、福島県2例、岩手県、静岡県、兵庫県、徳島県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では大分県(1.47)、宮崎県(1.08)、青森県(0.95)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(2.1)、沖縄県(1.9)、宮城県(1.8)が多い。成人麻しんの報告数は第22週以降減少が続いており、17都道府県から35例の報告があった。都道府県別では、東京都10例、宮城県、神奈川県、新潟県、大阪府から各3例、山形県2例、北海道、青森県、岩手県、栃木県、千葉県、石川県、山梨県、鳥取県、広島県、福岡県、宮崎県から各1例の報告があった。
注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease : HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは主にコクサッキーA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)であるが、その他コクサッキーA9やA10などのエンテロウウイルスによっても類似の症状を呈することがある。
臨床的特徴であるが、感染から3〜5日の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3 mmの水疱性発疹が出現する。発熱は約3分の1に認められるが軽度であり、高熱が続くことは通常はない。本症は基本的には数日間の内に治癒する予後良好の疾患である。しかしながら、まれではあるが髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経感染症症状などのほか、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することがある。特にEV71に感染した場合は、髄膜炎、脳炎などの中枢神経性の合併症を引き起こす割合が比較的高いことが明らかとなってきているので、EV71が流行しているシーズンは、手足口病発症児の経過を注意深く観察し、合併症に対する警戒を行う必要がある。
感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。本疾患は主症状が回復した後も比較的長期間に渡って児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(1997年〜2007年第26週)
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図2. 手足口病の都道府県別累積報告状況(2007年第1〜26週)
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図3. 手足口病の報告症例の年別・年齢群別割合(2000〜2007年第26週)
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感染症発生動向調査によると、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関からの定点当たり報告数は、2007年では第19週以降増加が継続しているものの、2005年および2006年の水準を下回った状態が続いている(図1)。第26週までの定点当たり累積報告数(全国平均では9.41、総患者報告数28,348)をみると、宮崎県(63.9)、熊本県(50.5)、佐賀県(46.3)、長崎県(38.9)、鹿 児島県(36.3)、福岡県(26.0)、大分県(22.4)、福島県(19.2)の順であり、九州地域を中心に流行がみられている(図2)。
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累積報告数の年齢別割合をみると、発生報告の中心が5歳以下の乳幼児であることは例年と同様であるが、2007年は特に0〜3歳の報告割合が71.8%(第26週現在)と多くなっている(図3)。 |
図4. 手足口病由来ウイルスの分離・検出状況(2007年第1〜26週)
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図5. 手足口病由来ウイルスの年別の分離・検出状況(2003〜2007年第26週)
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第26週までの手足口病由来ウイルス分離・検出報告件数は59件であ り、CA16が40.7%(24件)と最多を占め、次いでEV71(32.2%、19件)、CA9(3.4%、2件)の順となっている(図4)。2003年以降の手足口病由来ウイルス分離・検出状況をみると、EV71の報告割合は、2003年、2006年よりは低いものの、2004年、2005年の報告割合を上回っている(図5)。手足口病の流行は間もなくピークを迎えるものと予想されるが、今後ともその発生数の推移やEV71の分離・検出状況には注意が必要である。
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